29-201 N&D1・山奥ダンジョン奮闘記 嘱託職員
一応、私たちダンジョン研究所(株)はダンジョン関連の冒険者グッズを開発する企業だ。新規だけど。そんな中で時美さんがこっちに…出向というか形で監査人としてこっちに固定で来ることになった。
「一応、自衛隊の子も連れてきたわ。機密だから、最低一か月はここから出さないけど。」
黒塗りのワゴンから降りてくる、女性2名、男性一名が、自衛隊さんのようだ。
「我らは百里所属の対ダンジョン中隊所属大槻伍長と。」
びしっとした、角刈りのかなり逞しいおっさんだ。
「ダンジョン研修を終えました今は元海上自衛隊の羽倉七海3曹と。」
「同じく元航空自衛隊の大林3曹であります。今後ともよろしくお願いします。」
「どういう事です?」
「私もしばらくこっちの”ガチャダンジョン付き地方公務員として、彼らを嘱託職員として雇った上でここに滞在させることに。」
当然時美さんはこっちの事を知っている関係者だ。
「3人は…地主挨拶後、テント設営を頼むわ。コンテナハウスはトラックで6つ運び込んで、設営後に現場確認してもらうから。」
「了解しました。」
女性2.男性1の3人はワゴンから荷物を取り出し…テントを張り始めた。
「どういう事です?」
「厄介なことになって、押し切られて…こうせざる負えないのよ。説明するとね。」
珍しく弱気な時美さんに話を聞くと、ダンジョンを巡る裏社会の攻防の関係で今生きているダンジョン全てが…世界的争奪戦になりつつあった。確かに国外にもダンジョンはある。但しその多くは破壊してしまった。そして、何より魔石や道具が出ると知った今、浅草ダンジョンにおいては各企業及び各国のスパイ組織のダミー企業がダンジョンに人を送り込み調査させていた。そして最も収益が期待できる有望なダンジョンである”ガチャ”ダンジョンから例のフィギュアゴーレムが出た事で問題は加速した。可能性の段階だが武器が出るかもしれないとまことしやかに噂が流れ始めた。時美さんもそれは無いと分かっていても、噂に踊らされた各国は日本にある15ダンジョンの情報を求めていた。特にガチャダンジョンのだ。そして、ダンジョンがある別府も各国の企業による土地買い占め騒動まで起きていた。
「やばくないですか?」
「向こうはこっちの資金の10倍以上…50や100とかもっと大きい金額使ってでも未公開ダンジョンの周辺土地を買いあさってるらしいのよ。」
「ばれているんですね。」
「流石にね。ここのデータは登録されてないからばれてないけどね。けど、当然元ダンジョン庁職員含め片っ端から怪しい人間にスパイを付けて…誘拐も4回は起きてる。こっちのみも予想外の一から危ないのよ。」
ダンジョンがそんな事になっていたとは…。
「大方情報戦でガセばらまいてるんだろうけど、私の知っている情報だと、いずれ生まれるのは分かっている。」
ダンジョンで戦闘が起きて不意打ちで、銃が床に落ちてしまえばその銃を食って覚えたダンジョンが…銃を量産するとは簡単に予想つく。、
「後は秩父の状況が思ったより悪いみたい。それが…自衛隊に焦りを生んでるの。」
「どういうことす?」
「秩父の鉱山ダンジョンと断定された地域は…分かっているだけで、ゴブリン数百体が投石機で石を投げてきたらしい。ポリカーボネイトシールドがボロボロになってしまったために退却。フラッシュグレネードは効いたけど、今後は分からない。別府のゴーレムにはフラッシュグレネードは高価な意味対らしいからね。」
「秩父制圧第一次作戦は失敗と。」
「そういう事になる。数百個の石や岩なんて中隊レベルが耐えれるとは思えないわ。ただ…だからと言って問題もあるの。」
「何がですか?」
「各ダンジョンが公開されて…人が満員に近いほど入ってるから…自衛隊がダンジョン関連で練習できるダンジョンがないのよ。秩父の攻略にはダンジョンでの戦闘訓練が欲しいらしいの。」
分からんでもないけど、それヤバくない?スタンピード起こるかもしれんって事でしょ。ここからははっきり言って遠いけど。
「で、連中が。」
「ここに警備を含め、常駐職員のつもりよ。私もね。政府はここをある意味重要視しているわ。」
「大丈夫なんです?よく物語だと、政府は何か企んでこないですかね?」
「山奥過ぎてね。ただ、それでも狙ってくる可能性もあるし。」
ここのダンジョンは…公開されそうにない。エルマちゃんがかわいそうだ。




