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はじめてのまおう~《勇者に俺ツエーさせるRPG》   作者: どたぬき(仮)
始まりの魔王 高橋直の章
27/1654

2-9 エアヴァンゲルの最悪な一日

「ここがエアヴァンゲルか。」

 豪華な剣を掲げた少年がじっとしばらく先にある街を見つめる。白く塗った鉄の鎧の下に制服を着た高校生であるが、その目は厳しかった。

「近隣で一番大きい街。だって。」

 白い巫女服に包んだ少女はおどおどした声だった。ショートヘアーに白を基調としたローブを着ており、巫女然としていた。

「…どうしよう。」

 メガネの少女は腰の剣を抜き払う、防具はつけていないようだ。髪は三つ編みであり、この世界では珍しい結い方だった。

「もう兵士もいないよ。。」

「近隣の村々とか対魔王同盟に入れるために説得してたじゃん。」

「あれが・・?」

 巫女服の少女、惠が泣きそうな花王で思ったのは武力に任せた攻撃で脅した村々の数々だった。歯向かえば村を焼き払い、従えば占領軍を置いた。最初出た時には500の兵団が今は5人(うち3名が

勇者と従者)となっていた。

「い、一応聞くけど、親書持ってが、外交なんだよね?」

「ああ。そうだ。」

 茂樹が答える。

「但し基本方針は俺らに任せる。だよな。あれだけいれば経験値多そうだな。」

「対魔王同盟が先。人間経験値とかふざけてるでしょ。」

「だって、モンスターいないじゃん。レベルアップなんてこれでしかできねえよ。」

「でも人間よ、相手は。」

「だからどうしようもないって、まあ、俺としては経験値のほうが嬉しいが、交渉はするか。」

 とぼとぼと3人と二人は城門に歩いて行った。


名前:田中たなか 茂樹しげき

職業:勇者LV22

HP:424

MP:226

STR:122

VIT:25

INT:26

MID:222

AGI:255

MAG:255


スキル:加速LV1 光魔法LV6 収束LV1 剣術LV1 勇者の力LV1 

称号:勇者 異世界からの来訪者

所持金:なし

装備:鉄の鎧、異世界の服(学生服)、異世界の靴、鉄の剣



光魔法LV6(魔法系) 光の神の力 レベル5に加え バリア、パニッシュメントレイ、後光

            が使用可能  必要DP 成長のみ

加速LV1(特異系) 自身を加速させ、行動を行う、10秒持続、2倍加速 MP20消費  

           必要DP 65000DP


「ネル、これはどう?」

「うん。これだけあればいい。後は向こうに帰ってから。」

 必要な物を買って、一段落ついた所だった。

「後、地図があればいいが…。」

「聞いたのは覚えてる。けど」地図売ってなかった。

「という事はこのダンジョンのマップしか頼れないのか…。」

 DPでダンジョン領域をう増やしつつ、この大陸と思われる場所の地図は実は3/4ほどできていた。大国と思われるのは5つある、うち一つはおおかた俺たちを召喚した国だと思う。ただ、どれか

については全く分からなかった。

「後は…。」

「ありませんです。」

 自分は弱いけど、こうして一般人程度に動けて、自分にはヘイトがないのがうれしい。こうして普通に歩けるんだから。そう思った瞬間だった。どこからともなく強風が町全体を覆った。

その枷のあまりの強さに全員が吹き飛ばされていった。


「それではお待ちください。」

 門番は丁寧にお辞儀をすると去ろうとしていた。

「は?ふざけるな、すぐ呼べ。」

 勇者はいらだった顔で、兵士たちを見つめた。

「すぐ呼んできます。」

「ここにいねえのかよ!ふざけるな!忙しいんだぞ俺達は!」

「落ち着きなさい。」

 長谷川は頭を押さえていた。これでは交渉にならない。

「待つのが嫌なんだよ。」

「ある気だから仕方ないじゃない。」

「お前たち!ここがエアヴァンゲルの街と知っての事か!」

 流石の兵士たちもいら立ちを…


 ズゥゥゥゥゥゥゥンン! 


「むかつく、俺たちは勇者なんだぞ、逆らうなや。」

 勇者の手の平から出された光線はそのまま兵士たちを焼き払った。

「交渉は決裂…だよね…。」

「待ってよみんな…。」

「だな。やれ、長谷川。」

「………仕方ない。。」

 そう言うと長谷川は腰の剣を抜いた。次の瞬間には城壁は横に切り裂かれ…倒れていった。その様子に巫女服を着た東雲は顔を覆い泣き始めた。

「こんなもろい都市、戦力にもならねえ。潰して正解だろ。」

「・・・かもしれない。交渉失敗。」

 倒れた城壁、そして剣風が城下一帯を吹き飛ばす。

「交渉なんてめんどくさいんだよ!」

 そう言うと勇者は崩れ去った城壁後に向かって手を突き出す。

「パニッシュメントレイ!」

 その瞬間光が市街地を覆い、一区画を吹き飛ばしていた。そして壁向こうからは悲鳴が聞こえ始めた。

「占領はどうするのよ?」

「必要ねえ。もうそんな人員はねえ。全部俺の経験値だ。これだけあれば十分足りるだろ。」

「王様にはどう説明するの?」

「そんなの”歯向かったから殺した“でいいじゃねえか。」

 その言葉はもう、二人しか聞こえなかった。


 かろうじて防いだ暴風の直後、大きな光が年を多い…その爆風でまたも強風が吹き荒れる。

「何が起きた!」

 慌ててタブレットを取り出す。

【現在勇者が近くにいる模様です。アラーム設定が設定されていないで、ダンジョン近郊以外にはアラームが鳴りません】

「その画面を!」

 建物の陰に隠れ、モニターを呼び出すと確かに茂樹、長谷川、東雲の三名の姿が見える、姉ちゃんは、頭を抱えてぶるぶる震え、長谷川は剣を納刀しじっと城壁の奥を見つめる。そして茂樹は

あれじゃ悪魔か魔王だぞ。そんな顔で、喜々として光魔法を打っている。これはやばい、あの火力だとみんな死んでしまう。急いで、ダンジョンは位置返還を推し、レイス達と護衛トレント達を安全地帯であるエルフの里まで移動させる…また爆風が…。

【配置変更いたしました。いかがいたしますが?】

「ネルはエルフの里に帰ってくれ。俺はエレノアと、この都市を脱出する。」

「…いいの?」

「ああ、あの火力相手だと気ッと俺達だと何もできない下手すれば巻き込まれて死亡する。今は…今は…。」

 口から血がにじみ出る。今は僕に力がない。悔しい、止めれるかもしれないけど、今の僕たちでは大方死ぬだけだ。

「分かった。向こうについたらみんなに説明しておいて。」

「分かった。…ナオ…生きてね。」

「うん。」

 大きくうなずき、そして、ネルは配置変換されていった。

「コア、脱出の最短経路を出して。」

【はい…制作中です………完成。このルート沿いに行ってください。大体98%の確率で狙われません。】

「行くよ。」

「は。」

 この時ばかりはエレノアも厳しい顔をしていた。


「でもなんでこうなったんだよ!」

 愚痴りながら走る。時折横の建物が光に包まれその爆風が建物を揺らし、熱風が頬に当たる。もはや、自分にはあのクラスメイト達が人間に見えなかった。悪魔にしか見えなかった。映像で見た

最初の場所にはパン焼き所があった。あのおやっさんは娘においしいパンが作りたくて、兵士をやめ、一念発起して数年パンの修業をした。そしてやっとあのパンを焼くことができたのだ。あまり

旨いパンとは思えなかった。発酵してないから。けど、時々来る娘さんのおいしそうな顔に僕たちは癒され、パンを僕たちは懸命に練り続けた。少し先の露店では近くのゲート村から来た農夫が

日替わりで、その日狩った肉や葉物を並べていた。僕も顔なじみで知覚の村のよしみという事もあり、時々珍しいものがあると少ない銀貨を握りしめ、買いに行ったものだ。その時の気さくな笑顔

が忘れられなかった。今はもうそこは残骸で埋まっていた。たとえ領主がダメでもみんなは幸せだったはずだ。それが!


ドォォォォォォン!


 爆風に吹き飛ばされ壁にぶち当たる。

「マスター!」

「だ、大丈夫。」

 そう言うと、僕はぎりぎりの体力で立ち上がる。もう少しで城門だ。

「少し待ってくださいね。」

 そう言うと、エレノアは僕に抱き着き…体の服となっていたエレノアと合体した。そして…服の袖から水色の手が伸びると城壁まで手を伸ばした…そういえばもう本当の大きさはトレントよりは

大きいのでこういう事できたんだっけ。そして、一気に体は引っ張られ…一気に城門の上に到達した。

「これであとは近くの木に飛び移れば…。」

「分かった。急ごう。」

 一気に近くの木(数十m先)にエレノアが手を伸ばし、一気に引き僕の体ごと移動する。

「急ぎましょう。」

「ログハウス行くよ。そこならある程度耐えれるはず、こっちに来ない限り。」

「分かりました。」

 そして僕たちは敗走した。命からがら逃げきった先のログハウスで見た光景は地獄絵図だった。念入りに地上を光魔法で焼き、それはもう廃墟としか言いようがなかった。一撃で街の一区画を吹き

飛ばす攻撃を何十発も手あたり次第にぶちかます勇者。そして、かろうじて生き残った兵士を繭一つ動かさず首を斬り飛ばしていく長谷川…その姿はもはや殺人鬼としか言えなかった。唯一の良心の

姉ちゃんはずっと頭を抱え泣いていた。僕ももう泣きそうだった。いや、泣いていた。口にしょっぱいものが纏わりついてくる。


その日、エアヴァンゲルという都市は消え去り…そして、勇者の称号はクラスメイトたちのもとを去っていった。僕はその廃墟をダンジョン領域にして死体と残骸をすべて回収した。


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