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第12話:決闘審問

神殿の大理石の廊下に、金属音が響いた。

剣を抜いた青年が、一直線にリクへと歩み寄ってくる。


カイル:「勇者リク! 貴様が聖剣を穢したという男か!」


ミナ:「えっ、誰ですか!?」

リク:「知らねぇよ!自己紹介から入れよ!!」


青年は長い前髪を払い、真剣な眼差しで名乗った。

カイル:「私はカイル=レーヴァン。聖剣ルミナリアの正統継承者にして、神殿騎士見習いだ!」


リク:「……あー、ややこしい肩書き来た」

セラフィナが横から冷たく告げる。

セラフィナ:「カイル。あなたの任は既に解かれたはずです。勝手な行動は処罰の対象になります」

カイル:「それでも! この偽物の勇者を見過ごすわけにはいかない!!」


カイルの声が神殿に響いた。

カイル:「勇者の名を騙り、聖剣を盗んだ罪――貴様には決闘審問を申し込む!」


リク:「ちょっと待て!? 俺、盗んでないし! 盗んだのあいつだから!!」

ミナ:「えっ!? わ、私ですか!?」

リク:「お前だよ!!」


神官たちがざわめき、ノアが柱の影から姿を現す。

銀の髪が光に揺れ、淡々と告げた。


ノア:『……神殿法第十二条、決闘審問の権利は認められています。

 ただし、致死行為は禁止。両者の魔力による意思の証明のみ。』


リク:「え、つまり……やっぱ戦うのか俺!?」

ミナ:「頑張ってください勇者様!」

リク:「励ましの密度が軽いんだよ!」



広間の中央に魔法陣が展開される。

観覧席には神官たちが整列。セラフィナが審判として立った。


セラフィナ:「――決闘、開始」


カイルが剣を抜く。

光を纏った刃が、まるで本物の聖剣のように輝いた。


カイル:「勇者を名乗るなら、その力、見せてみろッ!」


リク:「名乗ってませんが!?」


リクは慌てて両手を合わせた。

リク:「えーっと、精霊さん、ちょっと助けてください!」


パンッ。


おっさん精霊たちがまた現れた。

麻雀卓ごと。


エルド(風の精霊):『よっしゃ、今度は決闘か?賭けはどっちにする?』

ジル(火の精霊):『俺、あのツンツン坊主に100ゴールド!』

グレイ(水の精霊):『俺は勇者に50ゴールドだ!』


リク:「お前ら賭けしてんじゃねえ!!」


カイル:「何をぶつぶつ言っている!? 覚悟ッ!!」

風を裂く斬撃が走る。

リクは反射的に叫んだ。

リク:「風!風出して!早く!!」


エルド(風の精霊):『パン三個!』

リク:「後払い!!」

エルド(風の精霊):『よし来た!』


風が爆ぜ、リクの足元を滑るように吹き抜けた。

次の瞬間、リクの身体はふわりと浮き、カイルの剣をギリギリでかわす。


観客がどよめいた。

セラフィナ:「今の……間違いなく風属性の高位魔法。だが、詠唱もなしとは……」


ノア:『お願いによる即時発動。効率は悪いが、可能性は未知数。』


カイルが歯を食いしばった。

カイル:「ふざけるな!そんなインチキ魔法が勇者の力なものか!」

再び斬りかかる――だが。


エルド(風の精霊)がリクの前に立つ。

エルド(風の精霊):『ほら勇者、守ってやっから!』

エルド(風の精霊):『オッサンシールド、展開!』


リク:「名前ダサッ!!」


光の壁が立ち上がり、カイルの一撃を受け止める。

金属音と共に、風が吹き抜けた。


カイルは膝をついた。

カイル:「……なぜだ。聖剣の波動が、貴様の周りに……」


ノアが静かに告げる。

ノア:『勇者とは、神に選ばれた者ではありません。

 人に“願われた”者のことです。』


沈黙。

カイルの剣先が揺れる。

セラフィナが宣言した。


セラフィナ:「――勝負あり。勇者リク、無罪とする。」


おっさん精霊たちは歓声を上げた。

エルド(風の精霊)『勇者勝利ィ!パン追加忘れんなよ!』

ジル(火の精霊)『クソっ!エルド!加勢するなんて聞いてねえぞ!』

グレイ(水の精霊)『バカが!賭けってのはそれも計算に入れるんだよ!』


小さなおっさんたちが取っ組み合いをしている中、リクは天を仰いだ。

リク:「……とりあえず無罪になってよかった」



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