29-181 N&D秋 東京は遠い、精神的に
その日の夜とーちゃんと酒を酌み交わし…買って来た鰹を食ってると…扉が突然空いた。
「ねーちゃん。帰ってきた!」
「信二。」
我が弟信二は見た目普通の少年だ。むしろこれで二十歳超えてるとか信じたくない童顔である。
「ねーちゃんさ、ダンジョン行こ?」
「どこに?」
「え?」
「ダンジョンいくつもあるさ。」
「バカ家、挨拶が先だ。」
「とーちゃんいいじゃんか、泊りになるからさ。俺さ、冒険者なる。そして魔石とか掘り出して人気者になる!」
「芳香は知ってるの?」
母さんも活ををつまみながら…不思議そうにこっち見る。
「ワンチャンはある。が、ここから遠すぎる。」
「どうしてさ?」
「東京だぞ?」
その東京に行ったことあるんだけど、しかももっと遠い場所も仕事で行ったことあるけどさ。
「そうなの?」
「旅費出せるか?」
「うー。」
「だからさ。」
「ねーちゃん運転できるじゃん。だからさ。送って行ってよ。」
「東京までは無理。ガチ遠いし、行きたくない。」
もう何回も行ったからね、仕事で、うちの会社経費で交通費落ちると思うけどそれでも東京行き過ぎだと思う。向こうに呼ばれんと行きたくない。
「具ぐ…諦めんからな!」
「いや、仕事してから行け。」
「ねーちゃんの意気地なし!」
「意気地ちゃうわ。そんなもん。」
そういうと信二は…そのまま自分の部屋に行った。
「私も今日は寝るわ。明日はあいさつしに行ってくるし。」
「まあね。でも確かに東京は遠いわ。」
「でしょ。」
交通費だけで2万以上かかるからね。私の安月給で出かけたくない。




