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第九話:決死の戦い

彼は……ううん、アイツは変な人間だ。



初対面の私をいきなり抱き抱えるし。



自分の不幸話を平気でしゃべるし。



本当にわかんない。



毎日痛めつけられてたとか、小さい頃から自給自足だとか、なんで……



なんで普通に初対面の私に言えるの…?



全部本当かなんてわかんないけど、あの目は嘘をついている様子じゃなかった。



少なくともアイツは一人でこの森にいる以上、本当に置き去りにされたのだろう。



なのに笑っていた。



状況がわからないほどのバカなのかとも思ったけど、違った。



アイツは全部わかった上で笑っていた。



人間がこの森て生き残るなんて絶望的な可能性しかないのに。



あきらめていなかった。



これ以上一緒にいると決意が揺らぎそうだったから、私は急いでアイツと別れた。



出口を教えたのはきっとアイツに死んで欲しくなかったからだろう。



私もアイツみたいになれたら良かったのに。



今更ながらそんなことを考えてしまった。



ドラゴンの目の前に来ると私に狙いを定めたようで腕を振りかぶった。



これで終わる、そんな時に私はアイツの名前聞いとくんだったなんて後悔していた。



………でも終わらなかった。



アイツが助けに来てくれた。















ドラゴンと相対したはいいけど、どうしよう…?


全身を頑丈な鱗が覆っているし、人間なんかとは比べものにならない強靭な肉体をドラゴンは持っている。


鎧を着てるとか障壁があるとかなら手はあるんだけど、鱗を脱いでもらうわけにもいかないしな〜 いや剥いでかな?


そんなことことを考えていると突然ドラゴンが後ろに振り返った。


ビュンッ!!


「尻尾よ!!」


「おわっ!!?」


ルキアのお陰で凪ぎ払われた尻尾をギリギリで回避する。


「……マジ?」


尻尾が凪ぎ払われた跡には僕の胴体より太い木が何本も折れていた。


一撃すら耐えられないかもしれない。


「バカ!! 私を置いて早く逃げなさい! ただの人間が勝てる相手じゃないんだから!!」


ごもっともだけどさ……


「間違ってるぞ。ルキア」


「何がよ!?」


「僕は落ちこぼれだ」


「…ハ?」


そう僕はただの人間じゃない。


「言わばダメ人間だ。ただの人間じゃない」


「……………」


僕の答えを聞いてルキアは固まった。そしてぷるぷる震えだした。


ドラゴンの攻撃避けなきゃいけないんだから、動かないでほしいんだけど。


「この大バカ――――――!!!」


「ぐお…」


ルキアが大声を出した。とんでもないのを。ルキアを抱き抱えている僕は当然モロにそれを喰らった。


ドラゴンすら驚いて攻撃を止めている。精霊ってスゴいな……………何か違う気もするが。


耳鳴りを起こしているが、我慢してドラゴンから距離をとる。


今のうちにルキアには逃げてもらおう。


「ダメ人間って、余計に勝てるわけないじゃない。ていうか偉そうに言うな!!」


だが、ルキアは僕に大声で文句を言っている。身隠せないじゃん。


「落ち着けよ」


「誰のせいよ!! だいたいどうする気よ!」


「何が?」


僕は一旦止まり後ろを見ながら聞き返す。ドラゴンは僕たちを追いかけてきているようだ。


「アンタ、私が死ぬ気なのわかってたんでしょ。 死なせてよ」


「…………」


やっぱりか。


「私はアンタよりはマシかもしれないけど、不幸だったの。別にいじめられてたわけじゃないしね」


ルキアはうつむきながら続ける。


「でも、私はみんなと違った。精霊の力をうまくコントロールできなかったの。精霊なのによ」


ルキアは笑っている。だが目には絶望しかなかった。


「普通は力を使おうと思えば自分の属性の力が使えるはずなのに………。私は自分の属性もわからない!! 力も上手く使えない!!」


みんなと違う。それは本当に辛いことだろう。気持ちはわからないではない。


「……みんな私を励ましてくれたわ。でも私は…」


ルキアは突然顔を上げ僕に掴みかかった。その目には涙が溢れている。


「私はみんな…、みんなに嫉妬した! 心配して、くれたのに! 私は……」


「ルキア……」


「だから、私は自分が嫌い! こんな惨めに生きていくくらいなら死んだ方がマシよ!!」


………死んだ方が、マシ…か。


「だから「断る!」えっ!?」


「断る! お前を、ルキアを死なせてなんかやらない!」


「……なんで、なんでよ? 私はアンタみたいに強くないの!! 私は…」


「僕は強くなんてない。ただ、強くあろうとしてるだけだ」


実際僕は弱い。当主と再戦したら確実に負けるだろう。あの戦法は一回限りだ。


「僕は知ってるだけだ」


でも……、そんな相手と戦えた。恐れずにぶつかっていけた。


「世界には、まだまだ希望があるってことをな…」


それは母のメッセージのお陰だろう。あれのお陰で僕は決意できた。


精一杯、力の限り抗ってやると。


母のお陰で僕は救われたのだ。


だから、


「お前にも教えてやる! 誰にだって幸せになる権利はあることを! 諦めない限り、終わりじゃないことを!」


今度は僕がルキアを救ってやる。


「でも……、私は…」


「誰にだって嫌なところくらいあるよ。本当は仲間が好きなんだろ? 」


「…………うん」


だから仲間に嫉妬した自分が嫌い、か。


「だからさ、自分を嫌いなんて言うな。お前は優しいイイヤツなんだから」


僕はドラゴンの方に振り返る。まだ距離はあるがルキアの近くで戦うわけにはいかない。


「あ、名前…」


走り出そうとしたらルキアが尋ねてきた。そういえば名乗ってないっけ?


「僕はルキフェルだ」


僕はそう言い残してドラゴンに向かっていった。


アイツに見せてやらないとな。落ちこぼれでも、出来損ないでもやればできるってことを。





「ギャオオオオン!!」


ドラゴンはまた暴れている。上位種らしくないな? なんでだろう。


まあ、いいか。とりあえず、コイツを倒さなきゃいけないんだけど。


火や雷は鱗で弾かれるだろうから、地か。けど威力が足らないよな〜。


鱗より強固なものをぶつければいいんだろうけど、鉄くらいまでしか強度は再現できないし。


地属性には様々な鉱物も含まれている。だから地属性の魔法なら鉄などを再現できるんだけど…。


「僕って、三つ属性使えるけど相性はイマイチなんだよな…」



人の属性はその人の魔力が自然界のどの属性に近いかで決まる。複数使える人はいるが、個別の相性は一つだけの人の方が高い。


まあ、僕は三つ使えるとはいえ低すぎるが。


だから、当主のような火専門の相手と同じ魔力で火属性魔法を打ち合うと僕が押し負ける。


あのときは魔力からして負けてたけど。


とにかく、相性が高ければ負担が減るから複雑なイメージを再現することもできる。


ちなみにソードは剣をイメージしただけだから、別に地属性は関係ない。材質とか考えてないし。



それはともかく、融合魔法しか効果のありそうな手はない。


しかし、それでも鱗を破るのは困難だ。火も雷も火力不足、地は強度不足。


しかも僕の魔力は残り融合魔法一発分だけ。


「チャンスは一回か」


分が悪すぎるな。


でも………、負けられない。


バギッ!


その時またドラゴンが木をへし折った。木はそのまま空へ舞い上がり、ドラゴンの頭へ……。


ガン!!


「グォォ!」


自分で折った木に当たってドラゴンはフラついている。


「…アホか、あのドラゴン?」


木が当たったくらいでドラゴンが………


「そうか!」


いけるかもしれない。役に立ちそうなものもあるし。

僕は早速準備に取り掛かった。









「こっちだ!!」


僕はドラゴンを仕掛けの方に誘導する。


後はタイミングだ。



ブンッ!!


「おっと!」


僕はひたすらドラゴンの攻撃を避ける。回避に専念すれば避けられないものではない。


近くにいるからかさっきからブレスを使ってこないのも好都合だ。


ドガッ!!


まだだ。まだ。


ビュッ!!


ドラゴンは攻撃を避ける僕に苛立ってか、大振りになってきた。


これなら……


「今だ!!」


僕は符を構えてドラゴンに突っ込んだ。


次の瞬間…。


バキィン!!!


「ガハッ!!」


ドラゴンの攻撃が僕の体に直撃した。


そのまま、吹き飛ばされていく。






そう仕掛けのところへ。


バスン!!


着地の時に使ったネットに僕は受け止められた。


符で障壁張ったのに気を失ないかけたぞ。


しかし、このネットは先程とは少し違う。


ギシギシ!


ネットの支えにしている木が軋む。


ネットをゴムのように伸びたら縮む性質にしたのだ。


バン!!


僕はドラゴンに向かって打ち出された。


勝負だ!!


別に鱗を破る必要はない。ドラゴンが気絶するだけの衝撃を与えればいいのだ。


右手にはソードの応用であるハンマー。


左手には地属性中級魔法メガロック。


速度を落とさぬよう、ギリギリまで発動させない。


これが僕の最も重い一撃。


「融合魔法!!!メガハンマー・ロック!!!!」


ズガン!!!


僕はハンマーの大きさを調節し、ドラゴンの頭へ叩き付けた。


これなら、


ゾクッ!


「ガァァァァ!!」


バギッ!!


避けるひまもなく、僕はブッ飛ばされた。


ガ! ゴ! ゴロゴロゴロ


そのまま地面をなん回転もしてやっと止まる。


「骨……、いったな」


仰向けに止まったため、蒼い空が見える。


ダメだった……か。


次はどうするかな?


「本当にバカね」


いつの間にかルキアが側にいた。いや、僕が近くまでブッ飛ばされたのか?


「こんなになって。どうせ無理に決まってるのに!」


「………ど…うせ、なん…て、言う…な」


僕はなんとか立ち上がる。折れた骨の変わりにコンバットフォームで身体を無理矢理支える。


外骨格って言うんだっけ?


「アンタ………」


「あきら…めなきゃ、終…わりじゃ……ない!」


まだ身体は動く、魔力だってゼロじゃない、心だって折れていない。


まだ戦える。


「ホント、バカね」


そう言いながらルキアは僕を抱きしめた。


「?」


「私の力をあげる。だから見せて、奇跡を……」


「! おい!!」


「信じてるからね。あのドラゴンも助けてあげて、約束よ」


パァァア


その言うと温かい光が溢れ、ルキアは消えた。だが近くに存在を感じる。どうなったんだ?


「ギャオオオオン!」


いつの間にかドラゴンが来ていた。


だけどもう恐怖はなかった。身体の痛みもない。ルキアのお陰か。


それにさっきまでと見えなかったものが見える。


ドラゴンに禍々しいモヤのようなものがとり憑いているのがわかるのだ。


あれが原因か。だから"助けてあげて"ね。


「よし!! 見てろよ! ルキア!!」


僕はイメージを開始する。想像するは、邪悪なもの"のみ"を斬る剣。


ドラゴンは殺さずあのモヤだけを滅す。


「ギャァァァア!!」


魔力は足りないが、力なら周りにいくらでもある。


……僕とルキアが力を合わせれば、できないことはない……なぜか、この時そう思えた。


「これで…」


僕は作り上げた剣を構え、ドラゴンに斬りかかった。


「チェックメイトだ!!」


カッ!!


辺りを、光が満たした。


読んでくださった方どうもありがとうございます。編集を間違って時間がかかっちゃいました。次回は細かい説明になる予定です。それでは、感想・意見お待ちしております。

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