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はじめてのまおう~《勇者に俺ツエーさせるRPG》   作者: どたぬき(仮)
始まりの魔王 高橋直の章
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2-6 塩が効きすぎて混乱したみたい

 そしていつもの職場であるパン焼き所に向かう。がその様子は剣呑としていた。歩いている道で兵士たちが何かを探しているのだ。

「お前、白い粉持ってないか!」

 兵士たちが口々にそう言っていた。あの塩の事だろうな…。けど、粉かよ…。親方はこのパン焼き所のトップで結構偉い人だ、というかそこまでしか分からなかった。報酬は日に銀貨一枚銅貨一

枚でここのパン一つらしくそう考えるとかなりの金額だ。が流石に重労働。きつい。がこれくらいでないと雇ってもらえなかったのだ。

「親方―粉どうします?」

「そっちでねって焼いておいてくれ。夜の分がない。」

「分かりました。」

 そう言うと粉と水を持って来て練っていく。これもダンジョンのジオフロントの川の水とか使えばもっとおいしいだろうけど、そういえばジオフロントの物はスキャナーで回収できるかな?できるなら…そういえばもうここのパンはスキャナー済みだ。

「領主の者だ1」

「なんでしょう。領主の使い様。」

「塩を出せ!」

「はい。おーい、塩持って来てくれ。」

 パンを焼く際に塩を練り込むのでパン焼き所にも塩はある。但し岩塩である。袋に入って厳重に管理されている。それを表に持っていく。兵士が数人…厳しい顔をしてるな…。

「こちらになります。」

 兵士が中を一瞥すると、そのまま投げ捨てた。

「こんな塩ではない、もっと白い塩だ」

「何をなさいます、これは領主様からもらった貴重な塩です。」

「こんな塩ではないわ!貴様逆らうならここで斬ってくれる!」

「お許しください。」 

 親方は土下座するとそのまま固まっていた。自分はカウンターの裏で隠れていた。怖かった。

「…まあ良い。目的の物はこれではないのだ。見つけたら報告するように。」

 そう言うと兵士たちは去っていった。凄い事になってるな…。

「何が白い塩だ。普通塩は黒みがかっているんだろうが。」

 そうこの世界の岩塩は土が混ざるせいか、少し黒い。そして少し土の味がする。その為、基本パンもスープもまずいのだ。が、このままだとこの混乱は続くぞ…。もう一回持っていくか?いやあの門番だろ…無理だろ…。門番の所に行ったら塩奪われて終わりだぞ、大方…。

「みんな、すまないな、作業続けてくれ。」

「はーい。」

 パン焼き所のみんなが声を上げる、自分もやるか…。


「という事があったのさ…。」

「それはうちらも確認してるよ。」

 ログハウスに帰ってきて、その白い塩で作ったパンを試作してみた。窯は…見たのをDPで再現した。

「これおいしい…けどまだ硬い。」

「仕方ないよ、僕の腕がない。が、これで製法はあってるはず。後はイースト菌があればいいのだが…。」

「製法?」

「うん、ちょっと概念説明すると長いけど空気っていうのがこの世界にあるんだよ。それを吸って人間は生きてる。」

「うん。」

「で、それをパンの柔らかい時に大量に入れ込むんだよ。それで中に空気の気泡ができて、穴が開いて柔らかくなる。がそれだけだと硬いので。本来は少し混ぜる。」

 ほぼうろ覚えだがクロワッサンはこれで柔らかいって思った。

「ふむ。なら、魔法折り込んだらどうなるの?」

「え?」

「森の祝福ある。パン粉練る時に祝福やるとどうなる?あれも空気とか言うのにかかってる。」

「後でやってみるか…いや、今作ってみよう、どうせ朝に食べる。」

 森の祝福は成長を促進する効果だったっけ?

「パンの作り方教えて。」

「うん。」

 パンの作り方は大体あのパン焼き所で覚えているのを教えた。実際は盗み見て覚えてるだけだけどね。それを真似しつつパンを作る、その練り込んでいるときに隣でネルが森の祝福をかけ続ける。

ただ、外見的な変化はない。

「柔らかくなるといい。ナオの言っていたふわふわパン来い、おいしいパン来い…。」

 ネルの食欲が凄いです。そして、しばらく普通のパンになった。これで寝かせておけばいい。一晩である。これで朝焼けばいい。

「お、いい感じじゃん。」

「レイスさん。」

 偵察係のレイスさんである。普通にしゃべる。ただ解説によると任意で、ソウルレベルを下げた場合。おお、とかううしか話さなくなるそうだ。が、それでは困るのでこれである。

「うちも食べれればいいんだけどさ。」

「食べる?」

「まだ焼けてないじゃん。」

「そだ。」

「まあ、食べれるようになったら貰うよ。そうそう報告だぜ。」

「うん。」

 そう、領主の家のほうの偵察を頼んでおいたのだ。というか、自分でも訳が分からなかったからね…。

「うーん、頭が回ってなかった?が正解っぽい。」

「何それ?」

 レイスの顔色は複雑だ。

「いやあな、塩を夢中で平らげていたら、いつの間にか塩以外がいなくなっていた。で塩の袋以外の手がかりを全員が思い出せない。で、塩だけ探せってなったみたい。」

 …えぇ…。

「で、領主が見つけたら望みをかなえるとか言い出しちゃって、で混乱に拍車がかかってる。」

 ごめん、今までごめん。確かにこんな領主なら、情報手に入るのは稀だよ。となるともう作戦は練り直しだ。が、ちょっと確認したい。塩についてだ。ついでにいつでも出せるように塩は登録しておいた。


 魔塩(5kg) 2000DP


TIPS:ダンジョンのミネラル豊富な海の海水を余すことなく使用。しかもダンジョンの素材で精製さ   れた塩。魔素をこれでれもかとふんだんに盛り込んだ旨味塩。ついでにこれを使った食事を

   行うと、体質改善が行われる。これより上にダンジョン塩、魔界塩、深海魔界塩とかある。


 うわ…。これまずいわ。

「どうしたの?」

「どうも凄い高い塩になったっぽい。2000DPだと…エルフチャイルドと一緒の価値があることになってる。」

「人間と価値が一緒の塩…あの塩?」

「うん。」

「すごい!」

 ネルが鼻息を荒げ、胸を張る。そりゃあ、制作に携わったからな…。ついでにこの塩…50kgある。DPに換算してやろうか…。

「この白いやつがねえ…。そういえば…。」

「舐めてみる?」

「いいのかよ?」

「どうせ量産中だから。」

「じゃあ…。」

 レイスさんが指を出して塩にピトット触ると…指にぺろぺろ…ぺろぺろ…ぺろぺろ…長い。

「大丈夫?」

「いや、これ旨いでしょ。うま過ぎっしょ。これなんだろう、指舐めてるだけで昇天しそうだって。」

 そうなのか、やばいのか…。だとするとまずい事になってる。大方、元々頭が悪い上に理性も飛んでいる可能性がある。これはまともに交渉開始するとすぐにダメになるパターンだ。

「だとすると、気合入れ過ぎたのか。」

「だねえ…私が旨いっていうのも珍しいからねえ…。」

 流石レイス姉さんだ。が、

「私には普通でしたのに…。」

 エレノアは塩を見ていた。確かに…エレノアは余り感じていないようだ。

「それはまあ、あのスープ基準だとね…。」

「確かに、あれよりは数十倍美味しいですねえ・・。」

 味覚はあるみたい。

「でもこれだと今の領主の館は大方狂乱の渦だぞ…。」

「そうなのか?」

「見てきたでしょうに。」

「納得。」

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