5-7 リーメ君のダンマス日記 本格的に調査隊が来た。
「この洞窟は?」
クラム村に来た兵士たちは今、謎の洞窟の前に来た。勇者が報告したところによると変な洞窟みたいなものがあったが、中に何があるかわからず、そのまま帰ってきた。との事だった。危険性はないそうなので、このまま入って様子を見よう。地下に入ると少しひんやりする…。あまり…暑くも涼しくもないな…。勇者は危険性がないのと村人がいないからとすぐ帰ったそうだが、ここがあのダンジョンという魔石なる貴重品の場所なら、かなりうまい…。そして、それに会ったことがあるというこの男にも来てもらったのだ。
「まあ、普通の洞窟にしちゃあ、確かにあのダンジョンって奴ににてまさぁ。」
「大丈夫なのか、プラーク殿?」
「いやあ、探検家の血が疼く。新しいダンジョンならきっとあのゴブリンどもが居やがるはずですぜ。」
このプラークという男はギルドでは有名な探検家で、いろんな地域を旅してきた腕利きだという。
「が注意して下せえ、ゴブリンどもはある程度知恵が回ります。なので、奇襲とかもしてきます。特に広い場所、曲がり角。そういうところには何かあると思って下せえ。」
「危険な生物なのだな…。」
「はい、時々パークボアを飼ってるようで、知恵もあります。」
「それはいい事聞いた…。」
「で、これ…下りですかねえ…。」
洞窟をしばらく進むと下に続く暗闇があった。
「ですかねえ…ゴブリンって奴らは地下を好みます。だからいるかもしれませんが…連中もっと浅い所でもいるはずなんですけどねえ…。後”跳ね水”も見ねえ。」
「跳ね水?」
「はい、液体が歩いてるような奴で跳ねるんでさあ。正式はスライムって言うですけど、奴はいないようで…。」
「行け、我々が守ってやる。」
「あ、はい。」
洞窟をしばらく降りると…なぜか赤い光が漏れてくる。正確にはこれ…火の光?
「なんかいますね・・・。」
物陰から様子をうかがうとそこにはイノシシを焼いているゴブリンたちの姿があった。が数が多いその数20.その数にプラークは振るえる顔で部隊の連中を手招きする。
「あれは?」
「あの緑のがゴブリンでさぁ、角が生えてるでしょ。そこが人間と違うんでさぁ。」
「あれか…。」
「あいつらの体内っていうんですかね、心臓の近くにあるのが魔石なんです。」
その言葉に全員に衝撃が走る。魔石である、あれのために自分たちがどれほど街を駆けずり回り、そして、苦労したことか、それを持った連中があんなにいる。
「どうします?」
「やる…お前たち、忍び寄れ…。で、俺の号令で一気に行け。」
そう言うと、全員が息を殺し、そろり、そろりと近寄る。
『ここで奇襲を選択したようですね。』
『確かに、俺は石投げるけどな。』
『この数でしょ?』
『大きさ、ほら子供みたい。』
火で木がはぜる音と。肉の焼けるにおいが充満するが
「ギギ?」
その言葉で周囲を見渡すゴブリン。それを見た指揮官が号令をかける。
「突撃―!」
それとともに15名の兵士たちはいっせいに襲い掛かる。そこから先は蹂躙だった。武器と防具で身を固めた兵士と腰蓑位しかなく、何も持たないゴブリン。その差は歴然だった。十数分もしない
うちにゴブリンたちは全滅した。そしてそのまま兵士たちはゴブリンの体を引き裂き、魔石を取り出していく。その眼は欲にまみれていた。これが金貨一枚。これが金貨一枚なのだ。
「お前ら!大丈夫か!
「はい!隊長!」
その声は活気に満ちていた。
「ここからが、ダンジョンかダンジョンでないのかの判別なんで…。」
「何?」
「よく言うダンジョンで死亡するやつの半分以上はここで、奥に行って死ぬんでさぁ。ダンジョンって奴は”なぜかモンスターが増える”んです。」
「何!」
「で進んで背後から襲われたりするんで敵を倒したからと言って油断してはいけません。ダンジョンは判別方法も簡単でしばらくたってから又はここで待って次の奴が来ればダンジョン、来ないなら
洞窟でさぁ。」
『おおー凄い画期的な選別法。』
『ですけどこれ、固定モンスターには効きませんよね。』
『けどうちには効くぜ。』
「そ、そうなのか?」
兵士たちがざわつき始める。
「はい、パルミダークだと、時間制限あるんでみんなやりませんが、沸き待ちって奴でさぁ。これで稼げるんでしばらく待つんさあ、明かりあるなら寄って来るんで。」
「なら、火を中心に陣形を組め、お前ら、もっと稼げるぞ!」
「おおー!」
「ただ、一つだけ忠告しやす。」
「何だ?」
「ダンジョンでは欲かき過ぎて死んだ奴いっぱいいます。ほどほどで引き揚げる。それが稼ぎのコツでさぁ。」
「わ、分かった。」
その言葉に隊長は慌ててうなづくのだった。
『どうする?』
『せっかくだから、大量に魔石持って行ってもらおうよ。ガルッチ、4階の子たち誘導できる?』
『はい、可能です。とりあえず、あまり出し過ぎると来てもらえない可能性があるので、誘い水で一団のみでやっておきます。』
『じゃあ、頑張ってもらおう。ネルさんに頼まれるもんね。』
しばらくは音もなく…静寂だった。だが兵士たちは警戒の手を緩めなかった。”ダンジョンなら敵が襲ってくる”そう言われて怖くない奴はいなかった。がその時だった。どこからともなく大量に
歩く音がするのだ。その音に全員が立ち上がる。
「確定か?」
「いや、ちょっと音が遠すぎます。大方下があって、そこから来てますね。こりゃあまずいかもしれねぇですぜ、」
「何だ?」
「下からは数が多い、で、ここがダンジョンなら、横からも来ます。撤退した方が…。」
「いや、分からん、もう少し待つ!」
「ギァァァガァァ!」
その声が聞こえ、全員が振り返るとそこには今度はナイフを持ったゴブリンが人に襲い掛かって来ていて、覆いかぶされていた。
「お前ら!」
そう言うと慌てて数人が引きはがしに来るがそれがなかなか剥がれなかった。そして、雑踏がここまで聞こえるようになっていた。その音に全員が混乱していた。
「お前ら!隊列崩すな!出口を押さえろ!場合によっては撤退する!まずは側にいる奴を剥がせ!
「は!」
そう言うとゴブリンを無理やり引きはがし、そのまま剣を指し、心臓に一撃を加えた。
「ここはダンジョンだな…。が、このままでは全滅しかねない!お前ら、その石、換金しに行くぞ!撤退準備!で、下からの連中を迎え撃つ!」
「撤退するんで?」
「大方これ以上は武器が持たん。」
良く勘違いされてるかもしれないが、昔において武器は基本”数回使えればいい使い捨て”なのだ。なので、指揮官は戦闘回数で追加の戦力を判断する。ここまでの戦闘回数は2回しかも長期戦闘に耐えれる打撃武器を持って来ていない。剣は殺傷力は高いが”使用回数は少ない”が特徴でもある。だからこそ、長期戦を嫌ったのだ。
「了解、賢明な隊長でよかった、俺も生きて帰れる。」
「ふん。」
そして雑踏は部屋にたどり着き…それを見た兵士たちは恐怖した。先ほどまでのゴブリンは”未武装”だった。が今回のゴブリンは棍棒などを装備していた。
「お前ら気を引き締めろ!戦闘開始!」
その言葉で兵士たちは奮起したが…しばらく経つうちに、一人、二人とけが人が増えその戦闘は一時間にも及んだ。が最終的には息も絶え絶えではあるがどうにか全滅させることができた。そこは血まみれた戦場であり、そこは悲惨だった。
「勝った。」
「ですな…。」
「引き上げるぞ…。」
全員が黙々と魔石を取り出すと。傷付いた同僚を抱え、彼らは去っていった。それはモートリア初のダンジョン攻略の結果でもあった。
『でどれくらい入ったのDP?』
『はい、大体消費が2000DPに対して25000DPの儲けです。かなりお得ですね。』
やっと普通にダンマス物になったぞ…長かった。