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第二話:動き出してしまった日常

僕には母親との記憶はない。



母親について知っていることは盗み聞きしたことと……



僕宛のメッセージで語られていたことたけだ。



そのメッセージは僕自身に刻まれていた。



魔法陣。



物体に魔法の構成を刻みつけることで任意の魔法をその対象にかける技法。



それを応用して僕がメッセージが理解できるようになる頃、自動的に記憶に付け加えるようにされていた。


おそらくは当主に気づかれず僕に確実に伝えるためこのような手段にしたのだろう。



それには僕を生むまでの経緯と母の思いが込められていた。



母は当主に捕らえられ、無理矢理関係をもたされた。生まれもつ魔力のせいで疎まれ、味方もいなかったらしい。



苦しくて死のうと何度も思ったそうだ。



僕が生まれ、魔力が並とわかってからは、僕とともに屋敷の一室に閉じ込められた。



そこで僕と暮らすのは大変だったが苦痛ではなく、穏やかな日々を過ごしたそうだ。



しかし、母は僕と自身の将来に不安を抱いていた。実際問題僕のような境遇で生まれた子どもがまともな人生を送るのは難しい。



それは母の立場的にも言えることで、いつまでそのように暮らしていけるかわからなかった。



もしかしたら、僕を取りあげられまたあの地獄の日々を繰り返すかもしれない。


母はその恐怖に耐えきれず、自殺を決意した。



その時は不幸な人生を歩ませるくらいならと僕と心中するつもりだったらしい。


だが、僕を殺せなかった。


そして、せめて親として何かできることをしようとして、僕に魔法をかけた。



記憶にはメッセージだけでなく、おそらく母のものである知識も加えられていた。



僕が強力な魔力をもって生まれていたら、母はもっと幸せに暮らせたかもしれないのに……



それなのに、母は出来損ないの僕を愛してくれていた。



僕の幸せを願ってくれた。





このメッセージが本当のものなのか、僕の妄想であるかはわからない。



ただ、……自分の境遇に絶望していた僕に力をくれた。



このアドリビティウム家という檻から出る決意をさせてくれた。



僕は誓った。



魔力のあるなしで、身分で差別されることが間違っていることを……



僕にだって普通に暮らす権利があることを……



僕にだって貴族を倒れることを……



証明してみせると!!

















「や、やめガッ!」


バギッ!


使用人Aが何か言う前に下からアッパーを叩き込む。何かが砕けた音がしたが知ったこっちゃない。


使用人Cは青白くなり、腰を抜かしたように倒れこんだ。


「て、てめぇ! いったい!?」


当然、質問など無視して、低くなって蹴りやすくなった顔に全力のキックをぶちこんでやった。


ドッ!






全員ぶっ飛ばしたらなんとか落ち着いてきた。


そして冷静に状況を把握する………


「あっ! やべぇ!」


思わず叩き潰したが、計画の実行まではおとなしくしている予定だったのに、一部とはいえ全力を見せてしまった。


使用人たちは全員見事に気絶している。さらに付け加えると全員見事に重傷だ。

死にはしないが、誤魔化すのは無理だろう。


「どうしよ!? 記憶無くすまで殴るか!?」


さすがにそれは可哀想かと思うが、この際手段を選んじゃいられない。


「落ち着け! 考えろ!!」


ようはこいつらが他の奴らに特に当主たちにしゃべらなければいいのだ。


なら…


「クックック…… 怨むなら自身の日頃の行いを怨みな!」


僕は考えた策を実行するため、使用人'Sの引きずって移動することにした。



「っ……」



「ん?」


誰かに見られている気がしたが、僕はあまり気にせずにその場を離れた。










「………ん、ここは?」


「目が覚めたか?」


使用人A? いやBか? が目を覚ましたことを確かめてから仕掛けを発動させる。


「ヒッ! お、お前。なにを…」


ソイツはそれ以上言葉を続けることができなかった。自分の状態に気付いたのだろう。


「な、なんじゃこりゃーーーー!!」


簡単に言うと磔にされていて、上空には様々な凶器?が吊るされてる。


「何って、ゲーム兼口封じ」


あと、今までの恨みを晴らそうとも思っている。


「なんで「ルールは簡単!」聞けよ!」


「このルーレットを回して出たものが上からお前に襲いかかるというものだ」


「え?! いや、まて。誰にも言わない! もう殴ったりもしない! だから…「ゲームゥ、スタート!!!」


ダダダダダダッダン!!


「……ぎ、ぎゃあーーーー!!」


さっそく、最初の目に書いてあったハチの巣が落ちてきてハチが使用人を襲い始めた。


「あと、自動だから。楽しめよ〜」


「待て!! 俺が悪ギャーーーーー!!!」


他にもカエルやヘビやナメクジの大群、臭い木の実、体がかゆくなる草の汁などなど豊富なラインナップが揃っている。


できれば、感想を聞きたいものだ。まだまだ改良の余地あるし。






一時間後。



使用人'Sは僕のお願いを快く承諾してくれた。誠意を込めれば伝わるものだね〜。



使用人たちに今日のことを喋らないようにお願いして帰した後、僕はお気に入りの場所に来ていた。


そこは森の中の開けた場所で、僕はそこで空を見るのを日課にしているのだ。

寝転がってぼんやりしながら、今日の出来事をふりかえる。


今思うと自分でも不思議だった。


母親に暴言を吐かれてキレるなんて。


思い出なんてないのに。


母親のことなんてなんとも想っていないはずだったのに。


そして理解した。


僕は母のことが好きだったということを。


あらためてわかるとかなり恥ずかしいが。


ともかく母のためにもあの誓いを果たさなければならないのだ。気合いを入れなくては!!


それに今日のようなことには気をつけなければいけない。もし妹にあれを見られていたら僕の計画は頓挫するだろう。


使用人たちほど弱くないし、それに妹にも同じことをするのはさすがに良心が痛む。女の子だしね。


というかしたら、当主に殺されるだろうな〜 ………………気をつけよう、うん。



だけど収穫もあった。僕の魔法には十分な威力があることがわかったのだから。

大の大人をK.O.できるならあとは作戦を立てるだけだし。


波乱万丈の1日だったけど目標に確実に一歩近づけた、良い日だったと思う。


「さてと、そろそろ帰りますか」


僕は日が沈む前に蔵に着くように急いで帰った。


蔵についたら簡単に夕食を食べていつものように魔法具を作る。


そしてまた代わり映えしない毎日が続くことを疑いもせず眠りについた。



まぁ、その予想は


コンコン


「ルキフェル様。当主様がお呼びです」


朝方に訪ねてきた使用人のせいで木っ端微塵になったけど……。





おかしい。



当主が僕をわざわざ呼び出すなんて。


それにこの使用人Dの様子も変だ。僕になんか怯えてるし。


可能性としてはやはり、あの使用人ABCが口を割ったということか。それなら使用人Dの怯えようも納得だ。


「そうか…、そうか。あれじゃあ足りなかったか? クックック…」


「ヒッ!」


どんな罰をあたえるか考えていると、使用人D(ちなみに女の人でいわゆるメイドさん)が顔を真っ青にして震えだした。


そんなに恐い表情だったかな。


しかしまだ疑問が残る。使用人がボコボコにされたくらいで散々避けていた僕をわざわざ呼び出すか。


むしろ、使用人たちが僕を誘きだしお礼参りしようとしていると考えるほうがしっくりくる。


「あの、支度は?」


「あぁ、すぐ済む」


よし、なら気合いを入れて返り討ちにしてやろう。毒喰らわば皿までというし。


僕はありったけの符をもって蔵を出た。


森を抜けて屋敷の見えるところまで来ると使用人たちが待ち構えているのが見えた。


だが、結果として僕の予想は外れたらしい。


先頭にアドリビティウム家一行がいたのだ。


「…どうしました?」


立ち止まった僕を不審に思った使用人Dが話しかけてくる。


「いや、なんでもない」


とりあえず僕はそう答え、また歩き出した。


どうやら、事態を予想よりずっと厄介そうである。溜め息をつくが、もうどうにもならないだろう。



時計の針は進みはしても戻りはしないのだから。


読んでくださりありがとうございます。次回は本格的な戦闘になる予定です。書くの初めてですが、がんばります。感想・意見お待ちしております。

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