7-夏SP20 ホワル国
「いらっしゃい。」
「はぁ?神様?」
「確かにいるな。」
「ですね。」
平然と神様がいる、現在地下室メンバーの休憩室となってしまった”NEO雑貨店浮遊島支部”にはハーリス2と神様、そして浮遊島見学に来ていたエムントとその奥さん達、王族御一行と
リューネがいた。
「柳田、ここに人がいるんだけど?」
「総長。いて当然です。」
「初めてのお客様?」
「そうなるね、」
出入り口に立つのは、珍しい着流しを着た一人のメガネをかけた男と狐のしっぽを持つ女性、そして、ブレイブ大陸では存在しない黒い肌を持つエルフが二人、その外見にエムントはつい目を見張
ってしまう。
「あんたらは?」
「あたい達は、ランキング5位。あんたらは?」
「リューネ。そして、その懇意としてるゲストよ。」
「ランキング5位?」
「ああ、ランキングが改正されて、楽園がサブマスターになった事で他の大陸のダンマスがランキングにいるようになったのよ。その5位”パンダ同好会”の連中か…。」
ついでに新設ランキングに”総DP保有同盟ランキング”が追加され、それが現在の勢力指標となっている。現在トップが亜人同盟。第2位がスキュラカンパニー。そして3位が月下の庭園だ。
「あの勇者の味方どもか…。裏切り者…。」
「でも、同盟がどう考えようとも、我々は我々の計画があります。できれば高ランカー殿。お話できますか?」
「人気だな。竜姫。」
「茶化さないでください。エクトネーゼ王。でもいいわよ。その辺の椅子持って来て、あんたら、どっちのチケットで来たの?」
「一応、チュートリアルミッションの最後の報酬がこれなのよ、で、せっかく高いチケットだからみんなで来たのよ。」
白いきつねのしっぽを持つ
「私の時はまだなかったからね。クエスト。実装されたんだ。」
「あんたの時はなかったの?」
「古いマスターは実装されなかったのよ。されても報酬ショボいからやらないけどね。」
記憶が戻ったリューネからすれば、いつでも入れる魔界のチケットなんで売る以外に価値はない。だからこそやる気もないのだ。
「でも獣人?」
「そうよ、そう言えば、そこの協力者のいる地域が私の場所と一緒かもしれないわね。改めて挨拶するわ。私は”ホワル国”全権大使。で柳田が宰相。で、新井たちが将軍よ。」
「国家ねえ…。」
「…新井だ。よろしくこいつは牧。」
「よろしく。」
「座ったままで済まないが、私はエクトネーゼ国、国王のエムント・エクトネーゼだ。もし友好的なら、交友もやぶさかではない。」
「そうね、それはお互い有益であるなら…。」
「総長。それは会議で。ここはやんわり”考慮しておきますわ”とかいうべきです。」
「そうだな。それがいい。ここに総長が二人いるとはいえ、部下に申し訳が立たない。」
「…あんたらどういう体制なのよ?」
「こっちの新井が”黒の総長”そして。私が”白の総長”二人合わせてパンダ同好会よ。二つの同盟が一つとなって南の大森林を支配している。と言っても必要箇所が大きすぎて、管理しきれて
ないんだけどね。」
「という事は、ザガートン大陸ではないのか…?。あそこは砂漠と荒野が多くて、南部に山と川と森が多かったからね。後は北部に大山林と鉱山があったはず。」
「ザガートン大陸?何それ?」
「まあ、分からないならいいけど…。世界地図はまだ、私も全部把握してないのよ。」
リューネが運ばれてきたケーキを王たちの目の前に置いていく。
「あ、それ!」
「ここは、ギルドでもあるし、そこで登録して、DPをお金に変換すればここで買い物できるわよ。」
「そう言えば、報告あったわね、こっちに来てギルドカード作ったって奴。」
「確かに、検証班としては参加してみたいですね。できれば我が国に導入できればこのギルド金貨は全国統一基準になるかもしれませんな…でも大陸越えて統一基準とか…色々異世界は
先行しすぎてますね…。」
「ここは一発奢ってもらっていい?入るにしても、裏切り者と言われるの嫌でね。その分の金品は渡す。」
「わたし?」
新井が、手を挙げ、店員を呼ぶ。
「ケーキとか久々すぎる。お願いしていい?トレードするよ。」
「いいわよ。ハーリスちゃん。こっちに…。」
「串焼肉。」
「ケーキセット。」
「焼きそば。」
「私は何でもいいです。」
「じゃあ、マグロ定食と、後…。エムント王は。バーベキュー?」
「それは先日やったから、できれば、彼らとも語らいたい、酒に合うものを頼む。」
「じゃ、私はスクランブルエッグサンド。」
「そんなものまであるの?」
「意外とあるものよ、ほら、醤油もあるし、塩も特製。」
テーブルに置かれているのは浮遊島支店専用セットの”エルフ塩”と”エルフ醤油”だ。出汁醤油入りの”刺身用エルフ醤油”はまだ開発中だ。
「醤油ですか?」
つい柳田は醤油を取ってしまう。
「一応、ネルの所で置いてあるんだっけ?エルフ醤油とエルフ塩、あとエルフ味噌もあるはず。」
「確かあれは…後お持ちしました。どうぞ。」
おかれていくのは、色とりどりの料理の数々だ。
「確か海岸だと、限定してるんだっけ?」
「はい。あっちは夏なので、塩焼きそばとビール。後枝豆に限定してるはずです。こっちはギルド通常メニューです。串焼肉は胃にもたれるので。」
「ほう?」
「海岸って言ったら、海?アイスとかかき氷は?」
「あ…。」
思いっきり海に行ってナオといちゃいちゃすることしか考えてなかったリューネにとって、これは盲点というしかない物だった。
「ミルクアイスは作った記憶あるけど、かき氷はまだだった。」
「というより海岸があるんですか?…そう言えばこの浮遊島の下を見た時に青いから海でしたな。」
「かき氷・・・シロップとか作れる?」
「砂糖を水に溶かしたものですか?まだ開発中です。」
「なら練乳か…。私が作り方を知っている。作ろうか?牛乳はあるんだよな?砂糖も。」
「何で知ってるのよ?柳田。」
着流しのメガネ男が立ち上がるとキッチンに潜っていった。
「ああ、頭脳職には甘いものが効くんだ。だから、日ごろ作っておいた。」
「…ふときいていいかリューネ殿。」
「何?」
エムント王が、この珍客を…生暖かい目で見ていた。
「異国の大臣とかは料理も作れないといけないのか?」
「…あれが特別だと思うけど?」




