世界の序章
天体観測。
都内某所、秋が深まり夜は寒く感じる季節。普段はほとんど人がいない丘には、珍しく人混みができている。
なにやら大きな彗星が、今日からは肉眼でもみえるとニュースで流れているのを男も聞いていた。
「あらら」
それでも、いつもは人のいない静かな夜を過ごすのにもってこいな場所は占領され、思わず声が漏れる。
独占欲があるわけではないので鼻から少しの息を漏らしながら距離をとりベンチへ座る。
星が好きなわけではない、1人が好きなわけではない、夜が好きなわけでもない。
それでもなぜか落ち着く丘に足を運ぶ男。
テレビ中継、恋人の話し声、子供たちの興奮する声。
悪くない。いつもと違う音に耳を傾けながら、いつも通り仰ぐ。
胸ポケットからタバコを取り出しライターが小さな明かりをつけた。少し遠くまで煙を吐く。できるだけ長く。
仕事の忙しさから隔絶されたこの場所は、男にとってのとびきりの贅沢な空間だった。
ざわめきが聞こえてくるまでは…
「金星に隕石が落ちなかったか?」
「いや、彗星そっちのけでどこ見てんの?」
「僕も見ました!なんでしょう!?すごいの見ちゃったのかな!」
「あっちの星でも落ちなかったか?」
「テレビで今日は流星群なんて言ってたかな!?」
小さく息を吸い。男も星空へ目を凝らす。
異様な光景。先ず、星が見えすぎた。都内でも数多くの星が見れるこの場所でさえ、あまりにも星がみえる。
無数の細い線が星々を繋ぎ、次第に大きくなる。
「…近づいてる?」
男の漏らす小さな声は、純粋に天体観測をしていた人達の声に掻き消された。
ざわめきは大きく。星々を繋ぐ線も太く。
一切星々から目を離さない男は、次第に決意を固める。何故だかはわからない。完全に直感だ。
あの日かりの線は、地球にも降り注ぐ。
人類は滅びるかもしれない。
それでも、もし生き残ったのであれば…
ものの数分、光は大きくなり世界は昼間の明るさに近い。星は消え、月も消え、太陽はない。
地球は光に飲み込まれ
この日、この時より、可能性は広がった。
初めまして、以前は別のアカウントを使っていたのですが、メールアドレスが変わりパスもわからず…転生しました。作者がね!
作品はわかりやすくかいていければと思いますが、拙く読みにくいかもしれません。
ですが、僕の作品はきっといいこです。
長くなるとは思いますがお付き合いいただけると幸いです。