9-秋SP20 秋祭り3日目 キラリ VS 偽ギルフォード
「それでは決勝戦を始めます!ルールは総当たり戦です。まずは一回戦目”ギルフォードVSキラリ”壇上に…。」
ギルフォードはゆっくりと、そしてキラリも落ち着いて、所定の位置につく…。がキラリからすると違和感を感じる、ギルフォードは数回会ったことがあるが、こんな無口な男じゃない
「・・ギルフォード?緊張してる?」
「…。」
その言葉を無言で答える。キラリはともかく緊張しているのだろう、普段は抜くはずの剣が抜かれていない。
「第一線!始め!」
「よろしく!」
「後光!」
叫び声とともに光が周囲を覆う。が、その光は強くそのままギルフォードは根元まで来ていた。が
「何!」
キラリは慌てて、腹を抑えるが、それに弾き飛ばされる。流石に剣の勢いに体重が追い付かなかった…。
「これ!」
キラリがかろうじて前を見るが…そこにはもうギルフォードの姿がない。
「転閃…。」
ぼそりと聞こえた声に反応するといきなりしゃがんだ。その頭を刀が通り過ぎる。
「上月…。」
その言葉に今度は刀の軌道が打ち下ろしに変わる。が、それを影に潜り込んでかわす…。
「いける!」
「反し3撃。」
ギルフォードの後ろから出てきたキラリの足を刀で受け止める。
「なに!」
「これで終わり。」
その声はキラリのさらに背後から聞こえた。
「光の加護!」
体を無理やり光らせると、頭にそのまま一撃が入り、弾き飛ばされる。が、ぎりぎり体制を整えるが…さすがに一撃は耐えきったものの…。
「構えが遅い。払い斬月。」
そのまま、追いついたギルフォードの刀に胴を撃ち抜かれ、さらに吹き飛んでいった。が、ぎりぎり…耐えきっていた。
「硬いな・・・。」
しゃべるギルフォードに違和感を持った。当然だ、ギルフォードの後光は決して、”顔面”を中心にしない。目立つための後光の為、頭の上から行うのだが、今度の後光は頭の真ん中で顔が隠れる上に、光も強い。あれでは目立つのではなく、目つぶしだ。そして何より”刀”だ。あいつの武器はタンク性質の為、剣だ。
「ならもっと攻撃すれば本気を出してもらえるか?」
「…あんた…。」
「だから。」
その直後に見失ったギルフォードは…ギラリの真横にいた。
「遅い。」
あまりの速さに焦って腕をつきだす。がその刀が腕にめり込む。
「硬いな…。このまま実力も出せないまま死んでいくのか?」
「するか!」
「…硬い。」
そう言うと、またも姿を消す。攻撃させる間もなく…今度は会場の反対側にいる。あまりの距離にこっちが攻撃しても届く気配さえない。
「ステータスが高いのか?だとすると、まずいな…こっちはそこまで高くない…。」
「何を言っている?」
ギルフォードが、剣を鞘に入れたまま、こっちに今度はゆっくり歩いてくる。が、今までの高速戦闘が嘘のように今度はゆっくりと歩いてくる。、
「・・・。」
流石の事態に全員が…かたずをのむ。この中で混乱していたのは南と…ネルだった。
「あれ!」
「分かってる!」
慌てたのは緊急で取り寄せたハーリスのデータから出てきたのは”月下の庭園”のダンジョンマスター。三日月月光だったからだ。そして憑依させてステータスを上げていた。がそれだけではない
ゴーストの憑依で”ギルフォード”に変身していたのだ。だからここに来るまで気が付かなかったのだ。そして、ステータスはともかく、戦闘においてキラリが圧倒されるとは、誰もが思っていなかった。
「どうした?南、自分が応援する勇者が勝つのがうれしいのか?」
パルミダークの辺境公がこたえるが…それでも…じっと見つめていた。
「…いやキラリがやられるなんて、珍しくてね。」
ステータスに差があるので、普段なら圧勝だろうが、ここはステータス上限があるため、そうはいかない。その中であいつは挑んできたのだ。慌てて座るが、冷や汗は止まらなかった。
「喰らえ!」
キラリが手を出すと。その手が…切れて宙を舞った。魔法を撃とうと、距離を保ったまま攻撃するつもりだったが・・・。
「・・・居合わせ。払い残月。」
その距離は一瞬で詰められ、切られていた。まっ二つに切られた腕は吹き飛び、空を舞った。
「が!」
「反し3撃。」
そしてそのまま3回ほど背中を切られると、キラリは倒れた。
「しょ、勝者!ギルフォード!」
勝利宣言に慌ててエレノアがキラリに駆け寄る。そしてゆっくりと。振り返りもせず、ギルフォードは闘技場を後にした。




