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仕事終わり

 

 ジンはサレンとの一件を終わらせた後、エッグノッグへ。


 カランコロンとドアベルを鳴らし店に入る。



「いらっしゃいませー! ジンさん! おかえりなさい!」


「ただいま、オリン」


「おかえり、ジン」


「おかえり」


「ただいま」


 今日は、ベルシスとレフィがいた。ベルシスはエールのジョッキを二つ空にして、レフィはちびちびとグラスに入ったレモネードを飲んでいる。


 二人の隣のカウンター席に腰掛ける。


「エグノ、もう一杯」


「俺もエールと何か」


「はいよ」


 ベルシスがエグノに頼むついでにジンも飲み物とつまみを頼む。


「お疲れ。依頼無事に終わったか?」


 ベルシスは労いながらエグノから受け取ったジョッキを掲げる。


「なんとかな。二人とも助かった」


「よかった」


「うむ」



「「「乾杯」」」



 ジョッキとグラスをぶつける。


 ベルシスはジョッキの半分くらい(あお)り、ジンに聞く。


「あの依頼は結局なんだったんだ? ワイバーンを倒すだけでよかったのか?」


「依頼内容はそうだったんだがな」

 

「私が思うに、サレンという女がギルドの職権を使い、ワイバーン討伐にかこつけて、ファミリーもしくは、ジンに探りをかけたんだろうな」


「その通り」

 

  相変わらずのレフィの聡明さにジンは舌を巻く。


「それで、彼女は何者だったんだ?」


「正義感が強い、ただのギルド職員」


「なんだそれ、そいつは早死するな」


「同感だ」


「ならどうしてジンに? ギルドに目をつけられることなんてしてないだろ?」


「それが原因だ。お利口すぎて怪しかったんだと」


「なるほど。完璧さが裏目に出たのか。その側面だけ見ればジンから(よこしま)さを見出すことは困難かもしれない」


「じゃあ、単純にジンの悪さを教えてやればいいんじゃないか?」


 つまみを出しながらエグノが揶揄う。


「なんでだよ」


「そうだなぁ。んーー思いつかないな」


 顎に手を当ててベルシスは考えるが、やめてジョッキを傾ける。


「いや、ベルシス。一つ思い当たるものがある」


  自信に満ちた顔をするレフィ。


「お、なんだ?」


「それは……」


 ジンは黙ってレフィの言葉を待つ。



「女泣かせだ」



「おい」


「アハハ! 女泣かせか! 違いない!」


「そんなことないだろ」


「ジンがそう思ってない事が、諸悪の根源かな」


 レフィは呆れて、ため息を吐く。


「悪い男だ。なぁ、オリンもそう思うだろ?」


 ベルシスはジョッキを片付けてくれるオリンにお礼を言って話を振る。


「え、えーっと……えへへ」

 

 オリンは笑って誤魔化す。その誤魔化し方は肯定しているのと変わらない。


「オリンにも、そう思われてたのか……」


「そう落ち込むな。それぐらいイイ男ってことだろ……ブフッ!」


 エグノは笑いを堪えきれず、吹き出した。


「エグノてめぇ! 覚えとけよ……」


 いつかぶっ飛ばすとジンは心に決め、残っていたビールを飲み干す。


「レフィとベルシスは、ふざけた孫の手に、また没頭して不摂生だったのをアメルにチクってやるからな。オリンは正直だったから許す」


「なっ!? ジン! 君は悪魔か!?」


「おいおい、それは無いだろ。オリンだけ許されるなんて不公平だ」


 抗議の声を上げる二人と困り笑いをするオリン。


 うるさい二人をジンは無視してエールを頼む。ベルシスも頼もうとするが、オリンに飲み過ぎだと止められている。

 

「ジンも我々と同じ恐怖を味わうべきだ」


「そうだ。そうだ」



「…………」



  ベルシスの顔が仄かに赤い。


(俺が来る前に相当飲んでるな)


「そもそも、あれは仕方ない事なんだ。この世界にいる背中の痒みを訴えるおばあちゃんの為にも一刻も早く完成させなければならなかったのだ。たとえ、時間や食事を犠牲にしてでも。いや、是が非でも変形の形態に拘りたかった訳では無い。断じてない。断じてな」


(レフィの奴、最後に本音ダダ漏れじゃあねえか)


「なぁ、オリン。知ってるか? アメルは怒るとすげー怖いんだぞ?」


 そう言うベルシスは、オリンに断られたから酒と言わんばかりにジョッキを差し出し、エグノに目で訴える。



「へぇ。そうなんですね?」



「あぁ、あの時だけはエルフじゃないな。まるで」



「まるで?」



「まるで、鬼人族みた……い…………」


 ベルシスは声の主がオリンではないことに気づく。



 振り返ると、オリンを後ろから抱きしめ、片方の手で口を塞ぐアメルが陰りのある笑みを浮かべていた。



「や、やぁ、アメル。いつからいたんだい?」


 レフィも気付いてなかったらしく、アメルに声を震わせながら尋ねる。


「こんばんは、レフィ。そうね、たしか『我々と恐怖を味わうべき』だったかしら?」


 レフィは絶句。


「あのーあれだ。まるで鬼人族が(おのの)くほど綺麗だってことだよ。なっ、アメル。一回落ち着こう」


「……ベルシス、私が思うに、もう手遅れかもしれない」


 レフィは静かにレモネードをカウンターに置く。



「ジンよ! 稀代の美少女である我々から頼みがある!」

 

 レフィは勢いよく体をジンに向ける。


「なんだ?」


「助けてくれ」


 手を組み、瞳をうるうるさせるレフィ。



「断る。どうやら俺は女泣かせらしいからな。泣かせる事になっても仕方ねえだろ?」


「そんな殺生な!? しかも泣かせ方が違うではないか!?」


「せめてもの慈悲だ。オリンには見せないようにしてやる。オリン。俺と裏で皿洗いしようぜ」


「分かりました〜」


 アメルから離れ、トテトテと歩いてくるオリン。


「怖かったな。だけどもう大丈夫だ」


 ビクビクしてるオリンの頭を撫でる。


「ジ〜ン〜?」


 アメルに睨まれた。



「そう言えば、エグノがベルシスにかなりの量の酒を出してたみたいだぞ」

 

「は!? ジン! お前!」


「エグノ! ベルシスにお酒は飲ませ過ぎないようにって言ったじゃない!」


「よし、皿洗いに行くぞ!」


 アメルの意識を逸らし、ジンは、オリンを連れて裏に逃げる。


 どれくらい時間かかるだろうかと考えながらオリンと皿洗いをし、長くなりそうだからオリンを先に家まで送った。


 その後、店に戻ってもまだ説教は続いていた。


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