7-外伝8 ネル様の優雅な一日 クレーム対応
「俺達に報いを!」
「こんなショボいのかよ!報酬はよ!」
ネルが付いた時にはある勇者と従者がギルド職員につかみかかっていた。メールにあったのはハイエルフの招集メールで、一応ネルにも届くことになっていた。大抵は見回り中のネルが対処
している。
「…ギルド職員に暴行する。ダメ。」
「お前!誰に向かって口きいてるんだよ!」
「あなた。」
ネルがじっと勇者たちを睨む。
「お前!俺が勇者様だと知って口出してるんだろうな!」
「…じゃあ、誰なら満足するの?」
「…例えば…。」
だが、周囲の人間は気が付いたようだった。そう、大抵のギルドの料理部門の壁には魔王討伐した勇者の絵が飾られており、そこには”教授”と”ネル”の姿が描かれているからだ。
「ギルマスとか?」
「なら、満足した?」
「…。」
じっと勇者たちは金髪の少女エルフの姿を見つめる。
「お前、嘘言うんじゃねえぞ!出せよ、ギルマスをよ!」
「うーん、一番偉い人寄こせ言われた。来た。もし言う気ないなら人に迷惑かけない。」
温和でありいつもはにこやかなネルも冷たい…虫けらを見るような目で勇者一行を見ていた。
「ふざけるなよ!てめ―!」
その言葉を勇者たちの周りから生えた蔓の鞭が全身を覆う。彼女にとっては無詠唱でもできる簡単な魔法である”蔓の鞭だ”
「まずは落ち着く。分かる?」
「もが!もが!」
「ネル様!」
後ろから一人エルフが走ってくる。そしてすぐさま、ネルに跪いた。
「ハリム。一番偉い人来る言われたから来た。」
その姿に勇者たちはもがいている。
「ネル様。これは我々の仕事です。」
”ネル様!”
その言葉に周囲の人間は予感ではあったものの正体を知り…一部は気絶していた。
「仕事ある、来る。これ当然。みんなの意見聞く。報酬はできるだけ勇者には満足してもらう金額用意した。高すぎると、次の君たちの報酬私たちが払えない。それだめ。」
縛られた勇者たちにゆっくり歩きながらネルは睨んでいた。
「あなた達は不満だけど、冒険者たちだともっと低い場合もある。腕がないからと安く見られる、だから君たちの報酬はできるだけ、できるだけ上げるように頼んでる。」
ネルは近くの椅子を持ってくると縛られた勇者たちの前に座る。
「その為にギルド員はいつも交渉をあなたたちの為に日夜頑張っている。それで得られる報酬も、あなたたち専用に欲しい物も並べてる。まだ不満?」
そのハイライトの無いネルの目になぜか従者たちが全員首を横に振り始めた。
「最低でも人に迷惑をかけない事。私たちも勇者様の頑張りはわかっている。が迷惑かけるなら、盗賊として処理しないといけない。これ、王様との約束。分かる?」
その言葉に全員が首を縦に振る。
「分かってくれる嬉しい。」
が、勇者の目は濁っていた。
「お前を殺せば俺がトップだ!」
そう言うネルの首目掛け剣で切りつける。
「ネル様!」
が…剣は首に当たったまま…止まってしまった。当たってはいるが…そのままだった。
「私、こう見えて強い。その程度では死なない。」
その異様な光景に…全員の顔が凍る。当然である。人間の急所であるはずの首を切られ、死なないのだ。しかも傷ひとつない。実際はDPを損失するので、好きではないが…首元に保護色を連携
したウォールを相手の攻撃に連携させ、張っておいた。極小で。この極小にするのに実は技量がかかるのだが、それは見えた人しかわからないだろうが…。こう見えて、エルシュウッドのダンジョ
ン領域を支配し、エルシュウッドを支配する公式には世界最強の魔王軍のトップだった。しかも神格によるDPもあるため、大体一日50億DP程度の収益がそのままHP、MPとしても加算される。
勇者が例え何百、何千与えようが効くこともない。
「が、お痛する勇者はだめな勇者。説得してる人斬るとか。それだと勇者として失格。」
そう言うと蔓の鞭が勇者を再び包む。
「従者の子はまだわかってくれた。だから、この勇者が悪い。だから連れて行く。いいね?」
「は!はい!」
従者たちがそう言うと蔓の鞭で縛られた勇者がギルドの奥に引きずられていく。
「ついでに普通だと、この段階で手打ちされても問題ない。ハリム、いいね?」
「は!ネル様の御裁定であれば存分に!」
ハリムは膝をついたまま答えた。
「じゃ、行こう?」
そう言うと勇者とネルは…そのままギルドの奥に行ってしまった。そのあと。その勇者を見た者はいなかった。
次回からも…季節的外伝”シオバニラで休日を”です。




