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はじめてのまおう~《勇者に俺ツエーさせるRPG》   作者: どたぬき(仮)
番外編 2年前のあの日
303/1814

9-番外編11 教授の教訓

「クックック。君たち…本当に大丈夫かね?」

「い、いえ。生物系は…。」

 キラリと私は吐き気で、倒れていた。周りには…それはもう色々飛び散っていた。死体も、吐しゃ物も。それは勇者部隊を編成してもらい、合同訓練をしているときの事だった。

「ふむ、やはりか、当然か…。」

 ネルさんと先生は、イスに座り、私たちを見下ろしていた。匂いもひどいが動けなかった。襲ってきた狼を倒したときに…。殺したって事で、吐き気がしたんだ。で、キラリも動けなくなった。

「なんで?」

「環境の差だな。私たちの世界ではこのくらいになっても、下手すると大人になっても小動物の一匹も、殺したことが無い者が多い。そう言う平和な世界だった。」

「肉食べる、狩る。」

 ネルさんは平然と、枝の祝福で人数分の椅子を作る。

「私とかは、そのへんを理解してるんだがね、それを彼らに要求するのは酷だと思ってる。」

「そう?生きる、当然。」

 ネルさんは…こういうのが当然の世界に生きていたんだ。

「男、狩りする、女、来た獣殺す。これ普通。でなければ死ぬのは自分。」

「だろうな…。まあ、少し今日の訓練は終了して少し話をしよう、私の話で、気が楽になればいいがな…。」、


「まずだ、君たちは殺すって事をどう思う?」

「いけない事ですか?」

 私が答える。

「そうだな、そう学校では教わっている。が私の頃は敵は殺すべしと教わっていた。」

「戦争…ですか…。」

「そうだ、これは今に始まった事じゃない。その頃に友達がいてね、当然私たちも君たちと一緒で、”殺すなんてとんでもない”という話をしていたのだよ。」

「そ、そうですよね。」

「だがね、そいつは言ったんだ”それは君の友達とか家族を生贄にするくらいかい?”」

「ん・・・。」

 私は下唇をかんだ。考えたこともない。

「当時の敵兵は私達を見たら殺すのは当然と思っていると聞いていたからね。当然だ。」

「なんで自分じゃないんですか?」

「自分が死ぬより、私からすれば”私の親”が死ぬ方がつらいんだ。この心理を使った戦略も世の中にある。君が戸惑うそのナイフは…。友達を生贄にして逃げていいほどの物か?」

「違います。」

 キラリが答えるのもわかる。

「それが、戦争の人殺しへの答えだ。友を生贄にしたくないなら、武術でもなんでもがんばれ、死にたくないなら訓練しろ。そんな日々だった。殺すのも躊躇するな、相手が恨むのも当たり前だ

そんな嫌なら、こっちに来るな。これだけだ。」

「ですよね。」

「まあ、これは軍隊でもよく話題にあってな、私が知っている限り、ゲームでは…この感覚が薄れるんだ。」

 ネルさんが出した、お茶を教授が口に入れる、…やっと立てそう。

「え?」

「そんなのあるの?」

「ある大国がリアルにすごい近いゲームを開発して、それを無料で配布したんだ。それはもうリアルで、ゲームとしても面白い。だからその国では流行ったんだ。」

「そしたらな、点数みたく人間が見えて、銃を乱射するようになったんだ。そいつら。邪魔な奴はゲームみたく殺せばいい。ってね。」

 そんな話聞いたことがない。ゲームでそれって…。殺人の…。

「そう、ゲームの内容次第では人殺しが助長されるんだ。私はゲームが好きでね、それこそ数十年やってきた。」

「凄い長い。」

「そう、その間、争いに身を置いているのだよ。だからこそ、倫理無き、誇りなき戦闘に意味がないのを知っている。」

 先生はそんな長い間…。

「ただね、実際戦闘して、ナイフの内臓をえぐる感覚は今でも慣れないし、慣れたら、殺人鬼になると思ってる。」

「殺人鬼?」

 ネルさんが聞いたことないって顔になってる。まあ、なじみはないよね。

「盗賊みたいな連中だな。」

「それはだめ。」

 確かにそうだけど…。

「だから私はこう言う、その感覚に慣れるな…耐えろ。」

 …先生。

「慣れて人殺しに手を染めれば、きっとその報いは自分に来るだろう。たとえ友が死ぬを分かって守っても相手にも相手の友がいる。がな、死にたくないのは自分も一緒なんだ。だから殺す。」

「先生。」

「殺しに慣れるな、その吐き気に耐える術を身につけろ。でないと今度は人を救ったりできない。そして、こう考えてみろ。”そいつの命は友を生贄にするほどか?”。」

「先生には友はいるんですか?」

「いるな、この世界にはいないが。でもな、そうでないにしてもネルや君たちがいる、私の手は小さくとも、君たちを守ろうと動かすことは出来るぞ。だからこそ、敵に容赦するな。」

「それは?」

「ネル君とかはよくわかっているが、死にかけの敵は常に強敵だ。死にたくないからあり得ないほどの全力を振り絞る。だからこそ、躊躇するな、相手はお前たちと一緒で生きたいがためにどんな手でも使ってくる。そうなる前にとどめを刺せ、自分の友を守るために。相手の命が友より重いなら、又は友が必要とするなら考えろ、考えて動け。その為に君たちには訓練をしている」

「友のために?」

「ああ、自分の満足さ、自分が一緒にいる人間に死んでほしくないというエゴさ。我儘だ。その為に必要な物を私は君たちに渡すだけだ。だからこそ、少し訓練するか?但し、無抵抗な物を殺すのは

ちょっとまずいが、狩りをもう少しやってみるか?ダンジョンももう少し。」

「もう少しだけ、先生、胃が痛いので、休憩ください。」

 キラリの言葉に…。私ももう一度倒れて空を仰いだ。友達の為か。


「なんか深いね、教授。」

「あの人おじいちゃんだからね、聞いた所。」

 ケイお姉ちゃんも知らなかったみたい。

「陰険メガネではあるんですけど、それだけじゃない、奥深さもありますね。」

「あの人…ものすごく人格者だと思うよ、孤独だけど。」

「そうじゃない何かも感じるけどね…。」

 なんというか、戦闘狂の香りがする。けど、いろいろあるんだなみんなにも。

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