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営業部立ち上げまで 1

「おはようごじゃいます。」


木造の建物の裏口から入り、最初に会った恰幅のいいおじさんに元気に挨拶する。まぁ、かんだのはしかたない。聞こえないくらいなら、かんだほうがましだ。


「おお。今日も元気だなぁ。ヤードは今日受付だから、隣か受付が見える位置に席作るぞ。」


「いつもすみません。ギルド長。」


「仕方ないだろ。双子なんだろ?産後はそうじゃなくても気が立ってんだ。子守りくらい引き受けてやれ。それに、ユウナは利口だからな。」


チキンの美味しいお店の看板おじさんのような見た目で、気さくに話しかけてくれるのは、このララロ商業ギルドのギルド長である。そして、ギルド長にペコペコ頭を下げる、幸が薄そうなひょろひょろ男は私のパパ、ヤードだ。


「ライもロイもかわいいのよ!でも、ママとマナ姉だけでお世話足りるから私はいらないって。ほらわたし不器用だから。」


そういうと、ふたりとも残念な目でこっちをみてくる。大人なんだからフォローいれてほしいわ。

そうそう、実は先日我が家に双子の男の子が産まれた。名前はライとロイ。これで我が家は両親とふたりの兄、マナ姉、わたしと双子で8人家族となる。これは、近所でも有名な大家族だ。ふたりの兄は成人と言われる15歳を期に、それぞれ独立して家を出ていったが、嫁入り前のマナ姉とまだ7才のわたしは家にいて、家事手伝いをしているのだが、如何せんわたしは不器用だ。自他共に認める不器用だ。料理をすれば消し炭。洗濯すればボロボロ雑巾。やる気と根気は人一倍あるのに、なぜかやればやるほど、ひどい状態になる。

ただ、神は見捨てなかった。わたしは異様に頭がよかった。

その結果「家にいて被害が出るくらいなら、外で大人しくしてろ!」と家族会議で本人不在のまま決議し、パパの仕事場まで出向くはめとなったのだ。他人(家族以外)と本人への配慮を忘れた瞬間であった。


ギルド職員の皆さまに一通り挨拶が終わったら、受付に座るパパの後ろの席に座る。子供用の机と椅子は、ギルド職員で趣味日曜大工のナルカさんがつくって持ってきてくれた。その机にいい笑顔でナルカさんが置いていったのは、昨日受付で受領した少なくない紙の束だ。この束を区分けし、担当者へ持っていく。そして、その担当者からこれまた処理済みの書類を受け取り、さらに偉い人のところに持ってく。もしくは、ファイリングして棚にしまう。これが、わたしに与えられた仕事だ。


切っ掛けは、パパにギルドに連れられてきた初日に遡る。

ギルドに入ってすぐ、出産のお祝いをされたパパは、諸事情(わたしが壊滅的に家事ができないこと、むしろ邪魔でしかなくママがぶちギレそうなこと)を、やんわり処か、スパッとズバッと本人の目の前で、みんなに言い、子連れ出勤を勝ち取った。

いやー、恥をさらされたわたしは泣きそうになったが、前日に死にそうになるくらいママとマナ姉に詰め寄られていたパパを思い出したら、涙も引っ込んだよ。うん、新しいおむつを作ろうと思ってママの一張羅を切り刻んだのがいけなかった。いや、その後渡された布を縫っていたら、テーブルクロスと、カーテンもなぜか一緒に縫われていたからかなぁ。それとも、お昼ご飯を作ろうとして、包丁でいもを切ろうとしたら、包丁がいつの間にか天井に突き刺さっていたからかな?ほんと、不思議だよねー。包丁って飛ぶんだねー。


それで、その日は受付の後ろで書類の処理をしていたパパの隣で大人しくしていたんだけどさ。ギルドの職員に心のなかであだ名をつけて、来訪者さんたちの人間観察も終わって。まぁ、暇なになったとき、パパの書類が全く減ってない処か積み上げられてるのを見て驚いてさ。だって、書類で顔が見えないんだよ?

「パパは仕事ができない人なの?」

って、つい呟いたときに、


『仕事ができないやつは、机がきたねーんだよ。んで、無駄な残業が多いんだよ。』


っていう、嫌味ったらしい声が頭に響いたんだよね。そう、この時、わたしユウナは前世を思い出した。日本で証券会社に勤め、勤務中に交通事故に巻き込まれてなくなったことを。

そして、パパの机をもう一度みて、整理をはじめた。ありがたいことに書式が決まっていたため分類がしやすく、あとは日付順にすれば完了である。その間、ギルド内が忙しく誰も見ていなったため、気持ち良く最後まで終わらせれた。まぁ、子供が書類を触れる環境は良くないけどね。


「これ、ユウナがやったのか?」

「あ、うん。マトメテミマシタ。」


怪訝そうな顔でパパに聞かれたので、つい片言で返してしまった。背中には汗びっちょり。よかれと思ったけど、もしかして法則とかあった?いや、まずは子供じゃなくても部外者がさわっちゃダメだろ。


「よくやった!」

「へ?」


双子が産まれたぶりの、全快の笑顔で褒められたわたしは、頭にはてながいっぱいだった。


「うんうん。これだと確かに見やすいな。いやー、連れてきてよかったわ。よし、これ、向こうのおっちゃんにもってってくれ。ほら、あのハゲてる奴だ。ハゲってわかるか?頭の毛がないってことだ。」

「ハゲはわかるけど、ほとんどみんなハゲ…。」

テンション高いまま、書類を渡されて振り返ると、さっき「スキンちゃん」とあだ名をつけたおっちゃんが手を挙げていた。

いそいそと書類を持っていく。

「ハゲはねぇよな。俺は剥げてないんだぞ、あえてそってるんだぞ。」

どうでも良い言い訳を始めたので、さっきの疑問をぶつけてみた。

「そこは興味ないんで良いです。それより、勝手に書類さわっていいんですか?」

「あのな、容姿に触れるのは結構慎重にしなきゃならんのだぞ?あと、書類は気にすんな。商業ギルドっていっても、みんながみんな書類仕事が好きって訳でもなくてな。たまに書類が溜まる日があるんだ。だから、整理してもらえるだけで助かるんだよ。ここのギルドは人手不足だし、もともと駄目なら職場にいれたとしても書類の近くには立ち寄らせないだろ?」

「確かにそうですね。」

「でも、7才なんだろ?良く整理できたな?」

「あはは。」

笑顔でいると、にっこりされて、あめ玉と書類を渡された。

「ほら、これやるから、この書類をハゲに持ってけ。」

「ハゲ?」

つい見つめて、首をかしげてしまった。

「俺は剥げてねぇ。俺の頭をみるな!向こうの脳天ハゲだ!」

「あー、はい。」

口にあめ玉いれて、「ザビちゃん」のところへ向かう。

そういや、ギルド職員のあだ名をするするつけれたけど、これもほとんど前世の記憶からだね。「ザビちゃん」って、黒い服着てありがたい本持ってる人の事だもんね。


そして、ここ、ハゲ率高いな。あ、年齢とこの国の雰囲気に流されてたけど、容姿いじりはセクハラだ。いかん、いかん。



それから、あっちにこっちに書類を渡し、パパのところに戻ってはまた書類の整理をしてたら、いつの間にかコマ使いとなっていたのだ。






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