閑話 真なるプロローグの終わり 小さな風の囁き ~瞬きにも似た先の未来~
知りたいという気持ちが爆発した、抑えきれない想いが世界中に広がった、あの日より、瞬きにも似た先の未来…『実』の全貌? が、風の噂によって囁かれ始めた。
何処から洩れたのか、『実』は『木』に生るらしい。
『木』は『光り輝いて』いて、透明であり、固体であり、液体であり、気体である、と。
『木』の姿は『木』であると。
『本体』一つ、『枝』一つ、『葉』は0つ。
ゼロ。
『枝』の下に、『実』一つ。
『木』自体の背丈は大きくない。
曰く、小さな子供でも手が届くそうな。
およそ、100センチ。
赤ん坊以外なら、よくやく両足で地面に立って、歩き始める二、三歳児程度なら、手が届くそうだ。
『木』自体に触れても、何も起こらない。
『木』自体を抜いたり、傷付けたりしたら、どうなるか分からない。
夜になると、まるで星明りと太陽のように、キラキラと、でも、主張するようにはっきりと、光を放っている。
その色は、『赤』であったり『青』であったり『緑』であったり『黄』であったり『白』であったり『黒』である。
『黒い光』
これが観測されたのは、地球上始めてかも知れない。
人々の目には、『虹色』に近い、『全ての色』が見て取れるそうな。
まさに、この世の物とは思えない。
そう、『輝き』である、と。
太陽が出ている間でも、『木』自体は光を放っており、人類の目には、夜ほど見えないそうな。
人類以外だと…?
『枝』にぶら下がる『実』自体も、『本体』同様に、光り輝いているらしい。
同じ色であるらしい。
『実』の大きさは、大の大人が片手で掴める程度。
形は、球体。
『木』自体同様、それは透明であり、固体であり、液体であり、気体である、と。
『実』を『木』から千切れば、『木』自体は光り、輝きの後で、『消えて無くなる』らしい。
跡形もなく、消える。
果たして、『木』自体はどこに行ったのか?
その手の中にある『実』は光を失っておらず、その手にした者が口にするのを待っているかのようだ。
『実』の中心部に『種』がある。
その『種』は『実』の上からでも見える。
『種』もまた、球体である。
しかし、『実』や『木』と違って、光り輝いてはいない。
『種』は、他の地球上の植物と同じように、茶色や黒である。
二つの色が混ざった様で、奇妙な文字のように見えなくもない。
『種』からは、澄んだ鐘のような、楽し気な唄のようなものが聴こえる。
まるで、儀式であり、祝福であるような。
そう『音儀話』である。
その『種』を食べれば、『能力』が覚醒するが、その前に、『実』を取り除かなければいけない。
『実』は食べても、食べなくても、どちらでも選択出来る。
『種』と共に、失われることはない。
『実』は切らずとも、『口』に出来る。
スルスルと、流れるように、飲むように、溶けるように、誘われるように、口に入るのだ。
その味はまさに『絶味』。
『絶対なる味』を持って、食べた者を魅了する。
虜にする。
欲して止まない、絶対の『果実』となるのだ。
『実』から『種』を取り出すことは出来る。
『種』自体に味は無く、期待を絶望の淵へと落とし込む。
『種』は、身体に吸収される、と言った表現の食べ方がいいのかもしれない。
その瞬間、『能力』の全貌? が、心身共に駆け巡る。
先の、絶対の果実の味を忘れるほどに。
人類の『能力(覚醒)者』の誕生だ!!
………
……
…
後に、残るのは、そこに『木』と『実』と『種』が『存在した』という現実と、
世に存在する、ありとあらゆる高揚した気持ちと、
『自身』だけだ。
『何』も『形』として、残らない。
―――
――
―
しかし、『輝き』は同じである。
そう、断言できる。
ここまでお読み下さり、ありがとうございます。
小説を書くのは初めての素人です。拙い部分があるかと思いますが、ご容赦願います。
不定期、更新です。
よろしくお願いします。