表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鈴谷さん、噂話です

反コロナ19ワクチン運動の所為

 コロナ19へのワクチン接種に熱心に反対をしている人達がいる。ワクチン接種が怖いのは、まぁ、よく分かる。

 ワクチンを打つ事にはリスクがある。稀な事例ではあるけど、死んでしまった人がいるのも確かだし、長期的な影響なんて誰にも分からない。

 しかし、「だから、ワクチンは打つな」というのは一方的な意見だ。

 何故なら、コロナ19に感染して重症になってしまう点を考えるのなら、ワクチンを打たない事にもリスクがあるのは当然の話で、どちらのリスクの方がより高いのかを考えなくてはならないからだ。

 そして、“ワクチンを打つ”事には、ある明確な期待値が存在する。ワクチン接種は“感染予防になる可能性がある”のだ。

 「ワクチンを打っても、ウィルスは感染力を失わない」

 という主張もあるけれど(ただ、ワクチン接種後に感染数が劇的に減少した事が一度あったから、多分、感染予防効果はあると思うのだけれど)、それでも“ワクチンを打たない”事には絶対に感染予防の効果はない訳で、ならば世の中全体としては「ワクチンを打ってください」と呼びかけるしかないのではないかと思う。

 個人のリスクと社会全体のリスクとでは、基準とするべき点が根本から異なっているのだ。

 少なくとも、コロナ19の毒性が強かった時期はこれは正しいはずだ。

 

 「ネットの反ワクチン運動に騙されたのよ!」

 

 近所の知り合いがそのように訴えて泣いていた。彼女は高齢のご両親と一緒に暮らしていたのだけど、彼女がコロナ19に感染した所為でその両親にも感染し、父親の方は死んでしまったのだ。

 どうも彼女はネットの反ワクチン運動の主張を信じてワクチンを打っていなかったらしい。

 近所の人達はそれを聞いて、「ご両親と暮らしているのだから、ワクチンが怖くても打っておくべきだったのに」などと陰で言っていたが、明らかに傷心している彼女に直接言いはしなかった。

 まぁ、責めるのは酷だろう。

 父親を亡くして、彼女は悲しんでいるのだし。

 私はそう思っていた。

 もっとも、何かちょっとだけ腑に落ちないような気がしないでもなかった。彼女の事はそれほど深く知らないけれど、それでもネットの噂なんか信じるタイプには思えなかったのだ。

 

 ――そんなある日、電車の中でこんな話を聞いてしまった。

 

 「嫌な話だけど、今なら、人を合法的に殺す手段があるわよ」

 それは大学生くらいの女性だった。スーツを着ていたから、就職活動でもしているのかもしれない。相手は同じ歳くらいの男性で、ちょっと頼りなさげだった。

 「へー。どんな手段?」

 男性がそう尋ねると、相手の女性は「コロナ19ウィルスにわざと感染するのよ」とそう答えた。

 「もちろん、自分が健康体だって前提だし、自分だって重症化して下手したら死んでしまうってリスクもあるけど、一緒に暮らしている家族が高齢か何か病気を持っていたら、感染によって死んでしまう可能性が高いでしょう?」

 それを聞いて私は戦慄した。

 「あー、なるほど」と男性が答える。その時の私には、随分と間抜けにそれは響いた。

 

 ――もしかしたら、コロナ19に彼女が感染したのはわざとだったのだろうか? 両親を殺す為に。

 

 そして、それからしばらくが経って彼女は結婚したのだった。いつから相手の男性と付き合っていたのかは分からない。でも、或いは、その彼との結婚の障害に、高齢のご両親がなっていたのだとすれば……

 

 ある日、偶然、道で彼女とすれ違った。相手の男性と腕を組んで一緒に歩いていて、とても幸せなように見えた。

今は正直、どっちのリスクの方が高いのか分かりません。

薬もありますしね……

どれだけ効くのかは知らないけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ