9-秋SP4 やりたい事、やれる事、やれない事
ドワーフ商店街を見学して数日後。南さんがまた…やだ、この人相談多すぎ…。
「これ、やるのってレベルなんだけど。」
それは浮遊島の雑貨店のテーブルにリューネさん、ケイとか魔王分幹部が居並ぶ中、南が持ってきたタブレットにあった”王侯貴族用SNS”に書かれた祭りでやりたいこと一覧だ。今日は…人が来てないためというより、時々は人が来るのだが、そうでないと魔界に行ったり、又は…チケットのお値段的に誰も魔界に来ない日が多い。
「えっと、パルミダーク公が酒の見本市、エクトネーゼ王が、マーケット、で南は・・・。」
「ああ、一応ダンスとか音楽とか、パレードとか、そう言う見世物。」
「で、ネルちゃんは露店。」
「露店。食事、できれば現地の名物も出したい。」
「で、長峰君が、モニュメント。芸術みたいなものをダンマスで作れば、受けがいいんじゃないかって奴ね。」
「ふむ…。」
「で、最後のザガートン王がすっごい回りくどいけど”勇者”を見たい。だそうで。ドルカスは飯。だそうだ。酒はないのを知ってるからね。」
この7名が現在の世界会議のメンバーだ。後それに追加でダンマス側からオブサーバーとして一人追加で連れてくることができる。それはS級冒険者でもいいし、宰相でもいい。その辺は自由だ。ただ、定例会議は基本懸案を軽く話すだけで、1年一回。ダンマス機能で集めて会議を行うが、このSNSに召集を書かれ、招集状を送られた場合は公式となる。で、今回は公式会合となる。
「で、これらをまとめると…。」
「で、これ、何がやりたいのよ。」
思いっきりリューネさんが、ハーリスの書きだした今回のやりたいことを見つめている。
「とりあえず、人を集めて何かやるのを秋にやって、民衆を楽しませる。という事は賛同貰ったみたい。但し、そこから先は未知数で、パルミダークは特産品の酒が売りたい。で、エムントさんは各地から行商人を集め各地の名産を取り寄せてみたい。」
これは実は夏の頃に魔界を旅行したエムント王が言っていたことで、魔界の王都は基本的に”他の町の出先機関的商店”を多く抱え、各地の村という体で様々な食品は工芸品を売っていた。当然、そのあと傭兵団として各地を回るクラムブラットに話をしたところ、結構そう言うものが村々にあり、そう言うものが結構埋もれている事実を知った。特に冬に暇で作成してそこから春先になるとそれを都市に売りに来るらしく、そう言うものを一堂に集めて商売すれば村々も活性化するのではないか。というのがエムント王の意見だ。
「で、あんたは祭りと言えばパレードねえ…。」
よく、遊園地でやってるな、それ。
「ほら、祭りというとご神体があるじゃん。」
「…いや、あんた神様だろ?」
「一応ねぇ…。」
「そう、神様らしい。びっくり。」
ネルちゃん、ノリツッコミできるようになったんだ、お兄さんちょっと感動しそう。神様ではあるし、一応協議もあり、リンシュメルトでは聖女教の”アコライト”の修業として医療班が存在しイケメンフォーの皆さんがそれぞれ、各地を出張治療を行っている。リンシュメルトの生活をよくするために、この”医療団”の巡回同行がリンシュメルトの常設依頼となっている。意外と教会にスキルを習いに来るアコライトのいいアルバイトになっている。
「でもそうなると、大きめのモニュメントを作って、って誰が費用出すの?DPタダじゃないんだよ?で、それにパレードして…周りに露店作って。それを飲食系にするとか、あと前後で露店の許可を取ればいいと思うけど、これだと…。」
「そうなんだ。イベントの目玉ががないのよ。」
「勇者はこっちからイベントの話をすればいいんだろうけど…。」
「だけど目玉がない。一応ドルカスに先に提案したところ、”武器のコンテスト”はドワーフでやるっていう話。投票制でショーケースに入れて武器を展示して、で勇者SNSによる投票制。」
南が椅子に座ると、酒場で雑談してる空気になるが…。実際そう言う感じでみんなが座り、ハーリスが空中にプロジェクターを出す。この機能実は”光魔法”をコアが習得するとできる機能で
映像を出す機能が追加され、幻覚による隠しドアが作成できるようになる。おかげさまで、こうやってプロジェクターができるのだ。
「ふむ…。デザインだね。」
「付与魔術は、中級だから、技術者が整ってないんだけど、一応リューネができるからって事であんたに来て欲しいそうよ。新しい武器狩って欲しいって。せっかくできたムーブメントあんたが保護しろってさ。」
「あー、確かに、そうだね、デザインが欲しいって言ってドワーフ炊きつけたの私なんだわ。良いよ、ある程度なら買うよ。東雲ちゃんは?」
「私も鎧装備すれば変わるから、防具のデザインと硬さでいいのがあったら帰る、武器はちょっとこれでも時々ポキッと折れるから耐久度の問題で…。」
そう言い、テーブルに…置いたというよりあれだな…。テーブル2個分占拠するなこれ、そういう大剣が一本あった。
「また折れた?」
「いや、使ってない、脅し様で、素振りだけ。」
そう言って存在する大剣はネルが3年にわたり改良を続けたらしいケイ専用の大剣である。教授から聞いた木を粉末より細かくして、結合させる”カーボンナノセルロース”にさらに硬度を上げる
べく、密集度の為に素材を圧縮させた上にさらにその圧縮版に爆縮という爆発物とかの火力をさらに密閉させ威力を上げてその能力で圧縮しつつ成形した一品だ。ついでに南さんの依頼が無かったら
この爆縮オーツウッドセルロースの剣が教授に支給予定だった。その位鋼鉄と一緒か、それより硬い、ただし製作に風の魔力がすさまじくかかる剣である。
「でもなんで、こんな分厚い剣を?」
「ああ、これでもステータスの関係で一発で折れちゃうのよ、切ると。だから改良してもらって、せめて30分は戦える武器にしてもらってる。」
という事は、この工法でも数千とかいうステータスを前にすると一発で折れるのか…。
「こんな大剣でも、しかもこれ…。」
南がノックしてみるが…。それなりには硬い。が、南さんもちょっと本気を出すと、ステータスだけなら10ケタ行きかねないので、これ位なら簡単に折れる。
「結構固いんだけど、自分の体にした拳の方が固いのよ。だから、武器開発流行ってるんだけど私も腰に下げただけってなる。」
「そう、私の杖がぎりぎり。」
ネルが持っている杖は親愛の証としてユーから送られた神様曰く奇跡としか思えない”世界樹の新芽”と呼ばれる部分を切り取ったもので、惑星が誕生する瞬間の力を集め、回路の形成も可能という、”神器”である。簡単に手入れをしているがバランスが狂うと周囲1kmは全て巨大な樹木に覆われ、森林に浸食させてしまうくらい魔力が大きく、その大きさ故にネルほどの魔力と
精密さが欲しい。その為、というよりユーからもらったのが嬉しいためか、愛用の杖だ。




