9-番外編15 魔王:黒騎士
その報告を聞いたのはエクトネーゼについた荒々しい一団の話をたまたま私がギルドにいる時に、訪れ、魔王城の話を聞いていたのを…聞いてしまったからだ。
「今回は確か、ケイの出番だっけ?」
ヨミは各地のダンジョンをめぐり、ナオの姿を追う…その合間を縫って魔王として活躍していた。報告を受けた私たちは情報収集用のヨミと私がログハウスで待機することにした。エレノアはまだ…。
体調が悪く、いまだ心さえここにあらずといった感じだ、最近はもっとひどい感じになりつつある。私も…手加減とか全然苦手になってきている…。やっぱりナオ君がいないと全然だめだ。
「実は仕事で会ったことがあってね。強いんだよ。」
「その言い方ま珍しいね…。」
ナオのログハウスのテーブルで二人は最近お気に入りのラスクをかじっていた。
「今までのは流石にくずばっかりだったから、アウトでいいよって話なんだけど、ついに本物の勇者が来るって感じ。」
「確かにね…でもさ?私がやる?」
「いや、あの人達はヨミだときついと思う。私が行くよ。」
「分かった、で、今はアセリアがサーチかけて追ってくれてる。」
ハーリスちゃんの時は平然と20個近いサブコアに指示を出して、てきぱきと指示を出すできる子だったが、このアセリアは同じ能力があるはずなんだが…5個ぐらいのコアで能力もそこまで処理が
高くない。それでも聞いた感じの他のコアよりは相当優秀なんだがそれでもハーリスにはなぜか及ばない。
『そろそろ来ちゃうよー。ケイちゃん、準備してー。』
「さて、行きますか。魔王までやる勇者の姿見るがいい…って気分だね。
今回の衣装は変身使って作った姿で、と言っても元の姿の配色を鎧に炭塗って作った黒いバージョンだ。但しいくつか棘を交換してイメージチェンジしてある。一応数回はやったんだけど、うん、ちょっと脅したら、従者盾にして逃げたからね…。しばらくすると、アラームが鳴る、これがドアが開いた合図だ。
「あなたが…。」
声を男の方にして…ちょっとエコーかけて…。
「我が名は黒騎士…。魔王である。」
「魔王!」
入ってきたのはいつものメンバーだ、タンク1、アタッカー4の編成なんだが…。近接2名、遠距離、支援が2だ。
「私が聞いた魔王はエレノア…お前は…。」
「私もまた魔王。フン・・・怖気ずいたか?」
「何!」
ナギサは刀を抜き払う。月光も合わせて刀を抜く。
「安い挑発だな。魔王とやら。お前を倒せば俺達は願いがかなえられる。が、それ以上に聞きたい。お前はモンスターを操るのか?」
「…操れるな。」
呼んだモンスターに限り。
「敵対の意思があるか?」
「降伏しろと?」
私はダークボックスからいつもの見せかけの大剣を抜く。
「…私はお前が悪には見えない。むしろ…。」
「だとして、勇者と魔王。語らう事はない。」
むしろ倒されていいって感じだ、今までの馬鹿みたいに長い口上とか俺ツエーよりよっぽど月光はカッコいい。…普通人の顔なのに…その絶大的イケメンボイスである。が…ナオ君ほどではない!
「相容れないか…。お前を倒し、世界を平和にする。」
全員が武器を構える、が実はやるとは言ったもののパターンは前にスタンピードの時に見ていた。そしてそれは溜め攻撃の欠点そのものだった。
「来い。」
月光が居合の形から一気に懐に迫る。それを…回避しないで喰らう。そしてタイミングを合わせ大盾が視界をふさぎ、更にそれで作った視覚からナギサが足を狙う。ここは分離を使って回避。
「こっちだ!」
声により二人の弓兵がかく乱を狙う。これが三日月流の戦闘スタイルだ。溜め攻撃はキャッチできる攻撃に限界がありその数を超えると受け止められない。スタックしたままの攻撃もある以上。
防御回数にも限界がある。そしてもう一つは”発動に意識がいる”である。意識外からの攻撃には対応できない。そして三日月流の攻撃方法はこの多段攻撃の不意打ちによる大物狩りと散開による
展開の2パターンこそ。この月光部隊の戦法である。それは格闘より魔法使いであるケイにとって天敵に近い相手だった。しかも盾で視界をふさぎ、コンビネーションで攻撃する二人の剣士の息は
ぴったりで回避さえままならない。ので対策として、大振り以外は無視して。溜め攻撃を防御に使わないことにした。そして、防御側に身体強化を発動。防御力だけでしのいでいるので…。痛みは
すくない。が、このままではジリ貧だ。
「…硬いな。」
少しして…月光が距離を取る。
「…そうか?」
実際かなり痛い。防御してるはずだけど、さらに体力もあるのに。連撃を前にかなり削られてる。仕方ない。
「私も少しは本気で行こう。フルエンチャント!」
全員に衝撃が走る…。体に様々な光が集まりそれがオーラの様に噴出する。
「喰らえ!」
そのまま手で、空気を仰ぐ。その衝撃に全員が吹き飛ばされる。これ以上は危ない。大体ステータスは現在身体強化で3倍近い20万となり、さらにフルエンチャントで2倍以上の出力にしてある。パワーアップやガードアップもかかるので、これでダメージは抑えられ、効率を上げる。月光部隊もさすがに全員を吹き飛ばす火力とは思わんかっただろう。よろよろと立ち上がる。
「ぐ…。」
「…弱いな。私が本気で手を振っただけでこれだ。その程度なのか?」
「侮辱するな!」
ナギサが吼える。すまない…ここまでやらないと偽装にもならないんだ。腕を突き出すとその腕を射出する。それはぎりぎり…ナギサも回避できたが。その後ろに巨大なクレーターができる。
「が!」
「ふん。口だけは達者だな。」
腕をゆっくり戻す。
「ここまでの差が…。」
「気がつなかったのか?」
ちょっと待ってみる。
「負けるかよ!」
よろよろと月光が立ち上がる。
「兄上!」
「私が行く。お前たちは最悪…逃げろ。」
月光が改めて刀を鞘に納め、構える。…こっそりフルエンチャントを解除。様子を見るか。
「…ふん!」
言葉が聞こえてくると。そのまま右横をとらえられ…な!剣を持っていた腕が吹き飛ばされる。そしてそのまま足、そして胴の順番に切られ、胴体の鎧はもう切り裂かれていた。
何!がそれで追撃は終わらない、その切った方を見ようとしたときにはもう視界に月光はいなく…。さらに背後からまたも腕が吹き飛ばされる…いやちょっと待ってよこれ。何が起きてる?
「やっぱり反応が薄い。勝てるぞ!」
強い…。手加減はきついか。最悪背後を延々ととられたまま切り刻まれる。




