10-11 三日月ナギサ VS 拳の勇者
刀術の攻撃の基本は攻撃ではなくカウンターである、カウンターを狙い一撃を打ち込むのだが、相手は拳メインの格闘術である拳闘士である。これの売りは攻撃全部が連携する連携攻撃にある。闇の魔法も連携するがそれらの組み合わせで攻撃するのが拳のメインだった。但しここで問題があるのはコクヨウの身長だった、少し低めの少女の体のコクヨウに対し、大人の体であるナギサは。簡単に懐に入られてしまうのだ。しかも腕力等の能力は向こうが高い、本来あるはずの欠点が向こうに無いのだ。その分は刀に不利である。その為、まずは見に徹し、刀をわざと腕の張りの中に置く、インファイトに対応すべく構える。が、コクヨウは動かなかった。
「行きます。遠当て!」
そう言うと自分の体に衝撃が走る。彼女の拳はまるで重く…そして…。ぎりぎりで防御したが、その勢いは殺しきれないが!
「反し3撃!」
一撃目を弾く、本来はこの刀技は1撃目を弾き、後の2発を相手の胴に打ち込む刀技で、払い抜けを連携させる用の物だ。だが連続攻撃が来ると思って構えた…。と思う前にコクヨウがもう目の前にいた。
「油断ですよ。」
そのまま腹に入れ込もうとするのを体をひねり、2段目の攻撃で弾く。これが彼女のオリジナルの部分であり、3発までは弾いて…次の瞬間に瞬歩を発動し、3発目の払い抜けを狙うがそこを相手の瞬歩で抜けられる。
「私が生きているだけでも奇跡的だな…。」
「流石、剣士殿。この連携をかわすとは…。」
今までの戦闘とは一線を画す強敵である、全然目が追い付いていない。しかも硬さも全然違う…。
「ここまでの強敵、魔王を前にしてさえない…。」
「確か、画像では確認してあります。そして、担当の魔王を知っています。」
「それは!」
そう、それこそが、三日月部隊がダンマスになった後、人類を愛するべく動くはずの彼らが、反亜人同盟になったきっかけである。それはダンマスとして三日月月光が初めてダンマスSNSのランキングを見た時そこにあったトップが…。魔王軍であり、またそのトップが彼が尊敬してやまない、救国の英雄”ネル”だったからである。そして、そのことが彼を、彼らを真の魔王討伐のため、突き動かすこととなった。亜人同盟は元魔王軍であり、人類を支援すると言いつつも、実際はネルの作った者を否定するどころか、肯定し、組み入れたのだ。そこに月光は怒り復讐を決意したのだ。自分たちの魔王討伐に意味はない。あの名誉に意味はない。そう言われているようだった。その為、魔人主義として…他のダンマスと力を合わせ、偽善たる亜人同盟を倒すそれが目的だった。そして真の人類史上主義を支えるものとして、自分たちがいる。そう考えていた。実際ダンマスのレベルもみんなで合わせて10にして全員の情報を統合していた。がその中において、離脱した旧魔王軍のデータのみが集まらなかったのだ。その中で行われると聞いた魔王バトルに彼らは、1ッか月間、死に物狂いで訓練し、挑んだはずなのだ
「ふふ・・・あなたたちは筋がいい。私たちを満たす強い魂です。」
「貴様!あの魔王の事を知っているのか!」
「私も元は魔王軍。知っていますよ、もう一度戦いたいのですか?」
その言葉にナギサは止まる。
「あなたもこのバトルで気が付いているのでしょう?実はあの魔王、復活していると…。」
「それは…。}
その言葉にダンジョンの人間全体が止まる。
「実はあなたには私と同じ土俵に上がる可能性があるのですよ。今は足りませんが…。」
「勇者の…上…。」
ナギサがつばを飲み込む。
「可能性があるだけです。が、この戦闘も、強いものと挑み、強さを磨けばいずれ、たどり着くでしょうね。ただその時は私はもっと強くなってるでしょう。が、この世界ステータスだけがすべて
ではありません。母上は実際1/1000の差を前に負けたこともあります。また、レベル差220超えて、レベル1に負けたこともあります。ので私はあなたがどんなにレベル差があろうが、」
改めてコクヨウは低く体を構える。
「手加減はしません!」
そう言うと一気にコクヨウが懐に飛び込んでくる。そしてそれを見て、慌てて飛びのく、その髪の毛を…連続で撃ち込まれた光速の拳が通り抜ける。
「ん!」
「危なかったですね、さっきと同じ回避をしていたら、もう終わってました。」
そのまま着地すると返す刀で瞬歩。そして一気に払い抜けを・・あえてコクヨウは胴体で受ける。服が少し破け…。そのまま彼女を…吹き飛ばなかった。吹き飛ばすほどの勢いをつけたはずなのに、鉄の塊をぶん殴る感じの音が響き…そのまま止まってしまった。が、元の経験で、そのまま抜けて一気に距離を離す。が話した先にコクヨウは追いつき、拳を振りかぶるが、そこは
「転閃!」
その言葉でその足に負担をかけ身体をひねり、ぎりぎりで拳を刃物でいなし…。そのままもう一度胴を切り裂く…がまたもダメージは無い様だった。
「化け物か!」
「あなたの方ですよ、それは。」
コクヨウは落ち着いてい立ち上がる。
「この母上に新調してもらった、最高位の防具を貫き切り裂く、2度もです。まあ直りますがね、MP注げば。」
そう言うと服は素っと元の形に戻っていった。
「が、これを貫くとは流石魔王。私もこれ以上の本気を出さないといけません。」
「まだ上があるの?」
ナギサはもう手一杯という感じだった。最初から全力で戦っていた、はずだった。
「母上の技を使います。拳だけが私の技ではありません。ただ本当の事を言えば、もう少し高さがないと…私の特徴であるスピードが生かせないんですよ。なので、あなたの攻撃を喰らうのを覚悟で攻撃しましょう。」
コクヨウは天井を見つめる、高さは10mであり、人間にはちょうどいい高さだがコクヨウには低すぎて、戦闘にならないのだ。ついでに竜化すると大方柱に挟まれてぎゅうぎゅうになり負ける。
『気を付けろ、指先姫だ!』
月光は聞いたことがあった。龍姫は最初、指先姫と呼ばれていた。指先一つで城壁を壊す攻撃であり、それが元で、ギルドのSランクになった、リューネの名前が一緒なので覚えていたのだ。そう言うとコクヨウがナギサを指さすのをぎりぎりで回避すると…そこに生暖かい風が通り抜けた。がその何かが自分の背中を叩く、そしてあらぬ空間が音を立て切り裂かれる。がその衝撃に体が引きちぎれそうなほどの衝撃が走る。
「やはりフェイントには弱かったようです。」
遠当ての衝撃波とも違う重い一撃だった。それは爪格闘の特徴である”引っ掻く”である。本来は伸ばした爪を横に薙ぎ払うのだが、その為に爪を伸ばす動作がある。その部分が巨大化しており
初撃とも見えるのはその”前段階”であったのだ。
「母上の検証結果から、魔王は負けると強くなります。が、あなたに興味がわきました。少し私の本分を満たさせてほしいのです。それをもってフィナーレにしましょう。」
「本分?」
ナギサは悪い予感が止まらなかった。
「はい、私は竜血鬼なので、竜であり・・・ヴァンパイアなのです。その龍の部分はともかく、もう一つがあなたの血が旨そうというのです。」
そこから先のナギサの記憶はなく、起きた時はプライベートエリアの月光の目の前だった。




