第二十話:貴族と平民と 疑問編
なんで………なんで………
教会にいたときはなかよくしていたじゃないですか……
わすれないってやくそくしたじゃないですか……
なのに……
……………どうしてですか?
どうしてまえみたいにあそべないんですか?
どうしてまえみたいにわらってくれないんですか?
どうして…………そんなにかなしそうにぼくたちを見るんですか?
もう……………、あのころみたいになれないんですか?
『……………』
く、空気が重い…。何これ? ナニコレ?
「…………」
ジ〜〜〜
ミアさんの視線もなんか痛い。
何で? 俺の関係ないよね? ………たぶん。
「(なぁ、ルキア。何でミアさんににらまれてんだ?)」
「(だって、ルキフェルって真性のトラブルメーカーだし。また、何かしたと思ってるんじゃない?)」
濡れ衣だ!
「(今回はね)」
「(やかましいわっ!!)」
あぁもう、せっかく危機を脱したのに、むしろさらにかったるいことになってる〜〜!!
どうすんだ! どうすんだ! どんな選択肢がある?
「(う〜ん。
1.とりあえず謝る。
2.とりあえず逃げる。
3.とりあえず土下座。
かな)」
よ〜し、じゃあ……ってロクな選択肢ないじゃん!! というか1と3同じだろ!!!
「(違うよ〜。せいい? とか?)」
誠意な。ハァ〜。
…………とにかく状況の確認をするか。
「さて、ハルト」
ビクッ!
キッ!!
俺が声をかけるとハルトは身を縮みこませた。
そしてミアさんが俺をさらに恐い目で俺をにらみつける。
………かんべんしてください。ミアさん、ホントにこわいっす。
実はカタギじゃないんじゃ…
ギンッ!!!
さらに上がったっ!!? まさかホントに……いえ何でもないです! すいませんでしたっ!!
「(ミアさんには聞こえないよ?)」
気持ちの問題だ。つーか声にだして謝ったら、考えてたことバレるだろ。
心なしか和らいだミアさんの視線を受けながら、あらためてハルトたちを見る。
ウィルはまだ涙目だし、エイミは安心したせいか、泣き出したいのを堪えているようだ。
現場にいたはいたが、ルキアは却下。
消去法でハルトに聞くしかないんだよな……ハァ。
「ハルト。アイツラ知ってるな」
「……………はい」
「…どういうことですか? ルキフェル、説明して下さい」
俺はミアさんに俺が目撃した部分のみをかいつまんで話した。当然ルキアに呼ばれたのではなく、たまたま通りかかったことにしたけど。
「そんなことが…。いったいどこの子達でしょうか?」
「…………孤児院です」
ハルトがポツリと呟いた。ってことはつまり…。
「アイツラは教会から孤児院に移った連中、か?」
コクンと頷くハルトたち。だから、みんなこんなに暗いわけか。
ミアさんもショックを受けている顔だ。
まぁ、もと身内が相手じゃあ、しょうがないか。
「仲悪かったの?」
ルキアの質問にブンッブンッと勢いよく首を振る四人……四人?
「ミアさん?……って、へ?」
ミアさんはプルプル震えていた。顔も真っ赤だし、目には涙…
「あれれ〜、なんかヤバめ?」
「なんか、じゃなくて確実にヤバイな」
ルキアとともに耳を塞ぐ。
次の瞬間、ミアさんは爆発した。
「そんなことありませんっ!!!!」
バンッ!!!
強くテーブルを叩きながら、大声で叫ぶミアさん。
それから説教なのか、説法なのか、それとも親バカ的話なのかわからないことを延々と言い始めた。
いやミアさん。ハルトたちが触発されて泣き出してるんですけど。
あとガンガンとテーブルを叩くのも止めてください。メキメキいってますから、もう限界ですから、かんべんしてやって下さい。
泣いてる年長者と年少組。
耳を塞いでいる俺とルキア。
カオスだな。
しかしミアさんもやっぱりストレスたまってるんかね。
年長者とはいえ、教会を任されるシスターとしては若すぎるらしいし。
「私の未熟さのせいですうっ!!! だからみんな孤児院に行っちゃうし、悪い子になっちゃったんですうっ!!!」
なんか、ざんげになってきたな。ミアさん…あなたはざんげをする側じゃなくて聞く側じゃあ……?
「(ねぇルキフェル)」
「(なんだ? この状況をだはできる、ナイスな策なら聞くぞ)」
「(ミアさん爆発してないよ? 人間って爆発できるの? すごいんだね〜。あれ? でも爆発したら死んじゃうよね、どうなのルキフェル?)」
「(…………それはひゆだ、ひ・ゆ!!)」
ダメだ。もっと厳しくしないと。天然で誤魔化すにしても限度あるしな。
当たり前を教えるのってわりとムズいんだけど…。
「だからルキフェルも騒ぎばっかり起こすんですうっ!!!」
「!!!」
ルキア教育プログラムを考えてた俺の思考は、ミアさんのシャウトによって引き戻された。
あれ? ミアさん、俺そんなに問題起こしてました?
……ミアさんの心の平静のためにも、少し自重しようかな〜……。
とりあえず、しょせん子どもの俺には何もできることなどないので、ルキアとともに普段の行いについて思い返してみることにした。
結局、俺の落としたお菓子の袋を届けに、近くの若奥さんが来るまでこの騒ぎは続いた。
ルキアたちのところに跳んで行くとき、うっかり落としていたらしい。
そういや忘れてたわ。
若奥さんはしっかりしてるし、優しいいい人なんだけどな…………普段は。
夫、つまり若旦那さんが絡むと人が変わったように怖くなる。
若旦那さんもいい人なんだけど、女性関係にだらしないらしい。
まぁその…愛ゆえに、的な感じだ。
あれはホントに怖かった。
「ルキフェル〜、どうするの?」
「………………どうしようか?」
いや現実見ないとダメだよな。
うん、ガンバレ、自分。
若奥さんの帰った後、落ち着こうということでお茶にすることにしたのだ。
お茶を淹れてるのは俺とルキア。ルキアは配るの専門だけど。
思わず逃げるように出てきたけど、帰りづらいよな〜。
しかし………年少組の反応を見るにアイツラは昔はあんなんじゃなかったんだよな。
それにアイツラの言動。
嫌な予想が当たらなきゃいいんだけど……
コンコン!
「すいません! どなたかいらっしゃいませんか?」
ありゃ? お客さんだな。
「誰かな?」
「聞き覚えは特にないな」
教会に訪ねて来る人はだいたい覚えてるけど、思い当たる人はいないし、今日は集まりなんかもない。
いや、微かに聞き覚えがあるような……
「ハイ。どちら様でしょう…貴方はっ!!?」
出迎えにいったミアさんの様子が一変する。なんだ?
「ルキフェル!」
ルキアの呼びかけに頷いて答え、火からヤカンを外して二人で入口に急ぐ。
火の用心は大切だ、うん。
「こんにちは。少しお話がありましてね、……後ろの二人について」
そこには俺たちを見て、微笑みを浮かべる孤児院の男がいた。
俺はその笑みを見て背筋に悪寒が走り、警戒を強める。
「ルキフェル、この人顔恐いよね」
『………』
同意を求めるな! ……………同感だけど。
「ルキア」
「うん?」
「追加で補習な」
「えぇ〜〜!!」
空気を読み方ってどう教えればいいのかな……?
どうも。 読んで下さった方々ありがとうございます。
この小説もついに二十話。けど、まだまだ序章部分なんですよね(^^;
構成だけは壮大なせいで書ききれるのか、かなり不安です。
とりあえずこれからもがんばるのでよろしくお願いします。
ではまた次回(^^)/~~~