11-30 東雲恵の魔界探訪 軽くマッチポンプ
その日、大木戸ダンジョンの大気部屋に戻ると、3人+1名は疲れ切った顔で座っていた。
「お疲れさまでした。」
「…いきなりダンジョンバトルとかあるの?」
「一応戦闘勝利数と、後ダンジョンバトル限定の勝利も相当数欲しいらしく、前のトップの月光さんはそれこそ、一日10件近いダンジョンバトルをしたそうです。
しかも単独で。今のヨシカゲさんの体勢になって頻度が下がって…。」
「…ヤバい。」
「だな。」
早稲ちゃん…ではなく早音の格好をした”シーア”も悩んだ。
「目立ちすぎてもダメなのと、ある程度成績が出ないとまずい、で、相手は?」
「一応、見学通知出てますね…第24位の魔王国の茨木さんという炎系ダンジョンマスターですね。で、防衛は僕たちがやりますが攻撃は…。」
ダンジョンバトルにおいて攻撃はリスクが一番高い。ユニークはルール改正で魔石が回収され、蘇生可能になったが。一般はそうではない。当然DPは黒字になりやすいので大丈夫だが、戦闘経験や練度等のステータスに見えない物はどうしようもなかった。その為数で押すか使い捨ての大ゴマしか手が出ない。そこで出番があるのが。勇者という訳だ。練度が高く相手側にしても戦闘を相手にしてもらうとDPが稼げる、その為、いるだけで、相手に歓迎されやすい。但しダンジョンバトルでは宝物はない。
「どうする?」
「私は、魔法を使う。」
「私も応援だよー。」
シーアは早稲ちゃんの顔のまま、真顔で言った。そして僧侶京奈優ちゃんはばれないためにも戦闘はさせれない。
「そうなんですか、でもこの茨木って人確かうちらと戦闘してこっちが負け越す相手なので…大方…。」
「…私には一応ダンマスの知識もあるんだよ。相手の強さくらいわかるよ。あいつも…。」
「殺されそうになったところを助けて、という程度にキツイ相手を選んだ…ですかね…。」
「だよね…。」
「こっちが何も知らないと思って意気揚々と相手と戦い、負けそうになったら助けてやるから従え…。だよね。」
「そう言う相手に見えます。」
「勝っても負けても問題あるよね…。」
実際の実力から言えばリューネ相手にさえ互角かそれ以上である彼女からしたら基本どのダンジョンが来ても圧勝可能だ。最悪エレノアという増援も呼べる。が勝てば躍起になるか付け上がらせる。負ければ無論言った通りになりかねない、弱ったところをという事さえありうる。
「勝てるんですか?…ああ、いや」
あの子あの言葉を思い出したんだろう。少し思いとどまった。
「勝つだけなら何んとなかる。どんな勝ち方もできる。けど相手に手の内は見せたくないし、ぎりぎりでこっちが勝つというのは苦手。」
優の顔も暗い。
「だな…見る側に勇者が多くて手抜きが見破られやすいというのもな…。」
こういう事になるとは思わない彼女たちにとって、これはある意味キツイ戦闘だった。
「…ふむ、聞かせてもらっただわさ。」
悩んだ挙句にハーリスに相談したケイが言われ、大木戸に偽装を頼み、出会ったのが魔王軍のライバルとされる”千鳥万花”のトップ。鳥海であった。
「まあ、あの連中の下克上は好きじゃないだわさ。分かっただわさ。偽装工作でいいだわさ?井原とコアにはハーリスには逆らうなと言明されているだわさ。」
「…難しいかもしれんが。」
一応偽装工作で”鎧騎士”の姿で会見に臨むが…なぜ鳥海なのか?そのことが理解できなかった。
「…ちょっと待つだわさ、セッティング完了だわさ。聞かせて欲しい…だそうだわさ。」
軽く数回、タブレットを叩くとこともなさそうにタブレットを見つめていた。
「…何?」
しばらくすると隣の部屋から出てきたのは一人の黒い肌のオールバックの男。魔王国トップ黒木と、その脇でぼさぼさの髪の毛に…赤のシャツが似合う男の姿だ。
「…確かに不審なバトルの話が来ていて、対応に援軍を出すか検討していた。」
流石にこの速さの対応に、内心ケイたちは驚いていた。ライバルと聞いていたため、こういう呼び出しになると思わなかったからだ。日本とかで外交の話をするに敵対国同士は出会うのでさえ何か月かかることも多い。
「あのヨシカゲって奴がなんか調子乗ってたからよぉ。」
「黙れ…こいつは?」
「ああ、対戦予定の”鎧騎士”だわさ。俗にいう”S級冒険者”だわさ。」
「何だそれは?」
「普通考えてみるだわさ。あんな勇者がいて、教授なる勇者一人で抑えれるわけないだわさ。ランク3位のリューネが、ギルドに偽装で入って名乗っていたのが”S級冒険者”だわさ。そして、それは複数いるのは情報で分かっていただわさ。そのうちの一人がこの…”鎧騎士”だわさ。」
「教授、龍姫、そして鎧騎士…。」
「じゃ、こいつが…。」
「…ただ、あの…。」
「あのヨシカゲの馬鹿を付け上がらせるわけにいかないだわさ。かといって負けるのも嫌だわさ。どうも自分の良い所を魅せるために防衛だけは自分でやると言っているらしいだわさ。」
鳥海の口の速さに、ケイはじっと…いや、言葉を挟むことも出来なかった。
「はぁ?防御に全力なら…馬鹿じゃねえか?」
「…頼みたいのは私がいる時にだけ、…偽装映像を流して、内部中継を切って欲しい。画像はこちらで用意する。」
「そんな…。」
どなろうとする茨木を黒木が抑える。
「実力は見せて欲しい。そうすれば…どうやって誤魔化すか知らんが。」
「…そこはコアが行う、大丈夫だ。…実力か…。…支払いをしておく。」
そう言うと、おもむろにケイはダンジョンのの床を強く踏みしめた。
「いきなり!}
全員が、振動で倒れ…よく見ると傷さえつかないはずのダンジョンの床が…ひび割れていた。鎧騎士自身は少し動いただけ…のように見えた。
「が…これ…。」
そう、一応魔王国においても、千鳥万花においても、ダンジョンの壁の厚さは検査してあり、特に井原はダンジョンの壁の加工等を行うスペシャリストでありその情報を持つ鳥海にとって…何をやってさえ壊れない”不壊設定”の床は。割れないはずだった。割れてしまえばダンジョンを下に”掘る”という攻略法が可能になるためだ。
「…これでいいか?」
あまりの事に全員が押し黙…いや、唖然としていた。
「井原に言われていただわさ。ハーリスの関係者全員怖いだわさ。舐めていただわさ。黒木。」
「分かった。映像とかよくわからないが…茨木。」
「わかったよ。・・・あとは?」
「…入ったら部隊だけ送ればいい、映像にはそれなりの戦闘の映像が流れる。報酬込みでDPの支払処理は行った。後はこちらで仕上げる。」
「あんた…ダンジョン関係者なのか?」
茨木が睨む。
「…黙秘する。後は頼んだ。また、そちらに戦闘を挑む際は連絡していいか?」
「…鎧騎士名義で連絡を入れれば構わん。殺されたくないからな…。」
黒木がたどたどしく答える。
「…では、失礼する。」
「あれは何だ!」
「アチシも知らないだわさ!あんな怖いならクッション置くだわさ!」
「いやいや。」
「それにダンジョンバトルの映像加工?相手はコアだぞ?どうやってやるんだよ?」
「知らないだわさ!会わせろって言われて、会わせただわさ!」




