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第一話:唐突な反撃開始

なぜ僕は抗おうとするのか……



信じるものなどないのに……



護りたいものなど無いのに……



なぜ僕は諦めないのか……


希望など最初から知らない……



夢などとうに打ち砕かれた……



それでも僕が戦おうしたのは……



ただ、きっと……















「……ふぁ〜〜」


さて、昨日も昨日で目標のために魔法具作りに励んでキリのいいところで寝たが、それほど夜更かしをするわけではない。


これは遅くまで寝ていられない理由があるからだ。


僕はいちおうこの家の長男だが厄介者扱いなので誰も起こしに来ない。


当然食事も時間内に食べに行かないとかたずけられてしまう―――――――――

というありがちなパターンではない。


僕に食事など出ない。つまり僕は自給自足の生活を送っているのだ。


貴族の屋敷の中で自給自足? と思うかもしれないが、アドリビティウム家は辺境にある家なので敷地が山の一角というか、山の一角が敷地になってるという感じだ。


正直なところ無駄に広いだけだが――――とにかく僕の住んでいる蔵は敷地の端の方にあり、そこは自然豊かなところなのだ。


扱いは酷い方なのだが、食生活はむしろこちら方が豊かだろう。余りものや手抜きのもの、冷たくなったものなど食べなくてよいのだから。


まぁ、獲物を狩るのには最初苦労したが、今ではは文字どうり朝飯前に食料を調達できる。


恐らく当主たちは僕がすぐ野垂れ死ぬことを期待していたのだろうが、僕は自分でもびっくり! なサバイバルの才能を発揮してこの状況に適応してしまった。

当主は僕は目障りだと思ってはいるようだが関わりたくないのか、僕が死ぬ様子がないことを知ると無視するようになった。


これは別に良い。むしろ僕にとっては喜ばしいことだ。なんせ、あの忌々しい顔を拝むことがないのだから。


他の方々も同じようにしてくれていれば、何も言うことのない生活が送れたのだが世の中そう都合のいいことばかりではない。


僕が存在することが気にくわない連中、 一部の使用人とアドリビティウム家長女つまりマイシスターが嫌がらせにくるのだ。


貴族の選民思想だかなんだか知らないが妹が僕のことを気に入らないのは育った環境上わからなくもない。

「たぶん、僕が優秀でも嫌われたと思うけど」


誰にでもなく愚痴ってみた。


だが、使用人たちは完璧、八つ当たりだ。いちおう僕も貴族の血は引いている訳だし、まだ子どもで魔力も高くない僕は貴族に不平不満はあるが逆らう勇気もない奴らにとっていい獲物なのだろう。


「僕も被害者側なのにな〜」


そんなことは彼らには関係ないのだろう。ただ自分達より下の奴らがいないと気がすまない、そんなプライドだかなんだかわからん感情が理由なのだ。


そんなに今の生活が嫌ならば抗うなりすればいいのにと僕は思うのだが、いろいろ事情があるのだろう。


さて、気をとりなおして朝食の準備をすることにした。あらかじめ採ってきておいた木の実や野草、あとは仕掛けていた罠に兎か何かがかかっていたら肉、いなかったら少し離れた池から魚を捕ってきてそれを朝食にする。


気分で決める時もあるが。

外に出て体をほぐしてから周りの罠を順番に確認して行く。三つめの罠に兎がかかっていたので今日は肉を食べることにした。


いちおう全ての罠を確認・点検してから蔵に戻る。結局獲物は一匹だけだったが僕一人には多いくらいだ。

兎が捕れた時点で帰ってもよかったが、もし獲物がかかっているまま放置していたら大変グロテスクなことになるため毎回罠は全部確認する。


調味料などないため味付けは出来ないが新鮮な食材はそのままでも十二分に美味しいため肉は火を通すだけだ。


朝食が済んだら鍛錬の時間だ。食べたばかりでは激しく動けないので始めに蔵の蔵書で魔法について学ぶ。たまに関係ない本を読むこともあるが、魔法自体趣味みたいなものなので別にいいだろう。


しばらくしてから実際に魔法の練習をしたり、武術の訓練をする。しかし、蔵に武術の教本があったはいいが、一人では限界があると感じている。


なんせ、人相手に技を出せないから実際にはどれほど効果があるかわからないのだ。それに自分の悪いところなどもわからないため直しようがない。


やはり格上の相手と戦う機会がほしいが使用人や妹では実力に疑問があるし、確実に格上であるだろう当主との戦いは文字どうり(僕にとっての)死闘になると思われるため挑むわけにもいかない


「人生はままならないな〜」


そんなことを言いながらもとりあえずは鍛錬に励むことにした。


昼近くまで鍛錬を続け、適当に昼飯を調達してから蔵に帰る。体は大事な資本だからできるだけ規則正しい生活を心がけるようしているのだ。


だが、あまりゆっくり昼飯を食べているわけにはいかない。片付けが終わるとすぐに森の中の罠の確認に行く。


といっても獲物を捕るためのものではなく、対人用のものだ。まあ、罠といっても鳴子のような接近を知らせるものがメインで、あとは蔵にあった怪しげな本"トラップマスター"とかいうのを参考にふざけ半分に作ったものだが。


嫌がらせにくる奴らから逃げるとさらに酷いめにあうというか、あったことがあるため逃げるわけにはいかない。


だから事前に自作の護符などを仕込んでおくようにしたのだ。妹が来た時には対魔法の護符を、使用人たちが来た時には対物理の護符を準備する。


しかも平気な顔をしているとドンドンエスカレートしていくため、苦しんでいるような演技をしなければならない。


僕が苦しんでいる様子を見ながら笑う妹の将来が正直心配だ。貴族はみんなSなのだろうか? あと、僕を痛めつけながらニヤニヤしている使用人たちはもう手遅れだと思う。


確認が終わればあとは自由に過ごす。散策をしたり、釣りをしたり、昼寝をしたりゆったり過ごすのだ。


しかし、今日はそういうわけにはいかないようだ。


キィーーーーーン


仕掛けに反応があった。どうやら使用人たちが来たらしい。ちなみに妹が来たときは"ジリリリリ~~~~~ン"と音が鳴る仕様だ。


「ハァ〜」


ため息をつきながら護符を用意する。毎日ではないがかなりの確率でやってくるため正直うんざりだ。


妹の時のような命の危険がないだけマシと言えるだろうか? 容赦無しの魔法を放つのは本当に勘弁してほしい。


閑話休題。


護符の準備が終わったら蔵からできるだけ離れる。蔵に何かされないように仕掛けはしてあるが念のためだ。


「よう」


近づいて来るのがわかったので待ちかまえていると、使用人A・B・Cが現れた。名前など知らないし興味もないためこう呼んでいる。


「なんかようガッ」


セリフの途中で腹を蹴りあげらる。最後まで言わせて欲しかった。


「黙れ! クズ。てめえはおとなしくボコられりゃいいんだよ!」


言い終わるやいなや三人がかりで襲いかかってきた。

ガスッ! ボコッ! バキッ!


「や、やめ」


「うるせえっ!」


護符があるといえど完全に防ぐタイプは使えないのでダメージはある。あくまでやられているように見せなければならないのだ。


だから、使用人たちの気がすむまで殴られ続けるしかない。かなりむかつくが、我慢だ、我慢。


「ハハッ! いい様だな」


「貴族の落ちこぼれが!」


それでもお前たちより優秀だと思う。


「情けねぇな〜。貴族様のくせによ!」


貴族になった覚えも貴族らしい扱いを受けたこともないが? つーか、子どもを三人でフクロにする奴らほどじゃない。


「魔力がなけりゃこの程度のくせに…偉そうにしやがって!」


じゃあ、直接言ってやれよ。


「黙りか!? ああっ!!」


黙れゆうたのそっちだろ! ………いけないいけない。思わずツッコミそうになった。


早く終らないかな。さすがに辛くなってきた。主に演技するのとツッコミを我慢しるのが。


「なんか言ってみろ! 親殺し!」


ドクンッ!!


心臓がはねあがった。


母親は貴族ではないし、哀れな境遇だったので母親を悪く言われることはなかった。少なくとも使用人たちには。


妹も同情していたのか母親について何か言われることはなかった。


この使用人たちはよほど嫌なことがあったらしい。


「お前のせいで母親は死んだんだよな!」


こらえろ! 抑え込め!


「バカな奴だよな。魔力があるからって調子に乗りやがって!」


黙れ!! 何がわかる!!


「子どもが落ちこぼれだとわかるとさっさと死んじまったもんな!!」


ドガッ!!


気づくと使用人Bはぶっ飛んでいた。どうやら気絶したようだ。使用人A・Cの顔は驚愕に染まっている。


僕は全身に魔力をみなぎらせて立っていた。


「覚悟しろ……」


何も考えずただ目の前の敵を叩き潰そうと。


「本気でいくぞ!!」


持てる力の全てを使って。

おはようございます、こんにちは、こんばんは、まだ操作に慣れない錬創です。読んでくださった方どうもありがとうございます。次話からルキフェルの反逆が始まりますのでお楽しみに。できるだけ早く書き上げる予定です。感想・意見をお待ちしております。

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