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第十一話:ルキフェルとルキアの教会生活 前編

最近、この教会はすっかり賑やかになりましたね。



あの二人、ルキフェルとルキアが来てからは……



近頃は立派な孤児院ができたから、教会に来る子どもはいなくなったし、



あちらに移る子もいたから寂しくなっていたんだけど……



あの二人が来ただけでむしろ前より騒がしくなったかしら?



ルキアは世間知らずだからトラブルをどんどん起こすし………



ルキフェルはルキアよりしっかりしてるしルキアのフォローもしてくれるけど……



あの子、わかった上で問題を起こしたりするし……



ハァー



………でも、あの二人のお陰で他の子や私も毎日が楽しくなったわね。



町の人たちも二人がどんなことをするか楽しみにしてるらしいですし。





あの子たちが何処から来たのか、


なぜいつも二人でいるのか、


私は二人の事情を全く知りません。



初めて会った時のルキフェルの服なんて血だらけの泥だらけでボロボロで……


まるで命からがら逃げてきたようでした。



何か深い事情があるということはわかりますが、



二人は話してくれませんし……



あの子たちはもう私の家族、力になってあげたいのですがね………





あら、どうしたの?


えっ、ルキフェルたちが?


ハァ……


元気過ぎるのも困りものですね。将来が不安です……














さて、この町に住み着くようになって1ヶ月ほどが過ぎた。


町に着いた時は焦ったよな〜。


服がボロボロなのすっかり忘れてたから、軽く騒ぎになったし。


ルキアのローブのようなドレスのような服装は目立つと思っていたが自分が悪い意味で目立つとは思わなかった。


しかもルキアは服などを自在に変えられるらしく、離れた場所で群衆に紛れ、人だかりの中心の俺を笑ってたし。


とりあえず孤児院の場所を聞くと事情を察してくれたのか妙に親切に教えてくれた。


………つーか、あれは確実に同情されてたが、気にしないようにしよう。


町の人の話によるとこの町には古くから孤児を預かっている教会と新しくできた孤児院があるそうで、孤児院の方が待遇が良いらしい。


まぁ、孤児院をやってるのはどっかの貴族らしいからしょうがないだろう。


最初は孤児院にいこうと思っていたが、孤児院の職員と教会のシスターを見て教会にいくことにした。


なんというか気に食わなかったんだよねぇ。


そんな訳で俺たちは教会で暮らすことになったのだ。


教会にはシスターのミアさん、歳下からウィル、エイミ、ハルトの三人の子どもたちがいて、俺とルキアを会わせると男女比が同じの計六人が暮らしている。


因みに子どもの中では俺が一番歳上らしいから、適当に俺と同い年にしたルキアも俺と同じ最年長だ。


もともといた子どもはほとんど孤児院にいったらしく、残ったのはミアさんを慕っていた年少組三人だけらしい。


三人とも割とあっさりなついてくれたから、良かったけどね。


ともかく、屋敷にいた頃とは比べ物にならないほどマシな生活を俺は送っているわけだ。







「おはよう、ミアさん」


朝の鍛錬を終え、炊事場に行くといつものようにミアさんが朝食の準備をしていた。


「おはようございます。ルキフェル」


ミアさんは誰にでも丁寧に話す。聞くと教会の人とはそういうものらしい。


ミアさんの見た目はクリスさんより若く見える。


……………歳を聞いたら凄いプレッシャーを感じたから聞くのは断念した。


教会を任されているシスターとしては若いらしく、前任者が突然亡くなり、なし崩しになったそうだ。



二人で朝食の準備をする、といっても俺は食材を切るだけで火を使う作業は全てミアさんがするが。


「ミアさん。大変でしょ? 俺もやるよ」


「ダメです! 火傷したらどうするんですか!? 」


「火くらい使ったことあるんだけど……」


ミアさんは火加減を見ながら俺の提案を却下する。いい人なんだけど、過保護なんだよな〜。


「それとルキフェル。乱暴な言葉遣いはやめなさい」


「"俺"くらいいいじゃん……」


「ダメです」


といってもね。これは自分なりの決意を込めて変えたからやめる気ないけど。


私とかは使いたくないし。


「そろそろ皆を起こしてきて下さい」


「了解」


俺は大人しく炊事場を後にした。


このやりとりももはや恒例だしね。


コンコン


「ウィル、ハルト、起きてるか?」


ノックをしてから部屋の中に問いかける。


ちなみに部屋割りはウィルとハルト、ミアさんとエイミ、俺とルキアだ。


部屋自体は余っているが年少組は一人で寝れないし、俺たちは一緒の方が都合が良いためこのようになっている。


「………おはよぉ」


「……おはようございます」


ウィルとハルトが目を擦りながら出てきた。まだ寝ていたらしい。


「二人ともおはよう。顔洗ってきな」


そう言いながら俺は隣の扉をノックする。


コンコン


「エイミ、朝だぞ」



「…………はぁーい」


エイミは返事をしてもしばらくは出てこない。ミアさん曰く、女の子はいろいろあるらしい。


よくわからんが、早いんじゃないか?


エイミまだ6歳だろ。


とりあえず起こしたので俺は最後の扉に向かう。


「オーイ…」


俺はそう言いながら、


バン!!


「起きろ!!」


扉を勢いよく開け、ベットで眠っているルキアに叫ぶ。


「………まだ眠いよぉ」


「いいから起きろ」


「………………zzz」


「寝るな!!」


ルキアは朝が弱い。


精霊は食事、睡眠などは必要ないらしいが、ルキアは俺と同化した影響か睡眠欲などが現れたらしい。


まだその新しい欲求に慣れずついつい寝てしまうそうだ。(別にとらなくても問題はないそうだが)


「うるさいな〜。ルキフェルが寝かせてくれないからじゃん」


「割と重要な話をしてたんだが…」


俺たちは毎晩、自分たちの状態について検証している。


いつ危険な状態になるか、互いに害がないかすらわからないのだから当然の行動だ。ルキアには不評だが。


今のところ精霊の力を使っても害はないようだ。


「というか、もっと優しく起こしてよ」


「………わかったよ」


ルキアのリクエスト通り、表面上は優しく声をかける。


「ルキア、朝だ。起きなきゃだめだぞ…(起きろーーーーっ!!!!)」


「キャアァ!?」


心の中では大音量で叫んでやったが。


「これでいいか?」


「うーー」


恨めしげに睨まれた。まぁ、ルキアの容姿のせいで可愛いだけだけど。


「悪かったって、ほら!」


「………うん」


差し出した手をルキアが握る。


何だかんだで俺たちはうまくやっているのだ。







「ルキフェル、ルキア。お話聞かせて下さいね?」


炊事場に戻るとなぜかミアさんに説教をくらった。俺たちの会話を聞いていたエイミが寝かせてくれない発言をミアさんに話したらしいが、なんで怒られるんだ?








『いただきます』


お祈りを終えてからみんなで食事を始める。


みんなで食事をするというのは思っていたよりずっと良い。


一人で食べるよりずっとおいしく感じるし、楽しいしね。



「ルキにぃ、きょうあそんでくれる?」


「ん、いいぞ。ただし、勉強が終わってからな」


「私も遊んであげる」


ウィルの問いにルキアと一緒にOKをだす。


するとウィルが嬉しそうにニコニコ笑う。うんうん、幼い子はこうでないとな。


………ブレアのようにならないよう、気をつけなきゃ。


「じゃあ、あたしも!」


「ぼくもいいですか?」


「もちろんだ」


三人は本当に俺たちになついている。やっぱり寂しかったんだろうか。


ウィルはまだ5歳、ハルトだって7歳になったばかりだからしょうがないのかもしれないな。


このくらいの頃は誰かに甘えたいものだし、思う存分甘えさせてやろう。


……あんな思いはさせたくないし。


「みんな! 勉強はしっかりしなきゃダメですよ」


注意はミアさんがしてくれるしね。




食事の片付けが終わると俺は一人町に行く。


他のみんなは勉強だ。ルキアは俺と同じ12歳ということにしているが、読み書きが全滅なためみっちり勉強させられている。


俺も最初は一緒に勉強しようとしたが、必要なくなった。


別に1ヶ月で学ぶことがなくなったわけではない。


なぜか初めて聞く言葉でも意味が勝手に頭に浮かぶという現象のせいだ。


母の知識だと思うのだが、知らないはずのことを知っているというのは変な感じだ。


おそらくは単語を頭の中で考えるとその言葉を知識の中かな自動検索するのだろう。


でも学んだ記憶がないから自然に思い出すことはない。


不便と言えば不便だな。


まぁ、とにかく常識を一から教えてもらう必要はなくなったのだ。


当然、あのモヤの知識もあった。ミアさんに"(あやかし)″という名称を聞くと後は一発だ。


精霊の知識と人間の知識には差異はあったけど、だいたいは同じだったし。


まあこの話をミアさんにするわけにもいかないから適当に誤魔化して勉強を逃れたのだ。


ルキアからの視線がつらいけどね……。


「さてと…」


俺は町の広場でのぼりを立て隣に座る。


のぼりには"何でも屋"と書いてある。


まぁつまり、俺は仕事を探しに来ているのだ。


教会はそれほど財政が豊かじゃないし、蓄えはあった方が良い。


………一人じゃ鍛錬くらいしかすることないしな。


「なんだこりゃ?」


「ガキが何してんだ?」


空を眺めながらそんなことを考えていたら男二人がこちらにやってきた。


あからさまにニヤニヤしているが客は客だ。我慢しよう。


「何でも屋です。何か依頼ですか?」


すると男たちは顔を見合わせて笑いだした。


「ハハハハハハ!!」


「ガキに何ができるんだ!?」


「依頼されれば何でもやるっすよ。モノにもよりますが」


「じゃあ、頼んでみるか」


男はニヤついた顔のまま、後ろを指差す。


そこには馬車と俺より大きな木箱が数個あった。


「俺たちだけじゃ、キツくてな。代わりに馬車に乗せてくれよ」


「代金は弾むぜ」


男たちはよそ者らしい。つーか最初からからかう気だったなこれ。


「いくらです?」


「2千ゴールドでどうだ?」


「そりゃあいい! ハハハハハハ!!」


ほう、2千ゴールドといったらけっこうな額だ。一人分の食費が1日160ゴールドくらいだからな。


「わかりました」


俺はそい言うと木箱の方に歩いていく。


男たちはまだ笑っている。周りから憐れそうに見られているのには気づいていないらしい。


「ガキが無理すんなよ〜」


「ハハハハ!! 諦めてもいいぜ〜?」


確かに普通の子どもにはむりだろな。けど…


ギシッ!!


俺は木箱をしっかり掴んで魔力を解放する。


ズッ


「ハハハ、ハ………ハァ!!?」


コンバットフォームを使えばこのくらいはできる。


男たちは目の前の光景に唖然としているが、無視して次々と木箱を馬車に積んでいく。


ズンッ!


「はい! 終わりっと」


最後の木箱を積んでから男たちに手を差し出す。


依頼を果たしたのだから報酬は貰わないとな。


「ふ、ふざけんな!! クソガキが!!!」


男の一人がいきなり殴りかかってきた。短気だねぇ。


「フゥ」


俺は軽く息を吐いてコンバットフォームのまま男を殴った。


バキッ!!


「グッ…!!?」


そのまま男は倒れ込んだ。


俺は気をとりなおしてもう一人に手を差し出して呼びかける。


「報酬は?」


「…………………まけて下さい」


男は青い顔をしながら小さく呟くように言った。


一週間に二回ほどこんなことがある。もちろん他のちゃんとした依頼もやっているが儲けはこれが一番だ。


今日はこれで600ゴールド稼げた。



俺は重い足取りで立ち去る男たちを見送り、また空を眺める。


うん、今日もいい天気だ。


読んでくださった方、どうもありがとうございます。


話の展開やキャラを考えるのに時間がかかり、やはり更新が遅れてしまいました。


今回は日常編なので、激しいバトルはありません。後編(予定)はなごむような作品になるよう頑張りたいです。


それでは感想・レビューお待ちしております。

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