プロローグ
書き慣れていないため、誤字・脱字があるかもしれませんが御了承ください。感想・指摘お待ちしております。
男の子は孤独だった。
家には味方など一人もいなかった。
何か悪いことをしたわけでもなく、少なくともいい子でいたつもりだった。
だが、周りにはそんなことは関係なかった。
落ちこぼれ。
ただ、それだけだった。
それだけの理由で男の子は一人になった。
男の子は考えた。
どうすれば父は認めてくれるだろう。
どうすれば妹はなついてくれるだろう。
結局、答えはでなかった。
だから………
暗い乱雑な蔵の中に僕は一人いた。
「ここをこうして…」
僕の名はルキフェル=アドリビティウム。
中級貴族アドリビティウム家の長男だ。
ただし、正式な跡継ぎというわけではない。
僕はいわゆる妾の子なのだ。それも現当主が平民であった僕の母と無理矢理関係をもったため生まれた子である。
まぁ、理由はそれだけではないのだが。
平民と貴族の違いは様々あるが、貴族たちが不遜になっている原因のひとつに生まれもつ魔力の差がある。
この世界の人間は身に宿す魔力をコントロール、変換することで魔法を使うことができる。
つまり、魔力が高ければそれだけ強力な魔法使いになる可能性が高くなる。
この世界では魔力は絶対のステータスなのだ。
魔力の高さは個人差があって、基本的には遺伝するものとされている。
そして、大抵の貴族の祖先たちは強大な魔法使いであった。
つまり、貴族たちは生まれつき高い魔力を持っているのだ。
もちろん、例外もある。僕の母は平民だが貴族並の魔力を持っていたそうだ。
それに落ち目なアドリビティウム家の当主が目をつけ、強大な魔力を持つ子どもを生ませようとしたらしい。
当主は手段を選ばなかったため、母は僕を生んだあと自殺したらしい。
まったくもって、酷い話だ。
しかし、当主の傲慢ぶりに天が怒ったのか想定外のことが起きた。
生ませた子ども、つまり僕には魔力が平民に毛が生えた程度しかなかったのだ。
ザマアミロと言いたいところだか、そのせいで僕はずっと虐待され孤独だった。
今では使用人どころか、母違いの妹にさえ、痛められる毎日だ。
だが、僕もやられっぱなしで終わるつもりはない。
いつか、必ず、この檻から脱け出してやる。
しかし、魔力は差が歴然。肉体的にも子どもの身体ではやり返すことは絶望的だ。
さらに家を出たとしても宛はない。
家の中で状況の改善は見込めない、家を出ても行き倒れがオチ、まさに八方塞がりだ。
無論、諦めたわけではない。諦めたらそこで終わりなのだから。
勝てないなら勝てる状況を創ればよい。
そんなわけで、僕は毎日家の者に対抗する方法を編み出そうと努力してきた。
今やっているのもそのひとつだ。
身体能力で劣る人間は道具を使うことでほかの動物を撃退してきた。
ということで僕も魔力が込められた道具、通称魔道具を使うことにしたのだ。
幸い、僕の部屋代わりの蔵には昔の魔法関連の書物などがあったので簡単なものなら自作できた。
ただ貴族クラスと真っ正面から戦うにはぜんぜん足りない。
せめて業物級の魔道具がいるが、そんな大金を手に入れるアテはない。
そもそも相手だって魔道具を使うことができる、と気づき数日へこんだのはけっこう前のことだ。
まあ、足りない部分を補うという発想は悪くないし、魔道具を造るのにハマってしまったので今も続けている。
「よし。完成っと!」
魔道具や魔法について学ぶことはとてもおもしろく毎日楽しくやっている。
そういうのがひとつでもあると今までと変わらない生活もまったく違うように感じるから不思議なものである。
もし魔道具にハマってなかったら魔法に関してもっと学ぼうなんて思わなかっただろう。
きっと死んでいるとかわらないようなつまらない人生をを過ごしていたに違いない。
さらに魔法を学ぼうとしたおかげで、あのダメ当主をぶっ飛ばせる方法を思いついたのは本当にラッキーだ。
まだ問題はあるがこれなら当主たちをボコボコにして家をでるのも夢じゃない。
「楽しみだな〜」
暗いなか一人でニヤニヤしている様子はかなり怪しいと気づいたのはけっこう後だった。