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swallowed

「要、小テストどうだった?」

「あー、まあいつも通り」

「えーなになにまた3ケタ?」

「…そんなには俺だって頭よくねェよ?お前よりは頭いいけどな」

「なんだよそれイラつくなー」

今日も何もない。昨日の夢位しか刺激なんてない。小テストもごく簡単。授業も同じことを繰り返すのみ。 そろそろ思考も退屈に支配されようとしていた。

「…………でさー、今日…ってきいてる?」

「えー、ああ」

「聞いてねェ…!」

窓際の一番後ろ、あまり目立たない位置で話している二人のクラスメイトを見やる。学年でも1,2を争うであろう美人の天野水音と、クラスでもそこまで目立つ方ではない邦章奏弥。なんであの組み合わせ? でも、クラスのだらけきった空気とは違う何かをぼんやりと感じ取る。 ああ、ああいう風に何か真剣に悩めたりすることがあったら楽しいんだろうけどなあ。

「……あ」

あの二人が教室から出ていく。何か大切な話があるといった雰囲気。 何か面白いことでもありそうな。

「…ちょ、要? 急にどこに? おーい!?」

自分も少しだけ時間をおいて教室を出る。二人は人のいない中庭へと向かったようだ。やはり何かある?

二人が中庭で話を始めたところで、俺は窓の開いた廊下に隠れ聞き耳を立てる。 罪悪感は退屈に飲み込まれた。

「え…?だからそれ、どういうこと…?」

邦章の困惑する声。天野が何かを伝えたのか。

「だから、この世界は停滞している。どれだけ夜が来て明けようと、それは『今日』という日の繰り返しで、決して進むことはない。そして、誰もそのことに違和感は抱かない。忘れてしまっているからな。その上前日…でいいのかは分からないが、とりあえず前にどれだけ大怪我を負おうと、次には全てリセットされてしまう。分かったか?」

…小説のネタか? 何も考え付かなかったからよく本を読んでいる邦章に聞いた…とか。

「えと、だからそれがどう俺に関係あるの? 前回の事を覚えてるから? でも本当に曖昧にだよ?」

「だから、覚えているのは私とお前、そしてそんなことを起こしている犯人だけなんだ。犯人はきっと、このことに違和感を感じる人などいるわけがないと高をくくっている。だから、私たちがこの歪んだ世界を元に戻す」

…前回の傷を全て忘れる…。事実なのか? 事実ならきっと、あの夢のような感じだろう。妙にリアルで、本当に死んだと思っていたのに、次の日学校に行ったら何事もなく談笑している。 あの違和感。

その違和感が…本物なのか?  …でも、あの夢は、

「……―――――っ」

鮮明に思い出し吐きそうになる。 あれが事実? あんな一片の救いもないような痛みだけの残る事故?

「! 誰かいるのか?」

天野がこちらに来る。まずいから逃げる。 吐きそうだから動く。 だからあいつには俺が誰か分からない。 大丈夫。


トイレで吐いた後、あの話が事実だったならやってみたいことを一つ思い付く。頭に張り付いて欲求となる。どうしても試してみたい。このことを忘れたくない。 

失敗しても、まあ。

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