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第二十六話:風の運ぶもの 前編

………………遅い。



斥候に出したヤツが帰ってこない。



たしかに時間を守ることなどほとんどない……。



むしろ守ることが珍しいヤツだが、今回は遅すぎだ



何かあったと考えられるべきか……?



………いや、道中で怠けている可能性の方が高いか。



従っているとはいえ、それは心からの忠誠を誓っているわけではない。



目先の欲望を優先させてもおかしくはないだろう。



しかしもう数日どころか十数日をこえているのに、報せの一つも寄越さないとは……。



不安もあるが、このまま計画を実行するしかないか?



情報があるにこしたことはないが、事前に聞いた通りならたいして難しい相手ではない。



まぁ、実行前に軽く情報収集すればいいか。















「ハァ〜〜〜〜」


大きく息を吐く。思い浮かぶ言葉は迂闊の二字だけだ。


つい勢いでやってしまったが、たしかに不用心だった。


精霊に精霊の力のこもった果実という組み合わせが好奇心を刺激したことも一因だろう。


いや、俺たちは一心同体だというのにルキアだけ逃れるのが認められなかったのが一番か……?


「……ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


あの時の俺の思考や感情を考察・分析しようとしても無意味か………つーか、こんなこと考えてもしょうがないよな。


誰かも言ってたしな、"時は戻らない……それが自(以下略)"とかなんとか。


あれ 誰だっけか……言葉にかなり重みがあったけど。


え〜っと………


ドーンッ!!!


突然の爆音が俺の思考を遮った。


いや、現実に帰らせた、が正確かな。また考え込むとこだったし。


いかんいかん! 目の前のありのままを見なくては!!


とりあえず状況を整理しよう。


ルキアが風の果実を食べた途端、ルキアの精霊の力が暴走した。


まぁ、俺以外はルキアの方から風が吹いたくらいしか感じなかっただろうけど。


とりあえず皆の意識をそらした隙に、ソッコーでルキアを連れて逃げ出した。


髪の毛や瞳の色まで変わってたからな〜。見られたら色々面倒だった。


「ルキア〜! 少しは落ち着け」


色が翡翠色になったルキアは、風精霊と同じ様に風属性の力を操れるようになっていた。


んで……………


「それ〜〜っ!!」


ドッ!!!


現在上機嫌で大規模な自然破壊を実行中です。


さっきから俺の声も聞こえてないみたいだし、どうしたもんか………。


気持ちが解らんでもないから、あんま水を差すようなことはしたくないんだけどな〜。


けどさ。


「地形を変えるのは、いくらなんでも……」


先ほどからルキアが腕を振るうたびに、風の塊が炸裂して木やら岩が宙をまっている。


とりあえず誰にも見つからない場所ってことで、いつもの場所よりかな〜〜り遠くには来た。


来たけど、さすがに竜巻でも発生したのかってくらいに暴れられると……


「って危なっ!!?」


ドスンッ!!!


真上に落ちてきた木を後ろに飛んでかわす。


ズサーッと地面を削りながらも、なんとかバランスをとる。


ヤバかった………。


「おいっ!! ルキア!! 気をつけ…」


「アハハハハハッ」


聞いてねー。


「………こういうのなんて言うんだっけかな……?」


トリガーハッピー? いや魔法てか精霊の力だから違うか……。


「むしろランナーズハイとかをモジって、エレメントハイとか……………どうでもいいな」


さっさと止めよ。


深く息を吸い込む。別に必要ないが、気分だ気分。


「(いい加減にしろ〜〜〜っっ!!!!!)」


「ぎにゃぁ〜〜〜〜!?」


次の瞬間森に破壊音ではなく、微妙にぬけた感じの叫びが響き渡った。














「誰が微妙に抜けてるのよっ!!!」


「違うぞ、響き渡った"叫び"が微妙に抜けてるんだ」


関係代名詞を使うならこの場合whoではなく、whichだろう。だから特定の人を指しているわけではない。


まぁ、叫んだ人物が抜けているかどうかという話は別だが。


「つまり私が抜けてるってことだよね!!?」


「気にしすぎだ」


そもそも誰の叫びかも明記してないだろうに…。


「今ここに居るのは私たちだけでしょっ!?」


「甘いな。状況証拠が一つじゃ、論理的証明はできない」


そもそもここは森の中だからさっきの破壊に驚いた動物が叫んでもおかしくはないだろ。


「さっき人物って言ったでしょっ!? だいたい叫んだの私じゃんっ!!」


だから心を読むな。メンドイから誤魔化すか。


「………自白したなルキア。そう、犯人はお前だっ!!」


俺はビシッとポーズを決めてルキアに指を突きつけた。


「………フフフ、よく見抜いたねルキフェル。そう、犯人はこのわた…って意味がわからないよっ!! なんで急に探偵の真似!!?」


「前半ノッてるじゃん」


無意識のうちに振られたらネタに反応したらしい。


しかし相変わらず、落ち着きがないな。


「ルキフェルに言われたくないよ!! もう怒ったんだから!!」


そう言うと、ルキアは右手を構え、風を集め始めた。


「謝るなら今のうちだよ。今の私は一般精霊と同じ。ルキフェルが逆立ちしたって勝ち目はないんだから!」


たしかに今から俺の最大出力…中級魔法を使おうとしもルキアの攻撃の方が早い。


まぁ、中級魔法でどうにかなるかというと、焼け石に水にもならないが。


「ルキア……争いは何も生まないぞ」


いちおう休戦を申し出てみるが、ルキアは聞く耳もたないようだ。


「問答無用! いっくよー!!」


しかし、ルキアのやつ忘れてるよな。


精霊は人より強い。


周囲の同属性の力を操れることもあるが、存在そのものが膨大な魔力の塊みたいなものだから、人の魔法なんぞでダメージを受けることはめったにない。


しかも魔力の塊のようなその身体の性質上、実体がないため物理攻撃は効かない。


だがしかし、今のルキアは俺自身や俺の魔法を参考にして人間に擬態している。


「…遅いぞ」


俺はルキアが腕を振りかぶる間にコンバットフォームのスピードで後ろに回り込み、頭を両手でホールドした。


「……へっ?」


つまり普通に触れる以上、インファイトに持ちこみさえすれば………


「お仕置きな」


「や、やめっ……ぎにゃ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」


俺はコンバットフォームを解除せずに、全力でルキアの頭を押し潰した。


「い、痛いっ! すっごく痛いよルキフェル!! 謝るからもうやめて〜!!!」


こうなってはルキアに風を操る余裕などない。ただ痛みに泣きわめくだけだ。


俺はギリギリと力をこめるが、多少軋むだけで頭蓋骨が壊れる気配はない。頑丈だな〜。


「そんなっ、こ、とよりっ……もう、やめっ…」


「とりあえず後五分な」


「お、おにぃ〜〜〜!! ってごめんなさいごめんなさい〜っ!!?」


俺はさらに力をこめながら、これからどうするかを考えはじめた。


断じて怒ってなんていない。いないったらいない。


読んでくださった皆様ありがとうございます。


結局一か月以上かかってしまいました。


夏バテでもしたのか、筆が牛歩なみにしか進みません。


ですが、次こそ更新ペースを上げて投稿します!


…………遅れたらすいません。


ではまた次回!!

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