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はじめてのまおう~《勇者に俺ツエーさせるRPG》   作者: どたぬき(仮)
二人のダンジョンマスターの章
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外伝 教授の章 ダンジョンの秘密

「ここがしょっぱい水の池。」

「ここがか…。」

 私からすれば、ここほど怪しい場所はない。そう、あの祝賀会で出され、王侯貴族を席巻した塩”魔塩”鑑定したそこにダンジョンという文字を見た。

「ここがダンジョンの疑いがあるのか?」

「ダンジョンって何?」

 ネルは不思議そうに私を見る。時々桶を持ったエルフがこの水を汲みに来る。

「さて、ここなら君と一対一で会話できる。君の正体を知りたい。」

 ネルは…動揺さえしてないな。

「私はエルフの族長、それ以下でもそれ以上でもない。」

「なら言い方を買えよう。君はミーアという女性を知っているか?」

「ミーア?」

「ああ、さっき自己紹介を受けたエルフの名前にはなかった。だからエルフではないはずだ。」

 その言葉にしばらく周囲に静寂が走る。

「………。知らない。」

「嘘はよくない、親しいのだろう?」

「なんでそう思った?」

「タンジョンだよ。その彼女が作った、未知の文明であるはずの下着を君はつけている。」

「見たの?」

「鑑定はできた。私はこう見えて目がよくてねえ。」

「下着は見せていないし、目の前では着替えていないはず。」

「それは墓穴だぞ。まあ、私の雇い主をいじめる気はない。信頼のためだ、種明かしをしよう。」

 ネルは杖を構えている。

「その白い服、作る時は織機を使いたまえ、その縫製だと隙間がちょっと空いている。その隙間から、下着を鑑定したのだよ。そして、この世界の女性は、下着の文化を知らない。」

「なに?}

 ネルは自分の服を食い入るように見つめているが、分からないようだ。それはそうだ、隙間にしてほつれ一つ程度の穴、数ミリの幅だ。

「そう、これは、軍隊編成時に聞いたのだよ。部隊で力を出すのに、下着の話は欲しかったからな。そして、そこの鑑定にダンジョンの文字と、ミーア、アラクネという文字があった。これはモンスターなのだろう。それはこの世界にいないはずの物。君しか…その疑いがある超常者はいない。そして、君はトップではない。」

「なんで!」

「顔、性格、そして、いくつも気づかれないようにカマかけをしていた。それらが、君の本当の嗜好とやってる事の違和感を呼んだ。すなわち…君より上がいる。魔王の可能性が高いとみてる。」

「なら、」

 ネルの言葉の先は予想できる。あえて遮る。

「あの女史は、聞いた話”汚れた勇者”であり魔王ではない。隣にいた賢者も、あの聖女みたいな女も魔王ではない。とすればどこかに本物の魔王がいる。…だろ。私は君と君の上と対話を望む。

戦いをするつもりはない。今のレベルではきっと君に私は勝てないからな。クックック。」

 しばらく静寂が包む。その絶句こそが正解を証明してた。

「さすがS級勇者。」

 メルは蒼白になり長も、言葉のほうを見る、私は見る必要もないと思った。目を離せば奴が襲ってくる可能性が高い。

「君は?」」

「私はハーリス。この事態を収拾に来た。連れてくる。」

「家に?」

「うん。」

 お互い通じてるようだな…。

「こっちだ。S級勇者よ。」

 いつの間にか洞窟の入り口の横に…木の扉がある。ハーリスという女に連れられ…はいるとそこは…緑あふれる楽園だった。

「ようこそ。ネルの園へ。マスターの最初の贈り物にして我らへの慈愛に。」

「君の名が入った…楽園か。」

 しばらく歩くとそこには野点にテーブルがあった。向こうにはログハウスがあるな…結構大きいな…。

「ナオ、連れてきた。私が呼んだ。けど。」

「ほう?」

「切り出すのまでは分かってた。あそこで鑑定して帰ってもらうつもりだった。がここに来させるのは予定外、」

 お互いタヌキだな…。そして横に侍らせてるのはあの時の女か。魔王と呼ばれていたな。そして中央に座る少年、私の今よりは年が言っているが眼は…わかるな…。

「君は私のステータスは見たのかね?そうなら、自己紹介の手間が省ける。」

 私は空いた椅子に座り腕を組む、ここで弱気を見せれば終わりだ。

「一つ聞いていいかい?」

 妙に優しい声だな?

「TASさん?」

「いや、それもどきを機械無しでやる時があるが、それは検証時だ。おっと・・・これを知っているって事は同胞でいいのかな?」

「そうなる。僕は高橋ナオ、ダンジョンマスターだよ。」

 ほほう、口元が勝手ににやけてくるね。思ったより大物だな。大抵世に出ることのない主人公枠。大方3人が勇者でこいつが裏からバックアップだろう。そしてなぜか少年の目がキラキラ

してる、これは…憧れの目か?

「ナオ?タスとは?」

 エレノアは不思議そうに私を見る、本来はあのくらい優しいのだな…。

「私から説明しよう、そうでないと私が金髪幼女にさせられてしまう、」

「何それ?」

「ナオの世界にはゲームというものがあった。その中でも超人的なプレイする者たちがいたでいいかな、理解しにくいと思う。で、私は元々はゲームに命を捧げてきた、求道者だ。」

「それは凄い、」

「だから、繊維の隙間をぬって鑑定も行うし、}

「そういえば、その二桁のステータスで、あの長谷川さんと対等でしたものね。ステータスは飾りと言われてもおかしくない。」

「私から言わせればレベルというのは優遇策であり、単なる枷だ。最初の人間はレベルなぞなくても、魔王を倒してきた。己の最初の武器一個でな。その頃からの勇者とも言えよう。」

「なんかすごい。」

 ネルもさすがに感心している。

「だから見破った。」

「ああ、そこまでは分かったのだが、そこから先は君たちをつつかないと進まないと判断した。というだけだ。」

 隣から、メイド服の女性がティーカップに入ったお茶を持ってくる。茶菓子もついてるな。食べないがな…。

「さすがS級。」

「で僕たちに何を望む?」

「君たちの目的だ、俗にいうダンジョンマスターは2タイプ、覇権を狙うか、隠居生活だ。君はどちらかね?」

「そうだね…ちょっと聞いてくれると嬉しい。僕はこの世界に来た時、開拓村についた。そこで、僕たちは盗賊に殺されかけ、その次に避難した里ではみんな貧しい生活をしていた。みんなの思い描いたファンタジーではない世界。このままだと、どんなにしても快適な生活ではない。」

「貧しく、それでいてつつましいのも美徳ではないのか?」

「けど、その為に開拓村の人間や、一般人が苦しんで死ぬのは違う。そして僕にはそれを助ける力がある。」

「確かに。統治者においても、そこを見る者はいない。それで理解してくれると嬉しい。」

「一つ聞く…。…本当に君は。それだけかね?」

「悪い?」

「いや、ネルがやった策略があまりに悪辣でね。これを狙うだけの人間なら、と思っただけだ。」

「え?」

 少年は口が開いたままだった。

「悪辣?」

 ネルの顔もおかしいという顔だ。周囲の部下たちも一緒だ。あの作戦が善人なら極めて愚かで陳腐だぞ。

「えっと、気が付いてない?」

「なんでしょう?」

 全員がも理解できないという顔してるな…。これ、もしかして、全員気が付いてないだけ?これはやらかしたのか!私とあろうものが!なんという愚劣!わが身が恥ずかしい!

「いいから正座だ!一から叩き直してやる!」

 それから2時間教授の独演会が始まった。それを傍で聞いていたミーアはあまりの専門用語の束にいるだけで混乱したと後でみんなに言っていた。

「君たち、やらかすにしても、もっともっと手立てや、根回しをきっちりし給え、相手が無知で助かってるだけだ!」

 全員の顔がやつれいているな、わが友は4時間は付き合ったというのに、この程度でへばるとは…。

「すいません。」

「いや良いのだよ。君たちも一生懸命だったのは伝わった。さて、私はどうしたらいいのか、できれば後、聞きたいことがあれば相談に乗ろう。そしていま一度聞く。」

「何?」

「本当に…いや本気で、世界の平和と繁栄を望むのだな?」

「僕は僕と同じように負け続けた、被害者を見たくない、だからそのために頑張る。」

「一つ言っておく、ゲーマーは”10万回負けて10の成功を拾い、100の成功を持ってして、1の大成功を生む。”私の人生はその全てにおいて負け続けた”負けることに私は慣れているの

だよ。それでも狂おしいほどにゲームが好きだ。私のすべてである。君は負けても好きでいられるかね?」

「負け続けた…。」

「君は大方見た目通りに若い。だから経験がないだけだ。漫然とした勝ちやヌルゲーに何の意味がある?私にとって”意味ある敗北”の方がずっと…ずっと価値がある。私は”世界最強”を目にし狂った。そんな敗者だと今でも思ってる。君に、これからずっと”負け続ける”覚悟はあるか?」

「やりましょう。それに意味がなくとも…僕は負けてても這ってでも。”前に行く”。」

 こうして、ショタ”教授”はこのダンジョンの半分仲間になることになったのだ…。

「あの称号の意味は何だったの?例えばほぼ人力TASは?本来は0.0001秒単位で行う処理に介入し、ボタンを押すとかして、機械を超えるという意味だな…実際数回やった。」

「0.0001秒??スキルなしで?」

「そうなる。」

「だよなー憧れちゃうな-。」

「そういえば、人類卒業とか怪しいのがいっぱいあった。ステータスに出ない強さ…。私たち頑張れば…。」

「私は人生の9割以上を捧げてきた。その一割以下でも触れるというのは、相手に対して不律儀だろう、そこまで私はのめり込んだ。」

「S級勇者。」

「”教授”と呼びたまえ。レディ。」

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