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黒緋の勾玉が血に染まるとき  作者: 弍口 いく
第1章 右目の悪魔
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第4話 鬼の伴侶 その3

 結界だけではなく、はるかはポケットの中で独鈷を握りしめて、ずっと臨戦態勢を取っていた。


「大切にされてるんやな、アンタ」

「ハル君は頼まれて、仕方なく護衛してくれてるだけよ、あたしあやかしに狙われやすいから」

「自分から近づいて来たくせに」

 幸恵さちえはクスっと笑みを漏らした。


「こいつの悪い癖だ」

 遥は仁南になを引き寄せた。


 そんな二人を見て幸恵は、

「高校生やな、あたしもなりたかった」

 遠い目をした。

「あなた、中学生くらい?」


「そう、高校へは行けへんかった、もし行けてたら、素敵な先輩と出会って恋に落ちる、そんな高校生活を送りたかったわ」

 哀愁に満ちた表情はとても大人びて見えた。姿は中学生でも、きっと自分より長く生きているのだろうと仁南は思った。


「わかるっ、それって全国JKの夢よね、でも現実はそう甘くはないわよ、授業についてくも精一杯で、テスト勉強も大変よ、実際、カッコイイ先輩がポッと現れることもないし、かと言って捜してる余裕なんかないわよ、せいぜい運命の出会いを妄想するのが関の山って状態ね、あたしの場合は」


「そんな妄想してるし、授業についてけへんのちゃう?」

 幸恵は突っ込んだ。


 幸恵が憧れる高校生活なんて、その程度のものだと慰めてくれようとしているのがわかり、幸恵は少し嬉しかった。鬼になってから、こんなふうに自分を気遣ってくれる者などなかったから。


「あんたの場合、こんなイケメンが護衛についてたら、それ以上の人を探すのは難しいよな」

「そうなのよ」

 仁南はチラリと遥に視線を流した。


「俺のせいかよ、だいたい、学校は勉強しにいくとこだろ」

 また、いきなり鬼と女子トークだなんて、どういう神経してるんだ、と遥は呆れながら言った。


「特進の秀才さんたちはそうなのかも知れないけど」

「お前みたいにバカな妄想にうつつを抜かしてるほうが変なんだよ」

「どうせあたしは変態妄想女です」


「わかってるんなら、ちょっとは勉強しろよな、中間ボロボロだったんだろ」

「なんで知ってるのよ」

 でもそれは、寄蟻やどりぎに襲われたり、妖狐ようこに拉致されたり、尋常でない出来事の連続だったからからだ! と仁南は叫びたかった。


 そんな仁南と遥を見て幸恵はプッと噴き出した。

「アンタらって……」

 しかし、すぐ真顔に戻って、

「あたしはもう高校生になれへんしアオハルは無理や、そやし、せめてあんたみたいなイケメンに狩られたいわ」

 スクッと立ち上がった。


「けど、今はアカン!」

 一瞬にして空気が緊張した。


 幸恵さちえの形相が変わったのを見て、遥は一歩退きながら、仁南を背中に隠した。


「まだ、やることが残ってるし」

 目が不気味に赤く煌めく。


 その時、別方向から、剥き出しの敵意とともに突風が吹き荒れた。


「わあっ!」

 公園内にいた人々が声を上げた。

 突然の強風が巻き上げた砂ぼこりに目を覆う子供たち。

 帽子を飛ばされて追いかける老人。


 混乱に紛れて、幸恵の元に風刃ふうじんが飛来した。

 軽く身をひるがえして避ける幸恵。

 次の動作で木の上に飛び上がった。


 そしてそのまま、姿を消した。


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