9-番外編7 二年前の僕 牛乳と魔石溶液
説明は単純で、この新開発魔道具の”畜産の首輪”の効果の確認と、畜産の情報を伝えるので、それを試して、状況がどうなったのか聞かせてほしい。という内容だ。僕たちは牛が入る予定の牛舎にいる。
「このモンスターは?」
「近くにいたので、睡眠時を狙ってかけて捕獲です。」
「そんなものがあるなんて…。」
「魔法の組み合わせ次第で可能だと。」
「そうなのか?マリア?」
マリアと呼ばれた子はその首輪を見つめていた。
「その首輪、相当というか私の頭では理解できないほど精密に付与がかかってるわ。しかも知らない魔法が大量にある。しかも付与の接続が理解できない。だから可能かもしれないわね、それ。」
付与の接続というのは魔力回路を用いた時、付与魔法の効果を魔力を通して順番が指定できるのだ。これを用いて、効果の加工が可能なのだ。但し回路を理解しないと組めないし、価値が高くないと付与限界数という名の回路合計数が足りず付与できない。その為、この畜産の首輪は本来使う魔物の首輪より2段階強い”人工ワイバーンレザー”を用いた特製品だ。これでないと規定分まで付与できなかったのだ。
「賢者がそう言うなんて。」
ハーリスははっきり言って、その辺を通り越すコアである。
「どこのだれが作ったか教えてくれない?」
「それはちょっと、まだ実験段階なので、これは。成功するか不明ですし、その情報が欲しいので今回依頼したんです。」
「そ、そうよね。」
マリアと呼ばれた女性は慌てて首輪から手を離す。
「モンスターを御すって考え方か。」
「今は動物ですね。で、この動物は勇者に聞いたところ、乳牛に近いそうでそれで、牛乳がもらえればと、分かりました?」
「はい、この子を離しておいて時々呼んで、乳をもらって、それを・・・で、どれに入れるんです?」
「え?」
あ、そう言えば、入れる容器がないぞ。
「あ…。」
「僕が出すよ、陶器でいい?」
「は、はい。」
そう言うとヤマシロ君が外に出ていった。ちらっと見たら、土の魔法が3レベルほどあったし、光もある、魔法系勇者か。
「でもこんな子供使いに出すなんて、よっぽど…。」
護衛らしい剣士の女の子はこっちを値踏みするように見る、この視線も久々だな。
「いえ、この方が店主ですよ?」
「え?」
「はい、NEO雑貨店の店主のナオです。」
ここをごまかすのはまずい。ここはストレートに行こう。
「私が店員のハーリスです。よろしく。」
「よろしくね、私がカルフィーナ。この子がマリア。で、こっちがミコト。で、外に行ったのがヤマシロ君。勇者よ、でも勇者でこうしているのは珍しいでしょ?」
「ゆ、勇者様ですか?」
驚いておこう。時々見てますとか言えない。
「うん、モートリアって国で勇者召喚されたんだけど怪しくて、みんなで逃げて来たんだ。で、この山の周辺を旅行中だったってわけ。」
カルフィーナって子が疲れた目で天井を仰ぎ見る。
「厳しくありません?」
「だけど、生きてるって気がしてるんだ。で、牛乳って話を聞いて、こっちに来たんだよ。というか、この辺全く開発されてないから。」
これは杖を持った…ミコトって子だな。
「養分があるなら一日ぐらいで、可能ですよ。で、改めて登録を開始します。ゴルドさん、その首輪の銀色の部分にギルドカードを当ててください。一応こっちで譲渡設定したので。」
「あ、はい。」
慌てて、銀色の所にカードを当てる、それで譲渡依頼が成立した。
「で、夜はここで寝かせてください。後、ストレスがないように柔らかい寝床や、食べ物を与えると、よりおいしくなるはずです。キーワードとかはカードの方にマニュアルが送信されたのでそちらを見てください、また、声が欲しいと思っていえば、その文章が声として発声されますよ。」
そう。これは現地の人向けに開発された機能でこっそりハーリスがギルドカードに実装した機能だ。識字率が低いこの世界では字は見てもらえず、訳が分からないという意見が多かった。ので
聞きたいと思って触れば声が出る機能を付けておいたのだ。
「ギルドカードねえ…私たちが行っても貰えるの?」
「はい、但し、一応検査はされますよ。」
「だよね。」
「終わったぞ、取りあえず、10本ほど作ったけど、重いからな…。」
山城が出てくるとそこには見た事ある、大型の牛乳瓶がある。が陶器で作ると思い上に意外とわれやすい。が土魔法がメインなのか…珍しい勇者だな。
「とりあえず、ハーリス、頼んでいい?」
「はい。軽量でいいですね。これだと少し魔石の塗料が欲しいので、塗っておきます。」
付与魔法というのはその物質に含まれる魔素を特定の機能に特化させ、機能させるものだ。その為その命令に必要な分の魔素がその物質内に無いと機能しないし、魔力がある人間がそれに触れないと
機能しない。ハーリスはダークボックスから付与魔法加工用の塗料である”魔石溶液”を取り出して、巨大牛乳瓶に塗っていく。
「へぇ…。」
賢者だろう、マリアが感心して、その様子を見ている。
「僕も塗るよ、」
「じゃあ、皆さんお願いします。5つほど感があるので、これで表面を塗ってください。」
『お姉ちゃん思ったんだけど、その塗料あればこの鎧パワーアップできない?』
『もう使ってある。普通の鎧に比べて、軽くて丈夫で、魔法の効きもいい。ただ、まだそれに付与はいれてない、回路組んで、その上にもう一回塗装しないといけないから。』
『そんな塗料あるなら、私も使おうかしら。』




