2-7 エルフが塩を、エルフ塩みたいな話
そこからの三日ほど…俺たちは会議を繰り返した。その結果…作戦が固まって…そこからの僕は朝からパン焼き、そして夜からエルフ村制作というかなりブラックな関係になっていた。死ねる。
そして…やっと再実行日に至ったのだ。今度こそ…。
「こちらにナオはいますか?」
それは小さい村に来た旅人の最初の第一声がこれだった。
「なんだ?」
ここはエアヴァンゲル近郊の村であり、ゲート村と言われている。農夫のおじさんの前にいるのは壮健そうな耳の長いのが直腸のいかつい男だった。
「ナオ?」
「この辺に昔私のところに来た、ナオという男がこの辺に住んでいると聞いて。」
「ナオ?」
「ほら、あの子よ、避難してきた子。」
「ああ、あのこ。」
ナオは実際この村に食べ物とか様々の物を交換に来ている、おばあさんが納得したようにうなずく。
「彼に会いに来たのだが。」
「どこに居たっけ?」
「ほら、村はずれの木の家。」
この辺一帯の家は石と木が合わさった家が多く、木だけの家は珍しい。
「どこにあるのかわからないので、案内してもらえますか?」
「それならおらが。」
そう言おうとするおじいさんを突き飛ばし、おばあさんがさっとエルフの前に来た。
「いや、私が案内します。こちらです。」
その眼はときめいた。そうエルフは感じていた。そしてしばらく歩くと村はずれの木で囲まれたログハウスが見える。
「あそこですだ。」
「ありがとうございます。会いに行ってきますので、案内はここまでで。」
「いいんだか?」
「はい、またお礼として明日、そちらの方にお伺いさせてもらいます。」
「それはご丁寧にどうも…。」
そう言うとエルフは楽しげにログハウスに向かっていくのだった。
次の日の朝、昨日の話題を独占したエルフは村の広場にいた。
「皆様、昨日は優しくしていただいて感謝しております。そこで、私が村から持ってきた特産品の一部をできれば格安でお譲りしたいと思います。」
エルフが声を上げる。それを聞いた村の人々が広場に集まってくる。
「なんだ?」
「あの時の美人さんだ。」
「で、何をもってきただ?」
「村に伝わる力の粉ですね。」
そう言うと、持っていた背負い袋から白い粉を取り出す。
「これは?」
「これを入れた料理とかを食べると力が付くので、我々はこれを力の粉と呼んでいます。少し舐めてみますか?」
「んだ。」
そう言って目の前の…一番年老いたおじいさんは粉をなめる。
「んだ?これは?塩だ?いや塩か?」
そう言うとお爺さんはその塩が付いた場所をずっとぺろぺろし始める。
「旨いだ…。すっごいだ。」
「気に入ってもらってうれしいです。ただ私は山奥から来たので、何と交換したらいいのかわかりません。」
「んだら…何がいいだ?」
実際ナオが調査したときも金が使えないときは物々交換が成立したのだ。
「私もナオに聞いてみたのですが分からないそうなので、村の皆さんに聞けと。」
「んだら?布…いや金貨一枚でどうだ?」
「金貨とは?」
「そこの先にエアヴァンゲルって街があるだ。そこ行ってこれ出すといろんなものと交換してくれるだ?」
「ほう?」
エルフは眉をピクリとさせる。
「それでどうだ?」
「分かりました、後この粉、この袋にして20袋ございます。皆様どうでしょうか?」
一袋10gを20袋である。ちゃんとネルが実測している。あれは大変だった。が、この話を聞いた村人は驚いた。全財産合わせても金貨10枚いかないからだ。それが20袋?それは今年の稼ぎを
すべて失う話になる。とりあえず、その袋と金貨一枚は交換した。
「んだが、おらたちそんな金はないべ。」
「そうですか、残念です。でしたらこの一袋分はお礼という事で。」
そう言うと、なめた粉がある袋一つと、もう一つを置いた。
「いいだか?」
「ええ。またしばらくしたら、ナオのうちに遊びに来るので、その時にもう少しお持ちいたします。」
「いやいやお気になさらず。
「では…私は一度これを好感した後村に帰ります。、これで失礼します。では。」
そう言うとささっと荷物をまとめ、村を出て行った。その姿もまた鮮やかで美しかった。
そう、これこそが作戦である「徐々に塩に慣れさせる」作戦である。基本的には塩がうますぎるなら、慣れればよい。という事である。そこで思いついたのが小さい額の物を置いていきそれを資金源
にしつつ、少しだけ置いておいて、領主に見つかるならこっちに話が来るだろうしという2段構えで臨む。襲ってくるなら、その時に迎撃すればいい。ゴーストたちを見張りで数人置いてある。ただ有能とはいいがたいが。そこは仕方ない。それをしつつ領主の館の情報をレイス達に集めさせている。そして乗り込んできた用にダンジョンモンスターとして呼んだエルフたちで村を作ってもらい盗賊のアジトの上に木も生やしたうえでエルフの村を作り、数件の家とトレント達を配置した。これで警備も万全。但しわざと引き付けて、捕虜とするようにダンジョンはエルフの村の祠(盗賊の洞穴)
に置いたままにしている。ついでに警備用に分裂したエレノアを設置、そこで暇つぶししてもらっているが、基本警戒は能動的に動けるようになったコアさんのお仕事である。
「これでいいのか?」
「次やるとしても3か月後って事になる。どうせそんなに連続して急ぐこともない。時間があればあるだけ僕たちが有利だから。」
そう、急ぐことないのだ。その間に色々仕込みも入れないといけない。
「魔王城はどうする?」
「山の裏側というか、元々魔王城があった場所はあそこからも遠いんだよ。だから、そこに置く。で、ここと関係ない、って言うつもり。むしろあると迷惑まで言わせるつもり。」
「攻めて来ると思う?」
「可能性は0じゃない。ただし、一か月、しかも直線だと山を越えるから捜索隊のほうが先だと思ってる。けど見つからない、込みでね。」
そう、これは戦争されるのと同異議の可能性もある、戦争なんてしたくない。それが現実である。人間の非情さをなめてはいけない。