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桜色・迷い道  作者: ゆほ
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桜の苦悩

俺と亜美つぐみは血が繋がっていない。だから全く問題はない。自分の想いを自覚した時、俺はなんら躊躇はしなかった。


当時付き合っていた彼女とはすぐさま別れ、都合が合えば休日には亜美を誘って二人で出かけたりもした。

このまま順調にいけば「結婚」してもいいとまで俺は考えていた。


だけど、ふと思った。16だった俺がその当時付き合っていた彼女と結婚を考えていただろうか?俺も彼女もそんなことは全く考えてはいなかったはずだ。ならば亜美は?亜美は俺と付き合いだして、このまま結婚を意識出来るだろうか?


それ以前に、小さい頃は「お兄ちゃん」として接してきた俺を本当に「男」として意識しているのだろうか?


亜美が俺に好意を持っていることは分かっている。でもそれが単に「憧れ」に過ぎないのではという疑念が生まれた。


自分の理性が「まだ子供の亜美に性急に関係を進めるな」と止めに入るが、その一方で独占欲という黒い欲望が「何も分からないうちだからこそ亜美を手に入れてしまえ、俺なしではいられないようにしてしまえ」と囁きかける。


俺は二つの相反する思いの渦に巻き込まれるような状態だった。なんとか理性を保とうと考えた俺は亜美との間に距離を作ることにした。


仕事が忙しくなったこともあるが、飲み会、合コン、誘われるもの全てに顔を出した。昔のような特定の彼女は一切作らなかったが、後腐れがなさそうな誘いにはすぐに乗った。亜美は突然俺が態度を豹変させたことに傷ついた。


俺は亜美の傷ついた顔を見たくなくて、帰宅時間をずらした。


俺は亜美がどんな高校生活を送っているのか知らない。知りたくなかった。何かを知ってしまえばそれが火種となって亜美への独占欲がまた再び芽を出すかもしれないからだ。


亜美、亜美、亜美、求めるのは亜美の心と亜美との未来だけだ。


けれども俺が「好きだ」と言ってしまえば亜美は簡単に頷くだろう。その安易さが大人になった亜美が本気で恋をしたとき悲劇を生んでしまう様に思えた。そんな未来のために亜美に好きだと告げるのは憚られた。







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