5-15 勇者キラリの冒険 師匠と僕
普通なら怖気づくだろう。今もそうだ。あの時の攻撃、あれは手加減してあれなのだ。あの日リューネが帰った夜、自分は恐怖でシーツを濡らした。涙も水分が全部出るくらい流した。そして、それから講習に来たギルマスさんに必死に頼み込み魔法を教えてもらった。そして一か月訓練を死ぬ気でしたのだ。その必死さがぎりぎり腰が抜けるのを待ってくれている。時々会う師匠にせめて一緒にいられるように努力した。
『竜の威圧!』
その言葉に体全体に衝撃が走る。びりびりと体が震える。もはや頭がグルグル回る。が何で生きてきた!自分は生きる!手を指し…。だが次には、その声が背後にあった。
「もう少し冷静に、言ったでしょ、深呼吸する。」
その言葉に後ろを振り返るといつの間にかドラゴンが後ろにいた。種明かしすると、影移動でキラリの陰を選び、映った瞬間に解除して移動しただけだ。実際の大きさが40mにもなるのでその影だけでも…40mになり周囲を暗くするので、維持して待機はしにくかったのだ。恐怖にかられ、ライトアローを水平に打ち込む。が、それは足を上げ簡単にかわされる。
「まだまだ。」
リューネが少し離れてみると、キラリは落ち着いて…深呼吸した、向こうは大体…40mくらいか。巨大ロボ並み、ラノベの普通のドラゴンが巨大でも20m位が多い。そうなるとその2倍の大きさだ。確かに的が大きいだけなら当たるだろう。だが実際はさっきの通り、瞬間移動で後ろに回り、攻撃はひらりとかわされた。
「どうする少年?」
にやにやしているドラゴン。
「昔も言っただろ、諦めるのは自由だよ。」
僕は…確かに女の子が好きだ、女の子の衣装が好きだ!が馬鹿にされないわけじゃない!諦めろ?ふざけるな!手に力を籠め、ライトアローに力を注ぐ、
「当てる気なら広く。そして、この程度の挑発でカッカしない。」
「でも!」
「復讐するなら牙を磨け!落ち着いて息を吐き!そして地面を這い蹲って、相手を刺せ!」
あ、これはあの漫画のセリフ…。
「這い蹲ってでも刺せるなら、復讐は成立するさ!」
その言葉に僕は落ち着き、ライトアローを大きくして…師匠に撃った。それは。
「まだまだ。」
そう言うと彼女の差し出した少し小さな手みたいな前足に当たり…霧散した。
「…。」
「うん、合格だね。」
「え?」
「言ったじゃん、当てればいい。受け止められても”当てればいい”。だからこれでいい。」
そう言うと元の人間の姿に戻っていた。
「師匠。」
「おいで、お茶でも出すよ。入口から来た、初めての来客だからね。」
一緒に歩くリューネさんが何か遠い存在に見える。
「でもなんで、こんなに部屋が大きいんですか?」」
「これ、DPでさ、物買う時に大きさ選べるのよ。で私用の大きさで家具買ったのよ。で、昔の自分の部屋再現したんだ。ちょっとうれしかった。PCないのが腹立ったけど。」
「PC?]
「うん、」
「転移者?」
「強いて言うなら転生者?ほら、ダンマスに転生して、悠々自適ライフって奴、」
そう言うと、目の前にさっき言った第2試練ダンジョンと言われた場所に来る。そこは近くに来ると2階建ての洋館であり、ゴシックな佇まいだった。
「ここが来客用の部屋、」
「母上、そして勇者様、よくぞいらっしゃいました。」
「いらっさいあいしたー」
二人の…一人は幼女、一人は少女?
「コクヨウ、リア、ただ今。」
「リア?」
「うん。娘のリア。あなたよりずっとかわいい私の娘よ。」
そう言って幼女を抱え上げほおずりしている。
「娘さんいたんですね。旦那さんは?」
「いない。一応ドラゴンだから、卵生なのよ。」
「あ、卵。」
「でもまあ、母上、こんなに簡単に合格者出してもいいんで?」
「コクヨウ、いいのよ、出しても。第一目的知っていればある程度頑張ってくれれば誰でもOK出すのよ。」
「その目的って?」
「こっち側に来るなら教えてあげる、今は勇者らしく、魔王城行って、魔王倒してらっしゃい。」
「ダンマス側に?」
「うん。やるならね。私はどっちでもいいし、生活できて、楽しければどっちでもいい。」
「意外と適当なんですね?」
この部屋は貴族の洋館みたいだが、実際上の王宮より贅沢でかつ、装飾が細かかかった。
「でも移動するんでしょ?」
「まあね。」
「え?」
「うん、契約というか…こっちからなんだけど、ここで合格者出したら、魔王軍の他の幹部と中身ほぼ一緒で交換して、私はこの地を去るのよ。」
「えぇ!」
今度は師匠とお別れ!?
「私の試練はまあ、一応私が行ってる限り、成功者が出るたびに位置を変えるのよ。でないと簡単に見える。それに魔石とかは供給用ダンジョンがあるので、そっちとか今度の初心者ダンジョンで
用意ができるから、もう初心者ダンジョンはいらないのよ。」
「………。」
あまりのことに理解が追い付かない。
「魔石供給用ダンジョン?初心者ダンジョン?」
「上のあれがそう。初心者ダンジョン。」
「でもなんで閉鎖するんですか?」
「うん、まあ…あれだよ、欠点あったんだよ、実は。」
「はい?」
「形はマネできても、ドアギミックとかは作れなかったのよ、あれ。しかもトラップもコアルームって事で付けれなかった。これダメじゃんってなって、やめることにした。今度のはちゃんと展示用の
トラップとか後、魔石とか狩用のスペースとか、後解体スペースとか確保した、もう少し生活に密着した感じにするのと、もう少し広くする予定。」
「もしかして指導とか?」
「うん、してる。であれを基に魔王軍が作るみたい、よくあるよね。ダンマスの目的はDPであって。」
「人類滅亡ではない。」
「そういう事、だからそこで喜びの感情を得てもらえばいいのよ。それでもDPは増えるんだから。」
「意外と優しいマスターなんですね。」
「ラノベ多いと、ダンマスの目的ばれる事多いし、覚悟はしてるよ、そして、もしかしたらダンマスの権利得られるかもって勇者が襲ってくる可能性があることも。だから私は、訓練に余念がない。」
「魔王を倒して自分がトップになろうとは思わないんですか?」
「このくらいの実力なら、私はまだ、魔王軍最低幹部クラスよ。」
「え?」
「無論確認してある、こっそり。全然敵う気がしない。」
そこの高さにキラリは自分の目の前が一瞬暗くなったのを感じた。これで最低限度?俗にいう私は四天王の中でも最弱ってあれである。
「え?」
「魔王も同じ感じ。だから強くなりなさい。そして仲間を探しなさい。私を超える程度に。」
「師匠…。」
「お勧めは仲間探しね、この世界では勇者には従者というシステムがあるのよ。」
「従者?」
「うん、従者。勇者がお互い同意で指定した仲間は強くなる。普通の人より。場合によっては異世界召喚した人間もこれに該当する。が指定はあなたがする。そしてその仲間ともに魔王を倒すの。」
「じゃあ、リューネさんなら…。」
「私は断る、魔王軍に与する者よ。お断り。」
「どうすれば…。」
「しばらく、ここを閉めて旅をする予定。で、また気に入った子を見つければその子を試練する。というわけ。」
「異世界師匠と別れるのつらいっす。」
僕は涙を流している。こんな急にいろいろあり過ぎる。
「マスター、実は行って帰ってくるに全力出せば飛行で三日となぜ言わないんです?」
「リー!」
「え?」
その声に入ってきた男性を見ると…あ、門番さんだ。そして、ティーカップと茶菓子を持ってみんなの前に置いていく。
「三日ですか?」
「まあ、全力出して、中央突っ切ればそれで行ける。普通だと一か月かかるんだぞ。」
「えー。」
「ドラゴン舐めるんじゃないよ。ただ、やりたいことがある、実はちょっと私にしかできないことがあってね。」
リューネがハーブティを軽く口に入れる。
「え?なんです?手伝います?」
「ついでに手伝うと、称号にダンジョン関係者って文字がついて、人類の敵扱いされるけどいい?」
「え?」
「これは確認済み。君が人生を棒に振りたいならどうぞ。」
「あ、あ、うん。やめときます。」
「そろそろ帰る?私も引き継ぎ終わり次第出るよ、後…私の事しゃべったら。」
「分かってます。」
「ただし次ぎ合うときはこれ、そういえばこれ口止め料。もう一個あげるから。」
そう言うと、チョコレートの袋菓子があった。これは!甘いやつ!さっと懐に入れると…みんながほほえましく見ていた。
「さて、お帰りになったようですが、マスター。」
階段から上がり、ほくほく顔で去っていく古手川をじっとみんなで見つめていた。
「みんなはストックで待ってて。後、スケルトンのみんなお疲れ。」
「ありがとうございます。姐さん。」
「どこに行くので?」
「こうなるとサモナー亜種なんだけど・・・一応は私魔素の強い場所が分かるから、それで、インスタンスダンジョン狩り、やっとコクヨウを強くできるだけの算段が付いた。だから、次のステップだよ。今これができるのはどうも私だけ見たい。あの子はあの子で魔王に挑めばいい。私は私でやりたいことがある、だからやれることをやる。」
「やっと重い腰をあげましたな。」
「後あの部屋の部分仕切り作る必要がある。恥ずかしい。」
「そういえば私たちレベルアップしてないですよね。」
「うん、ストックにある獣に無理やり全部経験値ストック配分設定使って作った魔物に出してDPに変換。で、今までDP以外貯まらないようにしてた。リアはあれでいいから上げていいけど
他はスキルつけてそこから強化する。」