プロローグ
「お母さん! 絵本読んで!」
「もう寝る時間よ。夜更かしはダメ」
「えぇー、まだ寝たくない!」
「あら、そんな悪い子には、カラスが来るわよ〜?」
「カラスって鳥さんー?」
「そうよ」
「カラスさんがどうして来るの?」
「それはね、カラスさんが悪い子を探しているの。『どこにいるかな〜?』って」
「ほんと〜?」
「本当よ。勝手にお菓子を食べたり、お勉強する約束を破ったり、お母さんの言う事を聞かない悪い子がいるって知ってるのよ」
「えっ! なんで!?」
「そのカラスさんは、ものすごーく目が良くて、お外でも、お家の中でも、悪い子は、すぐ見つけちゃうの」
「押し入れの中でも?」
「もちろん」
「お布団の中でも!?」
「悪い子なら、どこでも見つけちゃう。それで、もし、カラスさんに見つかったら〜」
「……見つかったら?」
「捕まえて食べちゃうぞ〜! バクバクバクっ!」
「あはは! くすぐったい!」
「ふふふっ、だから、悪い子になる前に早く寝なさい」
「ん〜わかった」
「明かり消すわね」
「……お母さん」
「なーに?」
「カラスさん、来ちゃう?」
「これから良い子にしてたら来ないわ」
「じゃあ、これから良い子にする」
「そうね。カラスさんは良い子には優しいのよ」
「そうなの?」
「ええ、私達をいつも見守ってくれるの。だから、安心しておやすみ」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみなさい」