11-34 東雲恵の魔界探訪 スパイ行動の9割は相手方の部下で動きます
魔王軍会議で放置が決定し、ケイたちはゆっくりとした日々を送っていた。ナギサは戦力を蓄え、後の者は普段通り、ではあるが、その中で、ケイは地味にその平穏な流れの中にやらしい視線を感じていた。がその意味を系は理解しかねていた。
「という訳なの。」
そのせいもあって基本大木戸ダンジョンに入り浸りとなったケイたちではある。
「それって、あれじゃないですか?本当はケイさんに負けてもらって、私が負けたから、それに勝ったあなた方に…。って事じゃ?」
大木戸がそういうのもわかる、ここ一か月連日バトルはしているものの、こっちが見ても手抜きだとわかるくらいどんどん防衛は手を抜き、攻撃に援護が減らされる。ついでにカラムはなぜか向こうでヨシカゲにお酌をしに行ったりと接待をしている、エルフには珍しい肉感のある体つきの為、本人の口調と残念さが無ければ実際美人で、それでいて人懐っこい顔である。見事愛人の地位を手に入れつつある。が、大木戸からすれば、こっちで見るカラムの顔はまさに”狂信者”そのために文字通り身をも捨てる思考なので、それを普通思考に誘導するケイを見ていると、どっちが上司なのか判別できない。
「そんな魅力的?」
いうケイたち3人ではあるが、お姉さん体形のシーアはともかく、あとの二人はそこまででもない、一般的、中庸的という表現が似合う、
「ここ、女の子少ないんですよ。聞いた話だと、勇者大陸は女性が多いらしくて…。で勇者がハーレムじゃないですか。」
実際男女比が変わるほどの大戦があったためではあるが、実際男性が少なくそれだけで引く手あまたであり女性に生きづらい環境でもある、その為リンシュメルトはともかくエクトネーゼにおいては奴隷売買制度の復活とそれに伴うザガートン大陸でも”孤児”の買い付けに打診が来るほどだ。それ位田舎では男が少ない、
「…まあ…ね。」
ケイが苦笑いする。その原因の一端が自分…ではないもののそれに近しい人間であるので。
「でも恋愛とか?」
「それが、この体になって以来、恋愛対象って言うか母星はあるんだけど、それとタッチがつながらないというか、ね?」
「私も一緒にいて霧を這わせて触っていたい思いはあるが、そこまでで…。」
「愛する人と一緒の空気が吸えば満足だよ。」
3人の一応美少女が答える。実際リビングアーマーでもあるケイ、霧が本体で、生殖する肉体がないシーア、元々樹木でそう言う歓声に疎い優では性への意欲もわかないらしい。
「空気ですか?匂いフェチ?」
「え?」
3人のドン引きした顔が大木戸を見つめる。
「そんなつもりないですよ。それに言ったのそっちじゃないですか。l
「まあねぇ。」
下手な口笛を吹いて誤魔化す優。
「・・・ん?」
「どうしました?」
口笛が急に止まったため、全員が見つめる。
「事態が動きそう。どうも…三日後に勇者召喚を行うみたい。ザガートンで秘密裏に召喚場所を設置。上限を下回っているため、今回は成功する見込み。で、この情報を複数で入手された可能性あり。」
「え?」
大木戸は周囲の緊迫した空気についていけそうになかった。
「勇者召喚って?」
「勇者って召喚されるんだけど、儀式して、必要な魔力分積めば上限枠いっぱいまで可能なのよ、但し基本勇者召喚は国家間の戦力比になるので、モートリア亡き後基本。成功しなかった。」
ケイが説明するが、優は不自然な範囲で頷く。
「で、今回は儀式にギルドが参加。ノウハウを伝授する。但しそれに伴うダンマスが発生する可能性あり、発生可能性がある地域を検出。警戒されたし…。」
「…亜人同盟ってそんなことやるんですね。」
ダンマスにとってギルドとは”亜人同盟”でもある。最大ダンマス集団にして人間の味方である、その人間側出先機関。それがギルドだと思われていた。
「ただ基本こっちに関係ないけど…。」
「あ…。」
先日の話で、どうも月下側に亜人とつながるスパイダンマスがいる、という話をこちらでリークしていた。無論これも情報が伝わっているだろう。そして勇者総数自体は減少に転じていた。すなわち貴重な勇者戦力である、それを相手に取らせる話はない。




