5-1 エクトネーゼ王の章 ギルドマスターカラムとの会談
ここから新章ですが、しばらくは視点は他人描写です。
「おおー勇者よ。」
あれ、光に包まれたと思ったら…ここは?
「勇者召喚に成功したぞ!」
な、なんだ?変な爺さんと…。後…ドレス来た女の人…ここはどこだ?周囲のじいさんたちも手を叩いて喜んでいる。
「勇者よ、よく来た。わが城へ。私はモートリア国、国王ヘーゼルケイン。君たち勇者を歓迎する。」
これもしかして異世界召喚って奴か?やったー!これはこれは俺は!
「こうしてみると、確かに美しい黒の髪、勇者の証ですわ」
王様で隣ならきっとあれが王女。美人だ!
「まずは我々の事情で召喚してしまったことはすまない。が、我々にも切羽詰まった事情があるのだまずはこちらへ。」
そう言うと、王様たちは奥の部屋へ僕たちを連れて行った。」
「勇者を召喚した?あんな金をかかるやつを?」
カラムは報告書を見て、怒りでその報告書を握りつぶした。
「ならば…。できれば我が国も対抗できるよう、金品の寄付をお願いしたい。」
それは エルシュウッドを訪れていた(本当は食事目当て)エクトネーゼ公国 公王エムントがギルドマスターとの茶会で聞いた言葉だった。
「言うと思った。けどな、無理やねん。モートリアが勇者呼ぶなんて思わなかった。」
「秘術自体はうちにもある。し、今日相談しに来たの神託話もある。で、神像がここにあるのだろう。」
「ああ、あのバカに言われて作ったばっかや。」
「あれは狂信者の類だと思うが、実際教会を立ち上げたのだろう。」
「ああ、あんなんやらんでもええやん。神様の像作って、ネル様の像作って、お参りとか。」
エルフたち、いやハイエルフたちは全員ネルという少女を神格化している。私も会ったことがある、今は勇者の為に一線を引いたがそれまでのエルフの族長だった。彼女は基本無言であり、会話
しにくいが、このカラム・エルシュウッドは、話がうまく、また戦闘においても強い。そして何より、このエルシュウッドを治める5人姉弟の一人である、その彼女が言うバカとはギルドが誇る
エース部隊”3羽ガラス”という…ネルの狂信者達である。見た感じ普通の女の子だが、実際苛烈であり、かなり言動は下の者に近い。がそのせいもあってこのエルシュウッドでは人気を誇る。
但し全員”ネル”の事に関しては私が見た感じ”狂信者”を通り越している。私ならきっとこの話は予算の無駄だ、作るべきではないという。が彼らからしたら。
「そんなんしなくても、ネル様はうちらの心の中におる。だから、わざわざバカみたいな像とか建てる必要ないねん。」
と、こうなる。予想はできていた。私が前に遊びに来るときに、あの勇者の情報を得ようと聞いたときには、藪蛇つついたと、後悔したものだ。
「でもまあ、忠誠心がなせる技だろ?」
「分かっとるけど。」
「でもあの無姿の像が本当に神の像なのかね?」
その像とは、作っているときに大きく手を天に掲げる神の像とそれに跪き、首を垂れるネル少女の像だ。後横に勇者含め、あとレリーフに人々が書かれた部屋ができていた。
「あれは、実は魔力とかガンガン使って、書こうとしたんよ、だけどあそこまでしかできんかった。鑑定では神様の像が成立もしてる。だからあれでいいってなったんや。」
どうも神様の姿の像だけでも相当な魔力を必要とするらしい。
「だから、微妙やん。あっと、勇者や、このままだとあんたらにも、ギルドにも迷惑かかる、」
勇者は現在この世界において一瞬で街を滅ぼし数万の軍隊を瞬殺する化け物である。その分召喚も凄い費用が掛かる。
「だな、できれば借金で構わない、頼めるか?いま国民を痛めつければ徴税さえ不可能になる。」
そう、どうにか復興し始めてきた時に重税をかけたのではもはや国の形もダメになるだろう。
「で、パルミダークん所で出たダンジョン言うけったいな物あるやん、あそこの不思議なやつらから出る石があるんよ。」
それは私が2回目に来た時に聞いた、謎の洞窟の話か?
「あそこ後で調べたら、けったいな骨がおるんよ。で、その周りの奴ら、こんなん石落とすねん。」
そう言うと紫色のきらきら濁って輝く石を取り出した。この前貰った魔道具の鑑定のモノクルで、石を見てみる。
魔石 TipS:魔素が結晶化した石。様々な色や大きさがあり価値は大きさがあり、色が透明に近いほど、又は大きいほど価値がある。一説には魔法を使うときに集まった淀みが力を伴ったとも言われている これを砕くと魔力の量が多く混ぜることで、魔素を体内に入れることができる、ただし安全性は保障しない。
「これか、確かに、召喚に使う物の条件が”魔力ある物”だったから、これも含まれるな。貴重なのか?」
「それが、その洞窟に限り無制限で沸くねん。だから旨く行ったらやで。うまくいったら、これ使えば勇者召喚簡単に行くんちゃうか?」
「これをあるだけ買い取れないか?」
「まあ、モートリアの馬鹿がやらかさないなら、もう少し研究したかったし、しゃーないわ。知り合いのエルフの研究者にそっち行かせて、今ある分もってかせるわ。今は安いけど。」
「いくらだ?」
「今は少ないから、一金貨でどうや?増えるんなら、また考え直すきに。手持ち600や。で魔術ギルドのトップ持って行くから、どれくらいで呼べたか、情報もちょうだい。」
「分かった。足りない場合は?」
「族長に頭下げて、同席させる。」
「それは安心だ。」
エルシュウッドのトップは彼女からすればファミールと呼ぶので、彼女らにとっての”族長”とはネルの事を指す。一線を引いてさえまだ、指揮権を残すとは。
「あと、パルミダークがしゃしゃり出てきたら、値上がりもあるやで、覚えておいてや。」
「分かった。私はまだ君とこの新商品味見会をしたいからね。」
「それはおおきに。」
そう笑う彼女は決して…一筋縄ではいかない老獪さを感じさせていた。ただ、彼女から言わせれば魔石はDPで生み出せる石ころに過ぎない事を。




