29-129 N&D1・山奥ダンジョン奮闘記 ホワイトカード
ついでに私はここで、お茶をすすっている間に…
『すまない、ようやく許可が下りた、次の実験のだ。』
エルマさんが守衛室に来て私たち5人が呼び出しを食らった。
「なんです?」
『ダンジョンに入ってこれのスキル名を答えて欲しい。そしてこれを…誰かに使って欲しい。』
それは銀色の四角い箱の入った絵柄のボールだった。
「これは?」
『使った場合…全員に賠償金払ってもらうくらい貴重な物だ。最終的には誰かに使ってもらうが…抜け駆けされることを計算に入れて…。』
私がその球体にスマホをかざし、鑑定するとそこには”ガチャ召喚のスキルオーブ”とだけ書かれていた。
「ガチャ召喚のスキルオーブ…。」
その言葉に全員が、その球を見つめる。
『スキルオーブは使える人間だけが触って、中味の名前が分かる仕組みで中身の名前が分かる人間が使えば…その弾は消滅してそのスキルを得ることができる。ダンジョン内でのみ使える事が出来て…そしてこれは貴重なスキルだ。』
そして、なぜか何も言う前に全員が手を上げようとした。ガチャスキル。異世界物で定番の勝ち組スキルである。それは流石に全員が…言いたいことが分かる。
「どうします?私は…辞退します。」
大沢さんが、手を下げた。
「…確かに興味あるが…かといって万能スキルだろ?善戦組が持った方がいいと思うんだが、惜しいな。これはドロップするのか?」
『するかもしれないと聞いている。ただし…ごく稀以下だ。出れば奇跡だろう。』
…極稀以下のレアアイテム…ガチャのスキルオーブ。
「でもなんで急に?」
『これは人を選ぶスキルでな。強力な代わりに条件も厳しい。だからこそ…使える人間が増えればかなり有望でな。君たちにとっても有益だろうと思われる。』
どうも戦力的な増強を狙うらしい。
「だとすると前線組…といっても西川さんかリッキー君。…前の様子だと楢原さんですかね。」
リッキー君は首を横に振る。
「出来ればダンジョンには籠りたくないゲームとかやり込みたいときもあるし、第一基本ニートだぞ?俺。」
そう言うとリッキー君も手を下げた。…私過去の場にいない楢原………私か。
「私が使う。でいい?」
それに全員が無言でうなずいた。そしてオーブをエルマさんから手渡しされた。・・・ん?
「使えないみたい。何も思い浮かばない。」
『ダメか。なら…ほかの人も試してくれ。』
そして一人ずつ試して…誰も使えなかった。使えなかった。
『うん…ああすまないな。使えないなら使えないって事だ。こればっかりは仕方ない。すまない。感謝する。』
そう言うと、エルマさんはしょげた顔で…ダンジョンの奥に去ってしまった。




