第一話 トキばあちゃんの家
その日。
ぼくより少し遅れて、従兄弟で同い年のサエ、その弟で一つ年下のケン太がやってきた。
二人はトキばあちゃんの家に着いた途端、
「「わーい!広い!!!」」
と荷物を全部放り出し、家の中へと駆け込んでいった。
相変わらず、あの二人は、とっても元気が良くてテンションが高い。それにすごく自分勝手だ。
小さい頃一緒に遊んだ時も、なんだかんだと言ってぼくにかくれんぼの鬼役をずっと押し付けてきたしなあ。
もっとひどい時なんかは、ボール投げでサエが「おりゃあ!」と投げたボールが気持ちがいいぐらいよく飛んで、よその家の怖いおじさんの家のガラスを割った時も、ぼくを生け贄にして、「後はよろしく―。」と言わんばかりに、すたこらと逃げて行った。
普段は良く取っ組み合いのけんかをしているくせに、そう言う時だけ、ものすごく気が合うんだ。
今だって、ぼくに異様にふくれ上がった、パンパンのリュックサックを押し付けて行った。
フタが開いていたので中をちらっと見てみると、一体何に使うんだ、と言いたくなるようなものがぎっちりと詰め込んであった。
「キャッほう!」
喜び勇んでケン太が廊下を飛び跳ねていく。
「うちなんかとくらべてずっと広いわねえ!暴れがいがあるわ―。」
なんだか怖いことを嬉しそうに言いながら、サエがどこかの部屋の戸を開けて入っていった。
あ、あそこには何か、トキばあちゃんが大事にしてた壺が飾ってあったような。大丈夫かな……。
確かに、ばあちゃんの家は広い。ぼくが住んでいるマンションと比べて、ずっと大きな一軒家だ。屋根裏部屋なんかもあるし、どっしりと大きな蔵もあって、そこには面白いものもたくさん置いてある。
ただし、大抵のものは古い。
「あーあ、壊しても知らないぞ……。」
止める間も退く二人の消え去ったほうをながめてぼくはため息をついた。
早速、二人がなにやらいじっているらしい、ガタゴトという音があっちの方から聞こえてくる。
「わあ!これなんだろ、姉ちゃん!」
「知らないわよ、そんなの。でも、面白いわねえ、見たことがないのばっかりだわ。あら。これ、たぶんお面だわ。古いわねえ。ケン太、ちょっとかぶってみてよ。」
「わぷぷっ!何すんだよ、姉ちゃん!自分でかぶれよ!」
と、歓声を上げている。バキ、という嫌な音の後に、何やらぎゃあっという悲鳴がしたのは、気のせいだろうか。
……考えるとこわいから、気のせいということにしておこう。