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営業部立ち上げまで 2

商業ギルドでコマ使いをはじめて、はや3年。私は10歳になっていた。

今日も今日とて、書類をもってギルド内を渡り歩く。どこにどの書類があるか誰よりも理解している、軽くお局さんなユウナだ。書類を渡し、確認してもらっている間、あまりにも暇でふと前世を思い出していた。


山川海。やまかわ、うみ。これが前世の本名。三姉妹の次女として産まれた。小中高大と無事に卒業。全国区の大手証券会社地方支社に就職した。会社では、営業を担当。企業や団体などの法人部門は総合職の男性が担当することがまだ多く、女性は個人のお客様を担当していた。以前は、営業事務が女性の仕事と言われていたのに比べて、ある意味開かれた、ある意味厳しい仕事になったとはベテランFAさんの言葉。それでも、支社営業部の統括は女性だったし、福利厚生も女性目線で成立している開かれた企業と世間には言われていた。私自身は、各商品部門での営業成績から半年に一度表彰される社長賞で、新人時代から何かしら毎回受賞を受けていた。まぁ、トップ10に入ることは一度もないが、支社名を言えば「山川海っているよね?」って言われる位には有名だった。けして、名前が印象的なためではないはずだ。営業成績の評価であろう。

勤務も5年たち、部下もできた。成績も良く、末端だが役職も付き、エリア職から総合職への鞍替えや、法人部門にも興味を持っていこのアドバイスと言う名の意思確認も行われるようになってきた矢先、訪問先から車で帰る途中に、道路に飛び出してきた子供をよけ、電信柱に激突。享年29歳。未婚。


「結婚かぁ。」

前世を思い出し、つい呟いてしまった。

「うん。いや、うん。なんだ。まだ、諦めるな。学校にはいれば家事もそこそこ出来るかも知れねぇだろ。」

書類を渡しているのをすっかり忘れていた。スキンもとい、ターナルさんが、無理やりフォローをしてくれる。今日も頭はペッかぺか。

「学校断られたんですよねぇ。」

「…」

フォローを忘れてますよ、ハゲ親父。書類逆だしな。


そう、この世界は10歳になると大体みんな学校に行く。学校といっても一律で通うようなところはなく、冒険者なら冒険者ギルドが推奨してる教室や、冒険者を紹介してもらう。騎士団や、文官なら、専用学校に試験を受けて通う。他、農家などの第一産業を生業としてる子供たちはそれぞれ教会等で基礎を勉強したり、商家は見習いとして奉公しながら学んだりする。そして、女の子はほとんど「学校」と言う名の花嫁修行の教室に通うのだ。

例外にもれず、先日私もママにつれられて、学校の門を叩いたのだが、10歳までに最低限うちで学べるはずの家事が全くできていなかったのだ。そう、全く。ここで、親の責任!っと言いたくなるかもしれないが、それはない。家族みんなでこの三年間頑張ってくれた。何せ、本人がドン引きするくらい家族は頑張っていたさ。もう聞くも涙、語るも涙。この前パパがギルド長にその内容を話していたけど、そのあと、ギルド長が「嫁にいかずに残ってくれるっていうのは幸せなことだ。」って言ってたな。「生涯面倒みるのは幸せなんでしょうか?」って返したパパは泣いていたけど。私、本人不在で生涯独身(人生決まる)ね。


ハゲ親父から、書類を引ったくり、ギルド長へ持っていく。


でも、本当にそろそろ危機感が生まれてきた。何かしら将来に向けて動かなくてはいけない。今までは、学校にはいるまでのお手伝いという事で、ギルドに顔を出していたが、学校、お嫁にいけないとなると、手に職が必要だ。現実的なものは、文官か。試験に受かる学力はある。実際、長男は末端の文官だが、太鼓判をもらっている。むしろ、私は長男より頭が良い。仕方ない、こちとら一応大学卒業、外務員に必要な資格はあらかた取得済みの頭を持っているお子ちゃまだ。ただ、女の文官は狭き門だから不安でもあるが、挑戦してみる価値はある。むしろ、嫁にいくよりも可能性があるのではないだろうか。ぶっちゃけ、女性が家事ができることを、前提としたこの世界は私の婚活は厳しい。


「自分で言ってて泣けてくる。」

最近口がよく滑る。そして、呟いたときに誰かがそばにいるのはお約束なんだろう。

「何か分からないとこでもあったのか?」

髭をすきながらやって来たのは、ギルド長だ。何やら、外にいたらしい。

「将来のことをちょっと。」

「ああ、その事な。丁度よかった。今ヤードも呼ぶから、ちょっと話をしよう。」

「え?パパも?」

ギルド長室に入って、初めてソファに座る。ソファは我が家にはない。高級品とまではいわないが、特別感がある。前世でのソファよりは座り心地は悪いが、十分だ。ちょっと弾んで遊んでしまうのは、実年齢10歳という事で許してもらいたい。いや、普通はしないのか。子供と大人、前世と現在で、基準がよく分からなくなってきた。

まもなく、ギルド長とパパがやって来た。そして、ギルド長が言うには、このまま商業ギルドで働かないかと言うことであった。

「え?つまり職決定?」

ふって沸いた就職先についつい笑顔になる。文官目指すのも良いかもしれないが、私は挑戦するよりは確実性が好きだ。株よりは債券のほうが落ち着く。

「しかし、ギルド長、それは異例ではないですか?」

焦って問いただすパパではあるが、若干押し付けたい気もあるのだろう。目がギラギラしてる。

「そうでもないぞ。過去に例はある。」

ギルド長が説明するには、商業ギルド職員になるには主に2通り。無難なのが、文官になって派遣される。これ、パパ達一般職員。そして、次が貴族様が戯れになられる。これ、ギルド長。役職付きは大体ご貴族様だ。そう、こう見えてもギルド長、この街の侯爵の弟である。あまりのチキンのおじさんぶりで、すっかり忘れてた。そして、あまりないが職員の子供が見習いから職員になったケースがあるらしい。

「しかし、それは役職クラスのご子息ではありませんか?」

「さすがヤードは調べてたか。そうさ、だが、なってはいけないって文言もないし、いざとなれば俺の養子にしてもいいしな。」

「そこまでしてもらうわけには!」

ありま、こりゃ大変だ。いつの間にか養子の話まで出てる。パパは流石に慌ててるわ。

「まあ、養子は急な話だし、色々通さなきゃならない手続きがあるが、見習いとしてしっかり仕事を与えて、成人に職員を目指してみないか?」

「それは、ありがたい話ではありますが。」

こりゃまた、勝手に人生決まりそうなかんじでありますが、流石に目の前で話しているので、少々本人も聞きたいことがでたきた。

「あのー、聞いてもよろしいですか?」

「ん?なんだい?」

「えっと、まずひとつめ。見習いとしてギルドに通う場合の職務時間と給料。ふたつめ。成人したときに雇ってとらえる保証。みっつめ。養子になる判断はどの段階でくだされるのか。が、気になります。」

どれも大切なことでしょ?






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