8-6 リンクな冒険 ギブミー経験値
「スゲーな!。あれ。」
勇者”藤崎臨久はリンシュウッドの宮殿から出て行きながら息巻いていた。
「あそこまで無くてもダンジョンは攻略できるし…。」
「ですねえ…。」
従者であるミカと元ネル教司祭の一人、ミヤックさんだ。ミカは鬼人と呼ばれる種族で、亜人の一人であり、角がちょっと生えた10歳の少女だ。その力の強さを買われ傭兵にいた所を一目ぼれ
そのままついて来てもらう事となった。そしてミヤックさんは…ギルドの店の売り子さんだった。その美しさについ声をかけてしまったが実はこの人ギルドのお偉いさんである、”ハイエルフ”
の一人で、ネル教の司祭だった人だ。後で聞いて驚いた。現在はネル教は”聖女教”の一派となり、吸収されたので、今は暇していて、そこで働いていたらしい、うーんエルフさん綺麗。という、なんとも言えないほどおっとりした人なんだが、戦闘になると別人みたくなる…ハイエルフってこんなに”戦闘民族”だったっけ?
「俺はさ…悔しくて。」
「分かります。戦闘についていけなくて置いてけぼりにされると悔しいですよね!」
「ミヤックさん近い。」
「いえ、すいません。」
ミヤックさんを引き離す…いやあ美人だからつい顔が赤くなっちゃう。
「でもさ、強くなりたいんだろ?」
ミカがベットに腰掛け、胡座をかいてる、
「ああ、やっぱり悔しい。」
「でさ、どうするの?ダンジョン潜る?」
「それなんだよな…。確かに話だとダンジョンがあって、それに突入すればいいんだが、そのランク何とかって奴が理解できねえ…。」
「そうですわね…。」
ついでにミヤックとミカは理解していた。実際ランク5にも顔合わせしてるし、4も何か知っている。がそれは魔王軍共通の言い方であり、魔物のランクも自分たちが身体を張って決めている
なんて言えるわけがない。6ボスが、ハイエルフ総出でぎりぎり。7ボスは異次元。だと思っている。で、あのでかいのは8である。
「ギルドの人に聞いてみたら?」
「いや、俺、その辺聖女様に聞くかなって思ってる。」
「忙しくない?」
ミカが体をストレッチしながら聞いてくる…いや時々見えそうなんだけど…。
「ですわね…。お手をかけさせるわけにはいきませんし…。そうですね…ペール様のところ行きます?」
「誰それ?」
「私の元上司で、先ほどの戦闘にも参加していた聖女教の”大司祭”ですわ。」
元のネル教のトップで狂信者でもある。がまあ…あの人は苦手だよな…。
「ちょっと避けたい。」
「じゃあ、どうするよ?」
「まあ、強くなればいいんだけどいい方法ない?」
「一朝一夕には強くなれませんが…。そういえばミカさんも聞いたことは?」
「私はあるというか。あいつにね…。」
ちょっと遠くを向く。
「じゃあ、あらためて説明します。この世界で強くなるためにって事です。」
「ああ。」
改めて俺はミヤック…先生を見つめる。
「まずは簡単に言うと、訓練してください、できればスキルに慣れる程度にです。これは人間が経験とかの知識を得る時に換算してレベルアップも行います。」
ミヤックが近くの椅子に座るとリンクも床に座っていた。
「へえー。」
ミカが感心したように声を上げる。
「これはみんなやれますし、これは生産職でもレベルが上がります。ので、まずはこれが言われます。」
「ここまではギルドで聞いた。」
「で、次はモンスターを倒す。そうするとレベルアップします。」
「これが理解できないんだよな。俺には。」
「あたしは体で理解してる、強くなったなって思ってる。」
そういうってミカが腕をブンブン振っている、実際あの大きさで体の2倍ほどの岩でも投げるんだよな…。
「これはネル様の言葉ですが”生命が死んで、その時に記憶の詰まった魔素が飛びちって、ぞれが自分の体に入って、それが強さになる。”だそうで敵が強ければ強いほど、その”経験”をもらえる
ので強くなれます。頭がよくないモンスターだとあまりもらえないことが多いです。」
「経験をもらうか…。経験値みたいなものだね…。」
「似たような概念かもしれませんね、よく異世界の方はそう言いますし。その概念が近いでしょう。当然それ以外に魔法を使う魔素とか様々な箇所に魔素が出ます。」
俺も手を見るが…魔素があるのか、自分に。
「この魔素は”記憶”を覚えるらしくて、最適化して、成長していきます。これが”スキル”となり”実戦経験”にもなります。鑑定のステータスはその具合を示すだけで、実際ステータスより
スキルを重んじる人も多いですが…。」
「うん、。」
「実際数人はスキルを超越した動きをする者もいます。ネル様が言うに”最終的にその自分が持った武器で何ができるのか”が重要だそうです。スキルも使い方次第です。」
「ふーん。流石ハイエルフ。」
「いえいえ。」
ミカが褒めて、ミヤックが照れてる。が自分が何ができるのか…かそう考えたことないな…。
「でもさネル様―ってやってるけど、ネル教ッて聖典があるの?」
「リンクさん…それは製作途中で合併されたのでないのですわ。」
「そうなんだ。じゃあどこで覚えたの?」
「私たちハイエルフは誇りがあるのですよ。あまり言ってはいけませんが、ギルドのハイエルフたち全員は”ネル様”の直属の弟子なのです。全員。」
「ギルド幹部も?」
「はい、全員です。ネル様に鍛えられ、そして、使命を与えられ、他のエルフより優れたのが”ハイエルフ”だと思ってます。そのお言葉は全員一字一句間違いなく覚えてます。」
「へぇ…。」
さっきの映像でも聖女が褒めてたのが”ネル様”だった。あの人の直属の弟子か…すげえ…。
「まあ、鼻が高いよね…。」
「いえ、皆に寄り添う優しいみんなの味方”ハイエルフ”でございます。なので、皆様に優しくフレンドリーなのです。」
「でもそうなるとモンスターを倒す以外に人間でも。」
「成立はしますが、それは犯罪者です。勇者でそれをやった場合は勇者処刑隊が来ます。実際勇者がそれをやって国がいくつも滅びてますので、私もそっち側に行きますよ。」
「わ、分かったよ。」
勇者殺し…そういえば上位の冒険者って話があるのもそのせいか…。なんで勇者じゃねえのかって思ったけど、悪さする勇者対策の部隊なんているはずだよな…。
「そうなるとさ、モンスター倒すとついでに戦闘経験積みに行くのがいいと思うんだ、やっぱりダンジョンじゃん。」
ミカが上半身を背伸びしつつこっちを見るが…ちょっと視線が困る。シャツと下着なんだよね、彼女。というかこの下着とかは最近ギルド提携の店である”ミーアブランド”の下着である。
見た目はまんま現代風で、女性にすごい人気があり、彼女も数着持っていた。ミヤックさんも持ってるらしい。
「先に資金があれば装備、そうでないなら資金調達でダンジョンですか…。金カードがあるので、討伐すれば自動でカウントされるんですよ。だから資金調達でもダンジョンがいいんですが…。」
「この辺のダンジョンは基本あまりうまくないんだよ。」
リンシュメルト近郊にはほぼダンジョンがなく、南のモートリア地区に行ってやっとダンジョンがあるくらいなのだ。だからこの辺は魔物の話は聞くが、かといって訓練できるような場所はない、昔はダンジョンあったそうだが、他の勇者たちが荒らし尽くしてしまい無いのが現状だ。
「だとすると、新大陸行きます?そこで傭兵しつつ稼ぐ手です。」
そう、これがとミカと出会った仕事”新大陸での物資輸送依頼”である。新大陸の一国家と聖王国側で協定を結び、魔法のゲートで結んだ”新大陸の国サガートン”がある。あそこはドワーフと
鉱夫の街で、金属加工を主としていた。北に大鉱山と南に平原を抱えており、また、数多くのダンジョンらしき魔物地帯と国家があり、群雄割拠となっている、その為現在勇者たちにとって
有望な出稼ぎ先となっている。仕事も多く、こちらでも盗賊討伐とかあるが、基本平和である、それを考えれば一攫千金であるが…。
「だけど僕のレベルじゃあ…。」
僕のレベルは戦闘に恵まれず、平和的であるが8だった。他の勇者よりよっぽど低い。
「それだと新大陸行ってもわからないよね…。」
「実はギルドにいた時もそれが問題になってまして…。行くだけ行ってみましょう。新大陸。」
そういう言葉に全員が精彩を欠いていた。




