murder
ついさっき考え付いたことの実行のために、教室に戻る。
「なー要さっきどうしたんだ?急にどっか行ってさー」
「…ああ、いやー急に喉が異様に乾いてなー。水を飲みに」嘘だけど。
「…え、何?ストレス?俺と話すのそんな疲れる?」
「いや違う違う。伊月と話すのは苦痛でもないさ。むしろマジでちょうどいい暇つぶし」
「褒めてるつもりだろうけどなんかそれイラつく! …あ、チャイムなった」
「お、本当だ。 んじゃーまたー」
席に戻る。ノートを開き、1ページ破いて、必要なことを書き連ねていく。 昼休みの終わりには人に見せることになるだろうから、とりあえず丁寧な字で。
教師は淡々と授業を進めていく。 聞いて無くてもここら辺は大体わかるし、もう気にすることもないだろう。
「…よし」
「こら四条。いくら授業聞かなくても中身分かるからってそこまであからさまに手紙とか書くなよー。なんだ?恋人への手紙か?」
「恋人ヘならもう少しまともな紙に書きます。あと俺に特定の彼女とかいません」
「不純異性交遊はやめろ。 そしてその紙を寄越せ。没収する」
「没収されるくらいならこの場で焼き尽くします」
「…分かったからライターは没収だ」
…何とかして没収されずに済んだ紙をポケットにしまう。ライターは没収されたが、使うこともないし中身も空だったのでよしとする。 仕方なく、ここから先の授業はまじめに聞くことにした。
授業が終わり、昼休みに入る。 あの二人はやはり、すぐに二人でどこかへと行ってしまった。 できれば、『見せたかった』のだけれど、まあいいか。 適当に昼食を食べて、屋上へ。
屋上についたら、そこには人がいた。 しかも、天野と邦章、あの二人。
「…四条、なんでこんなところに?」
「それはこっちのセリフだ。俺はやりたいことがあるんだ。何かいてまずい事情でもあるのか?」
「…いや、いい。早く終わらせて戻れ」
これは都合がよかったかも知れない。とりあえず、さっきの紙とあの光景、アレを見せたいんだ。最高の条件じゃないか。
「あー、じゃあすぐ終わるんで、目をつぶっていてくれないか」
「なぜだ」
「しないならずっとここにいる」
「……分かった。邦章も…もうしているか」
「サンキュー」
フェンスを回り、障害物のない場所を探す。
「…この辺でいいか」
丁度いい場所を見つけ、二人に聞こえない程度に呟く。 決めた場所の地面にさっきの紙を置き、
「いよ…っと」
ガシャガシャと少し大きな音をわざと立ててフェンスに登っていく。 フェンスの一番上につき、
「あーもう目を開けてもいいぜー」
二人がこちらを見付けるタイミングに合わせて、
ガシャンッ
さっき駆け寄ってくるのも見えたし、きっと『遺書』も読んでくれるだろう。
二階の窓際にいる生徒がこちらを驚愕の目で見ているのが見えた。 すぐに意識も暗転する。
そうして俺は自殺した。