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第11話:勇者、精霊にお願いしてみる

神殿の一室。

壁一面に古代文字が刻まれ、空気には淡い光の粒が漂っていた。

魔力が濃すぎて、息を吸うだけで喉がピリつく。


リク:「……え、ここで魔法練習すんの?」

セラフィナ:「ここは魔法訓練室です。この部屋は魔力が充満しており、初心者も魔法を発動しやくなっています。」

セラフィナが淡々と答えた。

緑の瞳は真っすぐで、表情はまったく揺れない。

セラフィナ:「あなたが交渉魔法を使えるというなら、今ここで証明してもらいます。精霊と交渉してなんでもいいので魔法を発動させてください。」

リク:「いや、俺もまだやり方とか分からないんだけど……」

セラフィナ:「構いません。失敗したらその時点で勇者の名剥奪です」

リク:「ハードモードすぎる!!」


ミナが慌てて口を挟む。

ミナ:「勇者様を追い詰めないでください!初回は優しくしてあげて!」

セラフィナ:「神殿に優しさは存在しません」

リク:「存在してくれよ!!」


中央の魔法陣が淡く光る。

リクは深呼吸して両手を合わせた。


「えっと……精霊さん、出てきてくれますかー?」

無音。


沈黙。


セラフィナが腕を組んだまま冷たく言う。

セラフィナ:「呼ばれていないようですね」

ミナ:「勇者様、もう少し丁寧にお願いしてみましょう!」

リク:「……お願いします。できれば今すぐ。火でも風でもいいんで!」


パンッ。


空気が震えた。

次の瞬間、リクの前に三人の精霊が現れる。

全員、渋いおっさんが麻雀卓を囲んで現れた。


火の精霊ジル:『おーっす、勇者。さっきぶりだな』

風の精霊エルド:『腹減ったなー。お前昼飯食った?』

水の精霊グレイ:『今麻雀中なんだから邪魔すんな!!』


リク:「お取込み中悪いんだけど、風とか出せる?」

風の精霊エルド『出せるけどよ、タダじゃねえぞ?』

リク:「来た、交渉制……」


セラフィナ:「条件を出されているのですか?こちらには何もないところに話しかけているようにしか見えませんが……」

リク:「いや、なんかタダじゃ風出してくれないみたいで」

風の精霊:『あたりめーだ。労働には報酬が必要だろ?』


ミナが手を合わせる。

ミナ:「パンならあります!」

風の精霊エルド:『パン!?まじか!?』

リク:「あ、パンでいいらしいぞ。ミナ、そのパンくれ」


ミナからパンを受け取り、風の精霊に渡した。

風の精霊は目を輝かせ、パンを受け取った。

もぐもぐ……一瞬で完食。


ミナ:「パンが!!消えました!!」


風の精霊が見えていないミナは、パンが消えたようにしか見えず目が飛び出るほど驚いていた。


風の精霊エルド:『よし、やってやるか』


風の精霊エルドが指を鳴らすと、

魔法陣が光り、やわらかな風が吹き抜けた。

焼き立てパンの香りが部屋に広がる。


リク:「……できた、のか?」

セラフィナが目を見開く。

セラフィナ:「今のは確かに風属性の魔法。……だが、発動源が精霊だと?」

ノアの声が響く。いつの間にか、部屋の隅に立っていた。


ノア:『そう。これは契約ではなくお願い。

 勇者リクの魔法は、信頼と交渉によって精霊が発動する。』


リク:「俺、パンで世界救える気がしてきた」

セラフィナ:「……それは誤った方向の自信です」


ミナ:「では、私と出会った時に発動した魔法も精霊さんの力だったんですか!?」


風の精霊エルド:『ああ、あの時な!こいつの顔の前でケツ出して遊んでたら急にくしゃみされたもんだから、びっくりして中級魔法発動しちまったんだ!』


リク:「おい、さらっととんでもねえこと言ったな!!人の顔の前で何してんだお前!」


ミナ:「勇者様、精霊さんは何て言ったんですか!?」


リク:「いや、なんでもない。忘れてくれ。いや、むしろ忘れさせてくれ」


風の精霊エルドが豪快に笑う。

『面白ぇ奴だな勇者!』


風が再び吹く。

パンの香りの中で、リクは初めて思った。

――この力で、誰かを守ることもできるのかもしれない。正確にはおっさん精霊の力だけど。


だが次の瞬間。

神殿の扉が乱暴に開かれた。

「勇者リクッ! 貴様が聖剣を汚した男か!!」


剣を抜いた青年が立っていた。

鋭い目、神官の服。腰には聖剣の模造品。


ミナが小声で呟く。

ミナ:「新しいトラブルの匂いがします……」

リクは天を仰いだ。

リク:「俺まだパン焼いてお願いしてるだけなんだけどな……」

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