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最初の獲物は貴様だァ…。

私とセインは目的のため、水面下で準備を行っていた。既に持っていたものを上手い具合に仕上げただけだから1週間とかからなかったけどね。


準備ができたので、いざ狩りに向かう。学園を歩いていたら目当ての人がいたので私は壁に隠れながら様子を窺った。王子の婚約者である公爵令嬢だ。王子が平民と楽しそうに話し合ってるのを見てぎりぎりと唇を噛んでいる。


きひひ…最初の獲物は貴様だァ…。


「クレハ・フォリスマー公爵令嬢、少々よろしいでしょうか?声をかける無礼をお許しください」


弾かれたように私を見る公爵令嬢。まどろっこしいのは嫌いだ、スパッと本題を話し始めようじゃないか。


「特待生が身分を問わず、様々な殿方に声をかけていらっしゃいます。そのことで少し相談させてください」

「ええ、どうぞ」


クレハ嬢はうんざりといった表情で頷く。きっと様々な女子生徒から「クレハさん、アイツやっちゃってくださいよ!」と言われていたに違いない。けれど、私の用件はまったくの逆なのだ。


「今、学園にいらっしゃる淑女の皆様は特待生の行いに眉をひそめるばかりですが、彼女の行いを指摘するのは待っていただきたいのです」

「なんですって?」


意外という表情のクレハ嬢。そう思うのも仕方あるまい。だけどねえ、ああいう女はちょっかいを出せば出すほど調子に乗るのよね。荒らしと一緒。叱ったり罵倒したりすると「私が可哀想!」て泣ける理由ができちゃうからね。怖くない?


「彼女を非難すれば話が拗れます。たとえ皆様が正しくとも、彼女はそれを受け入れません。彼女に時間を使うのは無駄なのです。そこで私から一つ提案があるのですが」


私はクレハ嬢に今回のビジネスについて話す。ゴニョゴニョ…。クレハ嬢は「ふうん」と感心した声を上げる。


「貴方の提案に乗るか反るか、実際に私自ら確認することで決めるといたしましょう。では、私にどんなものか教えてくださる?ホストクラブとやらについて」

「ここでは特別なお茶会と呼んでいただけると…」


姫が一人入りましたァー!!!ちなみに王族の血が入ってるからガチプリンセスだよ!


・・・


いくつかある屋敷、その一つを改装しました。黒を基調とした調度品、シックな色合いの壁にギラギラにデコられた部屋。鏡やスパンコールの反射を利用することで光源はできる限り少なめに。そんな都合よく屋敷があるのかって?あるんだな、これが。


なんだか怪しい雰囲気に気圧されているクレハ嬢はエスコート付きで中に入る。そこでちょっと死んだ魚のような目をしている我が婚約者に「エヴァンをお呼びして」と告げた。一回やってみたかったんだよね、こういうの。


こちらにどうぞと言われて通されたボックス席、まずはクレハ嬢に店について説明する。


「初回はお試しですので価格は控えめです。一時間でこの程度」

「あら、随分と良心的ですのね?」

「ニ回目からはぐんと値段が上がりますから…。とりあえず今日は此処がなにか知るために楽しんでください」


私もホストクラブについては聞いた話しか知らないので手探りなんだけど、初回は一時間で三千円飲み放題とか…そういう店が多いらしい。まずはホストクラブについて知ってもらうことで固定客をつかせるのだとか。どうしてもテンションが合わなくて離れる人はいるからね。


二回目からはそうもいかない。一時間で八千円とかそういう金額になってくる。ちなみにこれ基本料金ね。飲み物と食べ物は別料金だし、これにサービス料なる店に収める税金(笑)があるので二万円ぐらいかかってくる。これも安く抑えた場合の話。


まあ、お金持ちな貴族の皆々様にとっては大した金額じゃありませんけどね!


「サービス料だけでこれだけお金がとれたら、普通の仕事をするのはバカバカしくなりそうね」

「そうでもありません。接客が得意だったら大金を稼げますが、不得意な子は罰金のほうが大きくなるので寧ろマイナスです。なので、こちらも粒揃いになるよう育てています」


最初の一杯目を頼んだ後、飲み物と一緒にキャストが来た。


「わざわざ俺に会いに来てくれたって?」


出たー!俺様系!さらさらの髪に切れ長の目をした、ど級のイケメン!エヴァンはドカッと椅子に座って笑う。そんなエヴァンの行動に驚くクレハ嬢、だけど本番はこれからだァ…。


「話には聞いてるよ、クレハ嬢にお会いできて光栄だね」

「どんな噂かしら?」

「その美しさにと聡明さ、隠れた月が再び顔を出し、その行く先を導くほどに」


クレハ嬢は感心したように「まあ」と声を上げる。ちなみにこれ、我が国の古典から引用された言葉だ。エヴァンは此処でも一番教養がある。この国でも最高水準の教育を受けたクレハ嬢には刺さるだろう。


「お上手だこと」

「クレハ嬢が隣にいるならこれくらい…格好つけるさ」


それからの二時間、テーブルは大いに盛り上がった。高いドリンクが並べられ、高級な菓子がテーブルに置かれる。この店で一番高いドリンクを初回からキープする豪胆ぶりには私も慄いたもんです。流石です、公爵家。それ別料金だったのに。


けれどエヴァンは涼しい顔で接客をする。褒める、いさめる、甘える、甘えさせる、全てパーフェクツ!!!なんなら会話のレパートリーも広くて政治や社交にも明るい。凄いぞエヴァン、私もそこまで詳しくない。


彼女はホクホク顔で席を立つ。


「満足したわ」

「ありがたき幸せ」

「このクラブは招待制だったわね。いいわ、広めてあげる」


私はニヤリと笑った。

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