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永遠の翼 〜変えられない運命に、祝福を〜  作者: 咲良 柚葉
第一章【円卓の騎士編】

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第九話:破滅への布石

「さて、痕跡を探るか。二人は休んでろよ」

「⋯⋯いや、私は────くッ」


不意にランスロットの体が傾き、苦しげに胸を押さえて蹲る。

カグヤは優しく、背中をさすった。


「ゆっくり深呼吸して」

「───、────、─────ふぅ」


何度も深呼吸を繰り返し、ようやく呼吸が落ち着いた。

蹲っていた体勢から、ゆっくりと腰を下ろす。


「無理しないで、初めて祝福された武器を使ったんだから」

「⋯⋯⋯⋯すまない」


かく言うカグヤも消耗が激しいので、ヒスイの言葉に甘えて休ませてもらう。回復までには、あと少しだけ時間が必要だ。


「──君たちがいてくれて、助かった。私だけでは、あの獣を倒せなかった⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯」


あの魔獣は、侵入者が造り出して放ったものだ。

ランスロットたちだけでは、間違いなく闘えなかっただろう。


(侵入者は、あれで何をするつもりだった?)


先の砦戦が様子見だとしても、今回の魔獣は殺意が高い。騎士たちが死んでも構わなかった?


(いや、たぶん違う)


あれは、カグヤたち“監史者”へ差し向けられたもの。そう考えればしっくりくる。

侵入者は、カグヤたちが関与していることをすでに知っている。そして、ランスロットたちが危機に陥れば()()()()()()()()必ず助けることも。

 

(それじゃあ、今回の敵は────)


「カグヤ」

「見つけた?」

「あぁ⋯⋯」


カグヤは思考を一度中断する。

近づいてくるヒスイの表情が固い気がした。


「何かあった?」

「──いや、何でもない」


ヒスイは意味ありげにランスロットをチラリと見てから首を振る。

カグヤはそれ以上聞かなかった。

聞かずとも、ヒスイが言わんとしていることは伝わった。


「⋯⋯さて、体の調子はどう?」

「あぁ、問題ない」


ランスロットは何事も無かったかのように立ち上がった。先ほどフラついていたことなど無かったかのように。

でも、カグヤの目は誤魔化せない。

立ち上がる一瞬、少しだけ顔が引き攣ったのを見逃さなかった。


「油断は禁物」

「──分かっている」


少しだけ気まずそうに、ランスロットが呟く。

カグヤはそれを見て笑ってうなづいた。

そこに、先程の騎士──ガウェインが歩み寄る。


「ランスロット卿!」

「ガウェイン卿」

「くまなく捜索したが、同様の石は発見されなかった」

「──承知した」

「其方は?」

「問題ない」


報告を聞いて、ランスロットはホッと息をついた。

もうあの魔獣が出ないことが確認されて安心したのだろう。

カグヤは、すでにヒスイが探索して他の魔石がないことは把握済み。ヒスイの合流が遅れたのはそのためだ。


ガウェインがこちらをチラリと見る。

そろそろ潮時だろう。何か聞かれる前に退散した方が賢明だ。

 

「じゃあ、オレたちはそろそろ行くよ」

「またね」

「──あぁ」


ランスロットたちと別れ、少しだけ距離が離れると、カグヤがおもむろに口を開いた。


「それで、何が分かったの?」

「侵入者の向かう先」

「あの時言えばよかったのに」

「キャメロット城だ、なんて言えるわけないだろ」


ヒスイの言葉に、カグヤの動きが止まる。

キャメロット城──つまり、アーサー王がいる場所。


「狙いは、アーサー王?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


ヒスイは無言だったが、その顔は違うと言っていた。

侵入者が向かった場所はキャメロット城、そこに住まうのはアーサー王を筆頭に王家の人間。

もし侵入者の狙いがランスロットとするならば、アーサー王以外で関わりがあるとすると────。


「まさか⋯⋯」

「──たぶんな」


 ランスロットが、道を踏み外す原因となる人物。

────王妃 グィネヴィア。


「行くぞ」

「うん」


つまり、あの魔獣は陽動。

あれだけのものを召喚しておいて、ただの捨て駒にするなんて。

カグヤには、侵入者の思考が理解出来なかった。



××××××××××



「ランスロット」


カグヤたちと別れ、ランスロットたちは城へ帰還した。

城へ戻ると、何故かアーサーが待ち構えていた。


「どうなさったのですか、このようなところで」

「お前を待っていた」

「私を?」


護衛を連れず歩きながら話すなど、何時ぶりだろうか。もう随分と、このようなことはなかった気がする。


「体は大丈夫か?」

「はい、問題ありません」


咄嗟にそう答えていた。本当は、体も心も疲弊していた。まだ本調子には程遠い。

だが、それをアーサーに言う訳にはいかない。戦えない臣下など意味が無い。


「あまり無茶をするな」


その言葉と鋭い視線を受け、アーサーにはバレバレだったことを悟った。

アーサーが護衛を連れていない理由は、こんな姿のランスロットを誰にも見せないため、だったのかもしれない。


「申し訳ございません」


ランスロットの素直な謝罪に、アーサーは一瞬だけ柔らかく笑った。それは、まだ友として隣にいたころによく見せていた懐かしい笑顔だった。

それからすぐに真剣な表情に戻る。

王としての顔に。

 

「今回の敵は、手強かったようだな?」

「はい」

「普通の武器では倒せなかったと聞いたが、今お前が持っている武器で倒したのか?」


報告を受けたのだろう。

アーサーは、事細かに知っていた。

ランスロットの武器が祝福されたと言うことも。


「一人では、倒せませんでした」

「────お前でも、無理だったのか?」

「⋯⋯⋯⋯はい」


あの獣は、恐ろしく強かった。祝福されていない状態で奴の爪を止めたとき、あまりの硬さに驚いた。その力にも。

あれを倒すのは、一人では無理だった。というよりも、騎士たちでは太刀打ち出来なかっただろう。


「その者たちに助けられたのだな」


ランスロットは、二度も助けられた。不思議な雰囲気を纏ったあの二人組に。

一度目は、死を覚悟した砦での戦い。

二度目は、先ほどの獣との戦い。

どちらも彼らがいなければ、生きてはいられなかっただろう。


「────えぇ、救われました」

「そうか」


それ以降、アーサーは何も言わなかった。

無言のまま歩き、アーサーの部屋まで歩いてきた。


「ここでよい、お前もゆっくり休め」

「はい」


アーサーと別れて歩き始めたが、ふと剣の柄に手を添えた。

剣が、呼んでいるような気がした。

何故そう思ったのかは分からない。だが、間違いないという確信があった。


「────カグヤ」


ランスロットは、剣の導くままに歩く。

徐々に、歩く速度が早くなる。

剣に急かされるように、ランスロットは走っていた。


 

 

アーサーとランスロットの会話は書いてて楽しかったです。

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