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フラージュにて、ロクスとアスカ

 

 ジンとアメルが『フラージュ』に入る。


 内装も煌びやかで、天井にはガラス細工の照明が黄金色を灯し、足元にも紅紫、青緑色の照明が当てられ、浮世離れした幻想的な雰囲気を醸し出す。店内に置かれる席やテーブルなどは貴族が実際に使う一級品が揃えられている。



「ジン様、アメル様、いらっしゃいませ。オーナーに御用ですか?」


 黒服の従業員の男が出迎える。


「あぁ」


「オーナーはあちらに」


 フロアの奥の方を手で示す。


 示された方へ歩いていく。店内を気にせず進むジンに対してアメルは警戒している面持ちだ。


 左右にある席から華やかなドレスを着た従業員の女性達が準備とともに談笑をしている。


「あら? ジンさん。私たちに会いに来てくれたの?」

「ジンさん、今日は一緒になさってくれるんですか?」

「ジンさん! 会いたかったです!」

「アメルちゃん可愛い! やっぱうちで働かない?」

「もしかして二人でデート?」

「顔赤くするアメルちゃん可愛いー!」


 二人に気付くと席から声をかけられるが、ジンは適当にあしらい、アメルは沸騰しそうなほど顔を赤くしてた。


「相当人気みたいね」


 アメルは口を尖らせて言う。


「そんなことねえだろ」


「そんなことあるの! むぅ」


 むくれるアメルを宥める間もなくフロアの最奥に着く。

 そこにある両開きの扉を開き入る。



「……せやから、俺はこう言ったんや、『冗談はその腹だけにしとき』ってな!」


 上品に笑う従業員の女性たちを侍らせて、席の真ん中に座る男がいた。


「おっ! ジンにアメル! どないした? お気に入りの子に会いに来たんか?」


「ジン! お気に入りの子ってどういうこと!?」


「真に受けんな……依頼の話だ『ロクス』」




【ロクス】


 ファミリーメンバーの一人。ガールズバー『フラージュ』のオーナー。


 髪はショートで派手なオレンジ色。身長はジンより少しだけ低いが高身長であることには変わらない。年齢はジンよりいくつか上。スーツを身にまとい、伊達メガネを掛け、彼の故郷特有の方言で喋る。全体的に胡散臭い。




「なんや、せっかく抱腹絶倒面白トークしてるっちゅうのに、仕事の話かいな」


「そのクソつまんねえ話よりかは聞き応えあるぞ」


「!? 今、クソつまらん言うたか! かーっ! 聞き捨てならんわ! よし、もう一回話しちゃる。よう耳かっぽじって聞いときや! あの日、俺が酒を片手に歩いてた時に──」

「──ロクス、ごめん。この間も聞いたけど、本当に、その話つまんないから。依頼の話するね」


 アメルは申し訳なさそうにロクスの話を遮って、ジンと一緒に向かいの席に座る。


「えぇマジやん……ごほん。まあええわ。この話はまた今度面白いって言うまで聞かせたる。後半からじわじわと面白さがくるんや。それで、このまま話して大丈夫なん?」


 ロクスは侍らせている女性達を外すか確認する。


「あぁ、構わない」


「そか、それで、また調べもん?」


「いいや、力を借りにな」


「ほーう? ジンでも手をつけられない奴がおるんか?」


「かもしれないからな」


「かも?」


「クライ森で異変があった。些細な事だが、本格的に調べておきたい」


「可能性としてはCランク以上の危険性があって、最悪、対人戦になると思う」


 ジンの説明にアメルが捕捉する。


「なるほどなー。それでウチにきたっちゅうわけね」


 手を顎に添えて大袈裟に頷くロクス。


()()()()()()()()には必須やからな。ほな、呼びますか。おーい! ……っておらんのかい。すまん。ちょっと呼びに行ってくれへんか?」


 侍らせていた女性が一人部屋を出て行く。しばらくすると戻ってきた。


「もうすぐ来るそうです」


「ありがとさん。それじゃあ! 来るまでさっきの続きを──」

「──呼んだ?」


 静かに入ってきたのはジンとアメルが会いに来た目的の人物。


「『アスカ』! もう少し遅れて来んと!」


「……」




【アスカ】


 ファミリーメンバーの一人。フラージュの用心棒をしている。


 長い紺色の髪と淡い黄色の瞳、中性的な顔立ちをしてるが、身長はロクスとあまり変わらない高身長。年齢はジンに近い。和服を着て、帯刀をしているので、いかにもサムライと呼べそうな見た目をしている。基本無口。




「アスカ、忙しところ悪いな」


「……(首を振る)」


「今からクライ森に向かう。おそらく戦闘になるが、行けそうか?」


「……(頷き)」


「じゃあ、行くか」


「なら、俺らも見送りでもしますかね」


 ジン、アメル、アスカと共にロクスと従業員達が賓客室を出る。


 フロアにいた従業員達も店の出入り口を向き見送る。



「三人とも気ぃつけてな」


「おう」

「ありがと」

「……(頷き)」


「あっそれと、ジン」


「?」


 ロクスに呼び止められる。先程の軽い調子とは一変して神妙な面持ちだ。



「あの薬師の情報は役に立ったんか?」


「あぁ、助かった」


「それで?」


「大方お前が考えてることと同じだ」


「つーことは、もう街には」


 ジンは何も言わない。


「おーこわいこわい」


 しかし、ロクスは、また直ぐいつもの調子に戻り、両腕で自分を抱きしめて震える仕草をする。胡散臭い。


「何かあったら連絡してな。飛んでいったる!」


「そっちも何かあったら連絡してね」


 アメルが答える。今もジンにくっついたままである。


「ほな、また〜」


 ロクスはくるっと振り返る。


「じゃあ、今日は店閉めて全員で宴や! もちろん俺の奢り! だからじゃんじゃん飲んで楽しもうな!」


 従業員達の歓声を聞きながら三人はフラージュを出た。


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