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兄妹二人旅

新星暦997年 夏 場所は今も昔も代わらない新渋谷。


『現在日本国民は三億人を越え、ますますの発展を遂げております。

しかし、これだけ発展をしてもまだ海を越えることは叶いません!

 年々見つかる《可能性の洞窟》も対処しつつ、外へ目を向けるのは些か早計と思われる方も要ることでしょう!

陸が、海が、地球が、銀河が大きくなって早千年以上。経てども経てども海外との連絡は回復していない!

 これがどういう意味なのか!他の国は滅んだのか、それとも我々と同じように未だに自国から出られないのか!


人工衛星を飛ばすことができなくなった今。どちらでもいい!歴史を繰り返さぬためにも、友好的な他国との接触。それが叶わず侵略に対する武力を持たねばならない!

国外に向けて準備を進めることは、国力の増強に他ならない!

海を越えることも、《洞窟》の探索も結果は違えど未来のためになるのです!』


国のお偉いさんの言葉を放送しながら、巨大なデイスプレイは片側五車線のスクランブル交差点を見下ろす。行き交いの激しい中、外に跳ねた黒髪がやや首にかかる少女がいた。

薄い空色のデニムに、黒のモックネックタンクトップ。パッと見わからないがハイカットの安全靴を履いている。腰のベルトと左の太ももを繋ぐベルトポーチ、革製でとても頑丈な作りで大小二つ着いている。

そんなポーチの着いた左足を駆使し大きな紙袋を両手で持ち直しながら歩く。中には長持ちしそうな缶詰や長持ちしそうな真空パックされた食材等々。

毛並みの良い大型犬のような夫婦の間に普通の子供が1人。家族を避け、鱗がびっしりある爬虫類系の女性グループ。四人を避け、なぜか空を飛んでいない天使のように羽の生えた男性を避け、その他様々な姿形の人を躱し待ち合わせの駐車スペースへ向かっていた。


行き交う人の身長は様々、一番多いのが高めで180センチを軽く越える。勿論中には130センチに満たない小さな人もちらほら、対して少女は150後半と少し小さめに入るだろう。


お国のお偉いさんである若目でスーツ姿の男。少女はその男のファンで目を輝かせながら余所見をしていた。


「アン。余所見してると人とぶつかるぞ?」

「わわ!お兄ちゃん!?車で待ってるんじゃなかったの!?」


いつの間にか渡りきっていた交差点。気がつくとアンと呼ばれた少女の兄が立っていた。

アンよりも身長は大きく170センチ半ば。黒髪に紛れて緑色の髪が見えかくれする。

黒のルーズフィットエスニックパンツと白のチャイハネ袖は七分丈、踵と足首を固定したサンダルを履いている。全体的に緩めの服装をしており、口には出さないがアンはこの服装は余り好みではない。


不意の登場に驚き紙袋から缶詰がいくつか落ちる。両手の塞がるアンの変わりに拾いあげ紙袋に戻すと兄の片手が両手にかかる重さを取り除いてくれた。


「余計なもの買ってない?」


もちろん!小さな胸を張り少し自慢気だ。

そんな反応を尻目に、いつもより細目で買い物袋を漁る。注文通りの長持ちしそうな食材。

想像とは違い怪しんでいた目が大きく開く。少しの感動を覚えていたころ、紙袋の底に柔らかいものを掴んだ。


「あー…これは?」

「シュトーレン。」

「長持ちしないじゃないか。」

「え?冷蔵庫に入れてれば三週間とか持つって店員さん要ってたよ?冷凍なら数ヶ月も!」

「僕らの車に冷蔵庫も冷凍庫も無いよ…」

「あ…」


しまったと言わんばかりの顔で遠くを見るアン。やれやれと溜め息を着いた兄は、一度荷物をおいて、再度ちゃんと消費期限の長い甘味を買いにいくことを提案した。

溢れんばかりの笑顔を作り、車へと向かう。

交差点は信号が変わり車の往来が始まる。車通りは多くもなければ、少なくもない。

片側五つも車道があれば混雑も限り無く起こり辛いのは当選と言えば当然であり、国の中心部国会議事堂までこの場所から三時間もかかるとなれば、昼真っ只中の現在に車通りが少ないのも頷ける。

その代わりといってはなんだが、やはり若者は多い。


「そうだお兄ちゃん!ほら!あそこのテレビに私の推しが写ってるよ!」

「総理の事本当に好きだね。」

「そりゃあ好きだよ!なんたって私達の理想でもあるんだから。」

「またその話…『人類でもっとも早く《不老の可能性》を開花させた人!不老となる前から政治家である上に、不老に必要な条件である《可能性》込みの、個の強さを極めることを最初に達成したんだよ!』耳にタコができる程聞いたよ。」

「むむむむ~!」

「次はあれかい?『かの天変地異が起きた時、人工衛星は地球に落ち、大地は裂け、広がり人口も三千万まで落ちたであろう頃から今の日本まで回復させた手腕があるんだよ!』だ!」


ムキーッ!と頬を膨らませ兄の肩を何度も叩く。ケタケタと笑いながら兄は謝る。そんなこんなで車まで到着し荷物を積める。


「悪かった悪かった。いつまで叩くん? そういえばさっき新聞で読んだんだけど、健康寿命が105歳まで伸びて、平均寿命が130年もあれば不老になろうとする人は少なくなったらしいよ。今の寿命で満足してるってさ。」

「なにさ。じゃあお兄ちゃんは不老になるの諦めても良いって言いたいの?」

「まさか。アンを置いて一人で寿命を向かえるつもりはないよ。」


大量の飲み水や食材、テントに衣類の替え、ガソリンなどが詰め込まれたトランクを閉め、黄色くてボロボロの車で頬杖をつく兄はにんまりと笑いながらアンを見る。

叩くのをやめたアンもまた兄の顔を、またからかわれているのか? と不満げである。

そんな不満げな顔も、お菓子で釣られて機嫌が良くなるところもお約束。


頭の上に来た大陽を確認する兄は出発の時間を気にして買い物を急いだ結果、ご機嫌取りと合わさりポテトチップスに始まりチョコレートと大量に仕入れる羽目となった。

元々沢山詰め込まれていた車は更にパンパン。それでも二人は満足げに車へと乗り込んだ。

助手席からアンが図鑑程の大きな地図を取り出す。地球の拡張後約千年かけて作成された最新の地図、一頁目に描かれているのは本州のみ。政府がいかに時をかけても本州の外を確認することすらできていないため、北は北海道、南は九州、四国、沖縄等は記載されていない。

因みに、本州のみで九万キロ近くの大陸となっており、千年前の地球の直径の倍以上。いくつもの奇跡が重なったのか、地球の一日は三十時間程と対して変わらない上、本州は四季も存在し異常気象なども少ない。


しかし、陸から離れればその限りではない。一週間も東西南北向かえばイージス艦も簡単にひっくり返す高波が、空も八時間進めば戦闘機ほどの大きさですらバラバラになる風の刃とも言える乱気流。大気圏を抜けようとしても同じこと、最早外は庶民にとってはブラックボックス。


ディスプレイ内でも言っていたが国力の増強は今や小学校でも行われている。いわゆる戦闘訓練。異常気象も少ないとはいえ、天気によっては人の頭サイズの雹が降ってきたり、強風の日は正真正銘かまいたちを体感することだってある。

それだけならば良かったが、新種の野生動物。いや、《可能性》により進化した動物という方が正しい。これがまた驚異の強さを持つ。ウサギに似た生物ですら旧世代の自動小銃を食らっても死にはしないだろう。


故に交差点を歩いている人達は自身の《可能性》を伸ばし強くなった姿なのだ。基本的に身体能力を高めた上で、人によっては動物の姿に、魔法のように火や水を扱うなど。


頁を進めて地図を確認する二人も例外ではなく戦える。そんな雰囲気を微塵にも感じさせない二人は現在地と目的地が載っている頁を見つけた。


「お、新奥多摩見っけ。ん~五千四百キロ!遠い!」

「インフラが新東京新京都間。ある程度整ってるとはいえ、山道は危険もあるし何日かかることやら。」

「心配してても始まらないよ!はい発進発進!」


はいはいと二度返事をして車は動き出す。少し見た目の悪い車だが、走行には問題がないようで軽快な走りを見せる。


前述にあるように生き物の強さが大きく変わった為、郊外へ出るための道路は本数を絞られ国道を一本通すだけに留まっている。都市も以前より少なく、多くの人々か住む大都市は、新東京、新京都、新青森の三つ。大都市間には三つずつ中継都市が存在し流通の手助けを行う。それ以外には都市から遠すぎないところに幾つかの街や、村等が存在はする。

そんな危険な道を行くともなれば行方不明者がでないよう徹底的に対策しており、運通を生業とする者の戦闘力や、強くなければ護衛はいるのか、許可は、目的はと様々な権利や資格が必要。


いつの間にか空には雲が多い月明かりのない夜が深くなってきた頃、二人の車は都市から大分離れた場所まで来ていた。新渋谷の様なビルはなく、舗装された四車線の道路。進行方向には二十三区を囲む五十メートルの壁。そして、十メートルを越える門。都市間に必ず存在する検問所が見えてきた。

門から五キロ手前、暗い世界に明かりが点る場所がある。大型のトラックや、装甲車、ジープ等が多く並ぶパーキングエリア。中継都市まで移動するにも少なくとも四~六日間は進まなくてはならないので、国道での外泊を避け夜に検問所を通る車はほぼいない。

例外もあり、特急料金での配達は夜間も走りっぱなしなこともあり得る。


駐車場スペースの一つに兄妹の車も停める。


「ふーーーんっ!11時間運転しっぱなしは疲れるなあ。」

「ふがっ…あれ?もう検問所着いたの?」

「ああ、今日はここで僕らも車中泊さ。カップ麺何が良い?」


積み荷に上半身を突き刺しカセットコンロと鍋、水を取り出しながら兄のお尻が問いかける。「きつね」と、事前に決めていたのだろう返答の早さ。兄は短く返事をして積み荷から身体を戻してきた。

ふと、シートベルトを外すアンを見た。視線に気がつき車から降りながら


「ちょっとトイレ行ってくる。準備よろしく!」

「行ってらっしゃい。」


車の扉をしっかりと閉めるとぬるい風がアンの髪を揺らす。明日は確実に国道に出る。完全な県外ではないので危険度も少ない筈だが自身の服装を見た。まあまだ平気だろう。そんな軽い気持ちで公衆トイレへと向かう。

トイレしか無いパーキングは混雑避けなのかやたらと広い。事実アンと同じくトイレへと足を運ぶ人は多かった。


「おや、こりゃまた若い子が。初めまして、護衛の仕事かい?」

「初めまして。そうですよ。」


背中にやたらと大きなリュックを背負う2メートル近い。顔や腕に大きな傷がある顔は純ジャパの男性が声をかけてきた。運通関連の人達は国の試験をパスしたエリート公務員。全公務員が素晴らしい人格者な訳ではないが、一人ひとりの能力も高く正義感もあるので、この検問前のパーキングはとても治安の良い。見た目はどれだけ怖くても国の人なので笑顔で対応。運通関連は横の繋がりが非常に大事で、互いに困った時はサポートし合えるようにしなくてはならない。暗黙のルールというやつだ。

しかし、そんなエリートにアンは息をする様、嘘をつく。

兄妹は二人とも公務員ではないから。


「俺の名前はレオン。これから新京都のからに先、第四都市予定地の広島まで行くんだ。」

「アンです。私は新京都までです。第四都市計画関連の人はじめて会いました。光栄です!」


一度足を止め、軽く握手をした。明らかに日本人の彼、日本人っぽくない名前であるが、千年前の生き残りに住んでいた外国人や観光客等もおり、発展と共に名前や人種などは小さな問題とされ。今では気にする人は誰もいない。


「こちらこそ。こんなに若い子が運通に来てくれるだけでとてもありがたいよ。最近は増えてきたのかな?同じ位の子が他にもいたよ。」

「ありがとうございます!まだまだ未熟ですが頑張ります!ん~、若い子ですか?どうでしょう?同期は基本洞窟の方に行ってて余りわからないです。」

「《可能性の洞窟》ね!《可能性》の宿る物はあそこからしか出てこないからな。あっちも大事な仕事だ。働いていれば素晴らしいことさ。」


再度アンはお礼を言う。簡単な会話をしていると目的のトイレまで着いた。


「アンちゃん。またどこかで会えたいいね。」

「こちらこそですレオンさん。またどこかで。」


別れたアンは個室のロック。座る同時に唸る。先ほどのレオンの事だ。兄との約束で話した相手や強そうな人の特徴を見て、どんな《可能性》を秘めているかを考察するという訓練をいつもしている。

《可能性》には大きく分けて三種類。

一つ目は新渋谷でも多く見かけた獣の力を発現させる

《獣化》

身体の一部、または全身に動物的特徴を出現させる系統。殆どは変化させっぱなしで慣れを必要とする。

実在の動物であったり、ファンタジー物の王道ドラゴンであったり様々。他にも動物的特徴だけではなくその特徴に超常の能力を付加させた《獣神》という上のステージもある。


しかし、今のレオンにはその特徴がなかった。あって当たり前の能力とする者もいれば隠す者もいる為中々第一にこの案は挙げづらい。多く変化させたり長いこと使っていたりすると獣臭が残るがそれもない。


では次に自然界の力を操作する

《魔法使い》《魔女》

得意不得意があり、見極める必要もある。火や水、土や風、陰陽など、どの系統を極めるかは当人次第。

操るだけでなく。本人がその自然自体になることが出きる《魔神》という上のステージもある。


こちらは可能性としては捨てきれない。身体的特徴に変化はなく、実際に最初に強くなるためこの系統を選ぶものは多い。ただ、想像よりも火力を上げるのは難しく。極めることが余りにも困難な為、断念し他の《可能性》をするものも多い。

比較的火力面では他の二つより劣るため援護などの後方支援向きな能力と言える。

2メートル越えの大男が使うには少し勿体無いので捨てきれない程度だ。


そして最後の身体的特徴を強化する

《超人》

どの系統も身体能力強化の《可能性》を前提とした力だが、そこからさらに肉体の強化を図るこちらの系統。

例えば自身の自然治癒力を大幅に強化したり、五感機能の限界を越えた強化をしたり、身体の一部又は全身を巨大化させることなども可能。細分化され様々な《可能性》を秘めた系統である。

極めることで100年以上見た目が変わらなくなった者は《神人》と呼ばれる


こちらは大いにあり得る。身長も生かせ、さらに何かしらの強化を加えることでより強さを見いだすことが出きる。

傷が多い事からも近接戦闘の経験が多いかもしれない。


ウンウンと思考の海に浸ったアンは無意識に車へと戻ってきていた。


「おかえり。丁度出来たところだよ…どうかした?」


今出会った男の事を出来立てのカップ麺を食べながら話す。食べ終えるのと話を聞き終えるのはほぼ同時。


「確かに《超人》っぽいね。アン見たいなレアタイプかもしれないよ?」

「なるほど、確かにあり得るか。都会の人なら私みたいなのもいるかもしれないし。」

「いや、どうだろう?居るかな?そんなにポンポン居ても困るんだけど。まあでもこうやって考えることでどんな可能性が来ても瞬時に対応できるよね。さてご飯も食べた。僕はもう歯を磨いて寝るとするよ。」

「オッケー。私はたくさん寝たからここなら安全だろうけど、ちょっと見張りがてら起きてるよ。」


新渋谷からここまでの道のりを殆ど寝てたからね。なんて事は言わず、任せたと笑顔で伝えた。

普段も移動は兄が、夜の見張りはアンと役割を決めている。夕食のゴミ捨てと歯磨きを終え運転席で毛布にくるまり寝息をたてる兄を尻目に、静かな夜に溶け込むようアンも体を丸め外を見守る。時おり聞こえる車のドアの開閉音以外はほぼ音はない。少し懐かしい静寂さはいつ感じても薄い笑みが溢れる。その笑顔を見る者はどんな感情を抱くのだろう。

憂虞か、憐憫か、少なくとも明るい気持ちにはならないであろう。


ーーーーーーーーーーーーー


夜が明けた。まだ少し薄暗いが、雲の覆っていた夜とは打って変わり、雲一つ無い晴れ空。昨夜停まっていたエンジン音が次々と唸り始め、兄は目を覚ます。

目的地の違う運送であっても近くに人の居る安心感からか早朝の大移動が始まった。


ゆったりと体を起こし、支度を始める。昨日の夜、アンがしていたように自身の服装を見て、アンと同じ結論に至る。二人は美味しくも不味くもない携帯食料を一つずつ食べると歯を磨き、ものの数分で準備を済ませ大型のトラックと護送車に続く。

パーキングを出て直ぐ、検問所は大渋滞が出来ていた。兄妹の車も右手に狭い側道、前方、後方、左方を大きな車に囲まれ動けなくなる。


「さて、アン。よろしく頼むよ。」

「昨日の夜から働きすぎだなあ。お腹空いちゃうあ!」

「じゃあシュトーレンを上げよう。」

「いやそれ昨日私が買ったやつなんだけど?」

「ほらほら、後ろの積み荷の中でお食べ。」

「うう、狭いよ。美味しいよう。」

「嬉しいの?悲しいの?どんな感情なのその顔。」


間の無い素早い会話に慣れを非常に強く感じる。ツッコミ役がいないまま大量の積み荷にすっぽりとはめ込まれたアンは、顔と手だけが運転席側に出ている状態でモソモソとシュトーレンを食べる。そんな彼女の肩周りから手、顔とあっという間に見えなくなっていく。

兄の視界にはまるっきりアンの姿は見えない。


「準備オッケー」


それだけ聞くと兄は勢い良くアクセルを踏み込み、車を側道に走らせる。周りの人々はそんな暴挙にまるで反応がない。兄妹の車はアクセル全開のまま直線を走り抜け瞬く間に検問所に到着しようとしていた。

鼻歌交じりに兄は運転席側の窓を開け、右手を出す。軽く握る様な形を作ると掌から土で出来た棒が出現した。


「三、二、一!」


合図で兄は土の棒を地面に突き立てる。全速力のまま突き立てるので棒はガリガリと削れていき、同時に進行方向にはやや左向きのジャンプ台が生成。ボロボロの車は宙を舞う。兄の右手にある棒は車の大ジャンプと平行して伸び、ジャンプ台が役目を終えると盛り上がった地面を元に戻す。

飛び上がった車は検問の一番前にある大型トラックの荷台に、不自然なくらいビタっと停まる。


小さく息を吐いた兄は棒を手放し砂と変え散らす。車のエンジンを切り、窓を閉めると足をハンドルの上にのせてのんびりとした姿勢をとる。


「検問所を越えるまではしばらく休憩だね。」

「あ」

「もしかしてシュトーレンこぼした?」


えへへと見えない妹の声が聞こえた。それからは三十分もしない内に二人をのせたトラックは検問所に到着した。

東京二十三区を覆う壁は相当な厚さなのか、検問所の中はギリギリ出口が見えるかという長さを持つ。ただ、見た目だけなのかトンネル程度しか天井の高さがない。

行き先が同じ三台のトラックには警察官の制服に近い格好をした係員が三人集まる。左腰にロングソードを挿す者、両腰に斧がぶら下がる者、ホワイトタイガーの様な見た目をした者。その中でホワイトタイガーが言う。


「此度の国道を通る者は全員車を降りて人数、携帯武装、資格証の確認を。また目的地、積載物の照合も行います。手早く済ませましょう。」


手を叩いて急かすホワイトタイガー。ゾロゾロと運転手六名、十八名の護衛達が一列に並び、必要書類や武器を手に持つ。その中にレオンの姿があった。順番に確認をされているなかで、ホワイトタイガーがレオンの前に立つ。険しい表情が書類を一目見ると大きく驚いた顔をした。何度か書類とレオンの顔を見比べると


「レオン先輩。お久しぶりです。」

「ああ、久しぶり。カンバラ君も結婚を機に運送やめて以来かな。元気そうだね。」

「先輩の指導の賜物です。今日は変身されてないのですね。気がつきませんでした。」

「かみさんが獣臭いって怒るんだよ。普段からの変身は五年くらい前からしてない。なんなら最近は平和だからね。変身もしないよ腕もだいぶ落ちたさ。」

「ご謙遜を。それでも素顔知りませんでした。うん。書類等に問題はありません。」


頷くホワイトタイガーは他の二人とも確認を行う。大丈夫だと力強く頷いた。トラックの上に堂々と密出国しようとしてる者がいるとは知らず。

乗組員が改めて配置につくと一団は走り出す。三分ほどのトンネルを潜り、外へと出た。ソコソコ傾斜のある坂を登り切れば、地平線まで続く国道一号線。見渡す限りの森、どこまでも広がる空。星の《可能性》で膨れた世界が現れた。


「いやあ、全然違ったなあ。レオンさんの系統…」

「ま、合否のわからない訓練だからね…」


移動距離九百キロ強。目的地まで四千五百キロ。

世界観を伝えたい一心の文となりました。拙いですがよろしくお願いいたします!

この兄妹は何をしたくて旅を始めているのかも楽しみに読んでいただけたら嬉しいです。

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