第二十七話:風の運ぶもの 中編
ハァ〜〜〜〜………。
戦いってのは………むなしいものだな………。
(私のことめちゃくちゃにしといて言うことがそれっ!!!?)
いや、事実俺の心には何の感慨も湧いてこないし。
(そもそも私が一方的に痛めつけられただけじゃん!!! 戦いじゃなくて蹂躙だったじゃん!!!)
ハッ、己の無力を呪うんだな。
(人間として最悪だよねぇ!?)
ザッツライト!
(認めてるしっ!!?)
まぁ、俺は育ちからして真っ当でも普通でもないしな。
(……いやそうだけどね。たしかにそうだけどね……自分で言うのはどうなの……?)
酷い………否定してくれないんだな。
(変わり身早いねぇっ?! ……今までの言動を思い出しながら、胸に手を当ててよく考えてみようか?)
……………ふむ。
(……………………)
……………フッ、問題ない。
(どこがっ!!?)
朝早く起きて鍛練に励み、朝食の後はお前たちに勉強を教える。教会の手伝いも進んでやり、ご近所さんからも頼りにされる…………………完璧だろ?
(………………た、たしかに今のだけを聞いてると否定できない。でも、一部の人からは悪魔とか鬼とか恐れられてるじゃん)
アイツラは別だろ。ケンカを売ってきたから買っただけだし。
(まあ、そうだけど…。けど、町の多くの人からは避けられてるよね?)
それはお前もだけどな。
(誰のせいよっ!!)
俺たちは一心同体だろ?
(きぃ〜〜〜〜っ! ムカツク〜〜〜!!)
……………キャラ変わってないか?
さて、コン…ゴホンッ。
言い争いはこのへんにして真面目に考察でもするか。
「今なんて言いかけたのかな、ルキフェル…」
別に口に出してないだろ。しかし面白いな、精霊の果実だっけ? ルキアが食べると属性が変わるんだもんな〜。
「他のでも同じような効果がでるのか確かめたいけど……」
「珍しいものらしいから無理だよね」
だよな〜〜。精霊の力が宿ってる食べ物なんてめったに…いや待て、精霊の力もも魔力もだいたい同じじゃあ……
「あれ? なんかイヤな予感が…」
「そうだ。魔法で試そう」
名案だな。
「迷案だよっ!!」
失礼な。手っ取り早いだろ?
「無理だからっ!! そんなの無理だからっ!!」
「どこぞの英雄の息子さんだって、たしかやってただろ? 精霊ならイケるって」
俺はさっそく掌にファイアを発動する。
手からはムリっぽいし、口から入れればいいかな。
「とりあえずあっちの方が圧倒的に私よりつよっ…ムグッ!!??」
結論…………ダメでした。
あっ、火じゃなくて水属性とかにした方がよかったか?
「(遅いよっ!!)」
ルキアが涙目で訴えてくる。口の中を火傷したためしゃべれないらしい。
「(誰のせいかなっ!!?)」
「ごめんなさい」
目が恐かったので、素直に謝る。たしかに悪ノリし過ぎたしな〜。
「しかし、結局精霊の果実を手にいれるしか検証の方法はないわけか?」
八百屋に探してもらおうかな〜。けど望み薄っぼいし。
そんなことを考えながら、さっき俺が出した氷を口の中で転がしているルキアを見る。
俺が言える立場ではないが、コイツもずいぶん変わっている。
まず、精霊としての異端。精霊には自身が属する十の属性があるが、コイツはそのどれにもあてはまらない。
人間にも俺のような複数属性を使えるヤツはいるが、それは親の属性が受け継がれた結果だ。
まぁ、俺みたい属性がまったくわからないのは珍しいだろうけど。
さらにコイツの潜在的な能力も未知だ。
精霊は各属性の王とも言うべきお偉いさん以外は基本平等らしい。
だが、ほぼ幽霊のような存在から実体を持つことができるのは一握りらしい。
ここら辺ははっきりしないが、ルキアは自分以外知らないそうだから、そこそこ珍しいのは確かだな。
それがアイツの劣等感というか孤独感をさらに増加させたみたいだけど…………。
それは横に置いといて……初めて会ったあの日も、実体になってドラゴンに殴り殺されにいったそうだ。
まあ、本人も死ぬかはわからなかったらしいけどさ。
「なんという能力のネガティブ方向な無駄使い…」
「(なんかルキフェルにだけは言われたくないことを言われた気がするんだけど)」
「気のせいだ」
にらんでくるルキアから顔を背けながら弁解する。
いちおう、思考を読まれないようにしていたはずなんだがな………思わず口に出したせいか?
そういやあの時ルキアが実体じゃなかったら、俺かなりイタイヤツになったような。
抱き抱えようとしてスカすって…………。
やめやめ。
え〜と、ルキアについてだよな。
属性がなく、珍しい実体化能力持ちで、極めつけがさっきの変化だ。
果物自体の力はたいしたことなかったから、その力を取り込んだことが何かのキッカケになったんだろうけど……。
魔力と精霊の力はたいして変わらないはずだ。だけどさっきの火の魔法では何も起きなかった。
風属性だけが特別な可能性もあるけど………。
ハァ〜、全然ダメだな。情報が足りん。
とりあえず帰るかな、カラスがなく前に。
「ルキア。もうそろそろ大丈夫か?」
「う〜〜、まだ痛いよ……。ルキフェルが回復魔法の一つや二つ使えたな〜……」
「俺も覚えられたら覚えてるよ……」
結局全属性が使えるが……初歩というレベルのものしか使えないものがほとんどだった。
単純に魔力量を増やせばできる、メガファイアなどは問題ない。
しかし、回復や浄化、強化等の魔力にある特性を持たせる類いは全滅だった。
やっぱり適正が低いってことだよな……。
「それでも中級魔法は使えるんだよね。おかしくない?」
「まぁ実のところ中級なんて言うけど、下級を魔力増ししただけだしな」
もともとは上級と通常のものしかなかったのを、どこぞのアホウがわざわざ区別しただけだ。
中級なんて名付けられてはいるが、魔力量と適正さえあれば俺のような子どもでも使うことができる。
あっ! 魔力の制御力はいるかな。
「ところでルキア。身体に何か変化はないか?」
「? ないけど、ひょっとして心配して……」
ふむふむ。
「氷属性もダメか」
「この氷って善意で出してくれたんじゃなかったの!!?」
いや、善意もあるよ? 半々くらいは。
読んでくださった方ありがとうございます。そして遅れてすいませんでした。
質は悪いし、量は少ないで申し訳ないです。
なんとか持ち直せるようがんばってみます。
次回でようやくキーパーソンが登場します。
それではまた次回(^^)ノシ