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営業部立ち上げまで 3

「えっと、まずなんだっけ?」

ギルド長がちょっと焦ってる。急いで言いすぎただろうか?

「先ずは、勤務時間と給料です。」

「あー、うん。時間はヤードと一緒だ。毎回ヤードと共に出勤してくれ。仕事内容もほぼ同じ。人も少ないし、大分助かってるんだ。そして、給料は見習いの間は新人の半額になる。これは商会に入った見習いと同じ扱いになるな。」

「もちろん、しょ」

「ああ、勿論書類におこす。商業ギルドがそこを怠るわけない。あとは、確実性か。あまり使いたくないが、兄の力を使えば養子にさえなれば確約できる。だから、養子の判断は成人までになるな。」

侯爵様のお力を借りるのか。やっぱり、この世界は貴族社会なんだなぁ。いや、前世でも周りにはいなかったけど、裏口入社とかあるって聞いたしな。どこの世界も同じのかも。でも、給料はありがたい。今までは、コマ使いっていっても託児所込みって感じだったから、迷惑料金支払わない代わりにお手伝いしますってかんじだったし。ホクホク顔で早速書類の準備をお願いしようと思っていると、隣の幸が薄い男から待ったが入った。

「ギルド長。親としては、将来が不安なユウナに、この上なく感謝しかないお話です。しかしながら、一ギルド職員からすれば、新たに職員を増員するなり、今いる職員で回せば、新たな懸念材料を作る必要はないのではと。」

パパは、しがない職員の娘を優遇することで、今後でてくる問題がないか不安なのね。確かに、「あいつの娘が良いなら!」ってなるわなぁ。

「ヤード。だから安心なのだよ。君たちはちゃんと、これがかなり例外だと認識できている。だから、傲ることはないだろう。あと、ユウナの頭のよさはここらの住人なら誰もが認識している。商いをしてるものは嫁にほしいが、大体が不器用なためにあきらめてるくらいだ。」

囲い込むのを諦める不器用さって。褒められてるのかけなされてるのか。少し涙が出てきそうになったときに、ギルド長から爆弾発言が飛び出した。

「それに、ユウナの頭なら文官試験は余裕だろうが、そのあとの寮生活はどうするんだ?自分の事は自分でやるが普通だぞ?ここで、試験を受けにいかせてそのあと、後味悪くなるのはな。」

「「りょ、寮。」」

そうだ。試験のあとには、王都で学ばなくてはならない。その間は寮暮らしが普通だ。そして、私は家事が普通ではない。そのことを、すっかり忘れていたのは私だけではなく、パパもだったのだろう。真っ白になったパパは、頭を机に擦り付けて、お願いしていた。私も慌ててお願いした。

そのあと、書類はギルド長が準備していてくださるので、家族でもう一度話し合うようにと言われ、退室する際に、ギルド長が一言呟いた。

「まぁ、成人前に何かしらの実績を出せば、職員には自力でなれるだろうがな。」


そして行われた家族会議。商業ギルドにお世話になることになった。それでも、ママは最後まで学校を諦めてなかったけど。

「だって。あたしたちだっていつまであなたと一緒にいられないでしょ?最低限一人でいきれるだけの家事くらいできないと。全て他の人がやってくれるようなお金持ちになれるわけないし。」


その夜、マナ姉がお嫁にいって一人部屋になった部屋でひとり作戦会議を開いた。

「私が生きていくには、商業ギルドに頼るのが1番安泰よね。海のときから、不器用すぎて、一人暮らしできなかったもんなぁ。ほんと、よく運転できたよね。まぁ、不器用なのは家事だけだったけど。」

そう、海の時から不器用だった。家庭科は常に「がんばりましょう」か「1」。中学の製作はほとんどが先生に手直ししてもらい、グループでの調理実習は監督とレポート作成で乗り切った。

実際、前世を思い出して「料理チートや技術チートで花咲かす」なんて意気込んだこともある。

想像していただきたい。うろ覚えの知識で不器用な人が作る料理。生みだされたのは見るからに毒。勿論、そのあとに知識を回りの人に言っても、出来上がったものを見て笑って流されてしまった。ママは泣いていた。

技術チートもしかり。そもそも蒸気や電気なんて仕組みあやふやだし、先立つ資金もない。そして、開発してもらえる先のコネもない。ないないづくしだ。

「だからこそ、私の強みは唯一の自信のある営業ノウハウ。」

ギルドからもらってきた紙とペンをとりだす。

大きな紙にプロットを書き始めた。前世でよくやっていた、「○○を達成するために1年、半年、1ヶ月で大まかな予定をたてる」と言うやつだ。誰が考えてくださったかわからないが、私にはすごく性に合った。

「最終目標は、「一人で生きていけるようになる」よね。そのためには5年後には「商業ギルド職員になる」と。」

本当は家事とか細分化して、様々な可能性を作るツリー型にしても良いが、10歳の私はきっと混乱するし、意識がそれすぎてもとの目標を忘れるかもしれないから、今回はなし。

「それで、職員になるためには、ギルド長がいっていた「実績をだす」必要があると。」

5年後の目標の下に「実績をだす」と書く。

「商業ギルドでの実績とは何か。」

商業ギルドで求められているのは、事務処理。そして、どの企業でも同じ、売上。この2つであろう。

鼻と口の間にペンを挟めて考える。事務処理は意外と整っている。書類がたまれば、うちのようなギルドでは処理時間がかかったりもするし、手書きではあるが、一つ一つの書類には書式が存在し、各商業ギルドとのやり取りが可能なファックスのような道具も存在する。だから、この時点で私ごときが改良できるものはない。

そうなると、売上。

まず、我が国の商業ギルドの収入源は「ギルドへの登録」「物件管理、斡旋」「更新料」「商品登録料」の4点。ギルドへの登録は、街で商売するために納めるお金。多くが低ランクから始まり、更新する度にランクに合ったお金を納める。そして、居住地や商売する場所の斡旋で仲介料をもらう。さらに、新製品には3年間の特許のようなものをつけることにもでき、その登録料も頂く。

「つまり、魅力のある街では、「登録」からの「斡旋」「更新料」とお店が勝手に頑張ってくれる「商品登録料」で、対した努力をしなくても儲かるってことか。」

つまり、まずまずな街ララロは、良く言えば伸び代がまだあるといえる。

「うし!まずは更新料と商品登録料を伸ばす方法を確立する。」

実績をだすと書いた下に「更新料、商品登録料を今の3倍」と書いて丸で囲む。少々の増加だと実績かどうかわからないしね。

1年後には「売上を上げる方法の実践」、半年後には「売上をあげる方法の確立」、そして3か月後には「試運転」、1か月後には「草案」。書き上げた紙を、壁にべたりと貼る。


「よーし!早速明日からアイデア探しだ!!」



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