1.ある宇宙パイロットの選択の結末
1/2の選択の結果
「ニュースをお伝えします。半年前に墜落した宇宙船から墜落寸前に放たれた観測機器が謎の天体の正体を明らかにしました。天体は金星軌道上で小惑星と衝突、分裂し、2つの破片は近接しながら太陽系内を周回する軌道に乗っていたようですが、片方の破片に制御されて突入した観測機器による衝撃で両方とも太陽系を離れる予定です。そして観測機器が突入する寸前の観測と突入した時の反応から科学者達は天体が反物質でできていた可能性が示唆されています。なお、今回、これらの天体には観測機器を放った宇宙船のパイロットにちなみ……」
オレは病室の横のTVを消した。
「へえ。随分と有名なパイロットも居たもんだね」
「さあ? 何処にいたとしても宇宙船パイロットじゃねぇだろ?」
「なんだそれ?」
「墜落したんだろ? その船? だったらもうパイロットじゃねぇさ。ソイツは……」
確かに。違いない。と隣のベッドのヤツらは笑った。
隣のヤツらの笑い声の中で……オレはボロ船が上級クラスの垂直突入にも耐えられる装置のプロトタイプを仕込まれた船だったという幸運に感謝した。
ま、プロトタイプだったが故に随分と長く入院することになっているのだし、荷室が随分と小さく稼げなかったのだが……
感謝すべきだろう。
そんな最高級のボロ船を手に入れていたという幸運に。
そして……
あの少女にも。
「すべては1/2。そして現実は最善と最悪の狭間にある……か」
空は碧い。
オレは病室のベッドから……そんな常識的な現実に感謝した。
読んで頂いてありがとうございます。
キャラは「101人の瑠璃」の中から1人使ってます。
宇宙船内のコンピューターでも良かったのですが、そんな活躍をするコンピューターはないのでラプラスに出演して貰いました。