9-7 教授の章 指示
後で聞けばそれは王様の一目惚れだった。彼は前妻をモンスターとの戦でなくし、傷心気味であって、その中で出会った美人の彼女に運命を感じたのだ。そしてその隙にこの中央をパンダ同好会の領地として、モンスターを送り込めるようにした。が、送り込みはしなかった。彼女たちにとってここはDP生産拠点、それは今までの侵攻が嘘のようにDPが入り、安定とランキングの押し上げに貢献した。がこれをよしとしなかったのが周囲のダンマスである”スキュラカンパニー”と”龍王の住処”である。スキュラカンパニーは外洋系を支配する海のダンマスの繋がりで実際二つの大陸を横断している。その為競合ではあるが、この大陸においては出遅れた後陣に配する結果となったのだ。
もう一つの”龍王の住処”は単独ではあるが軍団を使う有名な竜のダンジョンマスターの部隊であり、そのドラゴンというのが強く、手を出し辛いものとしていた。そしてパンダ同好会は侮っていた部分がある、それが…。
「スタンピードが時々来てる?」
「はい。」
バルモンの城地下に移設した徳永のダンジョンの地下を経由した全員からの情報であった。
「どうも、ここを狙っていたのは我々だけではなかったようです。」
「と言うと?」
柳田が、コアに明示させ、周囲の地図を表示する。
「この方向から来ている部隊。そしてこの北側からも来てます。確かに王城のすぐそばの領域は取得不可で、そこには”龍王の住処”の文字がありました。大方黒の獣と一緒の稼ぎ方をしている模様です。」
「という事は何か?連中が強いのは私たちが襲ったから…だけじゃないのか!」
「そうみたいです、ここは複数のダンマスが狙う寡占地の模様です。となると、私たちがこの土地を守らないと…。」
「やばい事になるね…。当然これはドランの奴も気が付いている。」
「アラームはつけていますが…城内のみなので、出陣した王子や王、重臣たちまでは手が回りません。」
そしてその不安は一年後での次の征伐での時に的中した。南に進撃し、適度に退治してもらい武勲を上げてもらう筈がなぜか、そこに複数のドラゴンが侵入。王を殺してしまう…。そして追従していた王子は攫われた。同時に北側から蛮族が侵攻、王妃が呼び寄せた自分の部族と兵士たちでぎりぎり進行を防ぐが、それ以来、なぜか”自分がモンスターを呼び寄せ、王様を殺したことになっていた。それとともに国は2分となると思われた。がそれはもっと予想外の事で覆る。それは争議を終わった日の事。重臣の一人が徳永を暗殺しようとナイフを持ち、突っ込んできたのだ。流石に上位種としてなっている獣人だけあって、死にはしなかった。が…。それは国を3分するに十分な行為であり、詮索を嫌った重臣たちが王子を中心としたグループと公爵を中心ととしたグループに分かれ王城を去ってしまったのだ。その為慌ててパンダ同好会は各地にダンマスを派遣して離散を防ぐ動きをしていた。がそのうちの一角がここの鉱山だったのだ。
「ふむ、そんな稼ぎ方があったのも驚きだが、現状は君たちも利権が、そして相手にも街の利権か…。」
「結構ダンマスSNSでは有名な稼ぎ方よ。」
「スタンピードはおいしい餌、これ、勇者の常識。」
「え?」
「勇者の?」
柳田たちが不思議に見つめる。実はもはやザガートン大陸のダンマスとか亜人同盟のダンマスは全員しない稼ぎ方なのだ。というのも勇者が強すぎる上に複数の勇者がいるブレイブ大陸及びザガートン国周辺では集団魔法で瞬殺される雑魚はDPの無駄となるので、むしろギルドが資金提供して頼み込んで防災訓練のノリで勇者のレベリングの為にやってもらうほどなのだ。
「ああ、というよりこの地ではまだ勇者はできていないのだな…。」
教授が煙草に火を付け、ぷかーっと吹かす。それにダンマス一同は苦い顔をしていた。
「そうなるが勇者?本当にそんなものがいるのか?」
「ここでも懐疑的、当然、勇者大陸以外勇者がいない。が、”教授”は勇者。」
それに対してネルは胸を張る。
「へ?」
「”教授”。」
「そんなすごい人なんですか?」
「私が知る中では最強。]
「あのレーザー勇者より?」
「レーザー勇者、あれか、キラリ君か。」
”教授”の満足そうな頷きに全員が変な顔をする、この子、その勇者より若いよな。
「勇者の指導を私と”教授”でしてる。数人以外はしてないけど、この人はそう言う人。」
「ネル様の言葉は疑いたくない。確かにダンマス含め、上位が全員倒れてる。私のダンジョンに来られると、壊滅しかねないとは思っていた。」
徳永はじっと教授を睨んでいた。
「でだ、そうなると…。君たちが政権を握れば、ギルドの利権は得られそうだな。」
「は?」
「エルフ食堂も付ける。指導はこっちでする、ダークエルフ参加OK,後、テコ入れは、竜王が抑えで、こっちに来させて、スキュラは様子見?」
「それでいい、君たちはできるだけ早くダンジョン認知にサブダンジョンを開き、DP収益を上げるべきだ。」
「何で勇者がそんなダンジョン詳しいんです?」
柳田はタブレットを取り出し、メモの準備をするがそこが疑問だった。
「勇者だから。」
さも当然の顔をしているネルと、教授に3人は顔を見合わせるのだった。




